発破(はっぱ)の際に炭鉱の坑内の天然ガスや炭塵(たんじん)に着火することのないように、安全度の試験(坑道試験)に合格した炭鉱用爆薬。硝酸アンモニウムを主剤とし、減熱消炎剤を含有している。
炭鉱の坑内には可燃性のメタンガスや炭塵が存在する。火薬類による発破の際にこれらのガスや炭塵に引火して坑内爆発がおこることがある。このような災害を防止するために、炭鉱で使う爆薬には検定に合格することが義務づけられていた。しかし、2005年(平成17)に検定制度が廃止され、現在では日本産業規格(JIS(ジス))の「石炭鉱山の坑内における爆薬及び雷管の安全度試験方法」(JIS K4811。2009)に記載されている試験法が用いられている。なお、坑内ガスまたは炭塵に着火させない爆薬の性質を安全度という。
[吉田忠雄・伊達新吾]
爆薬の爆発の際の粒子やガスの温度を下げることによって坑内爆発をおこさないようにすることができる。このような効果をもつ添加物が減熱消炎剤で、塩化ナトリウムや塩化カリウムなどが使われている。安全度の試験は坑道試験によって行われる。坑道試験装置は坑道と臼砲(きゅうほう)からなっている。試験の種類は、ガス試験では4種類、炭塵試験では3種類あり、もっとも危険な爆薬は、400グラム臼砲試験(正起爆)に用いる400グラム検定爆薬、もっとも安全度の高い爆薬は300グラム溝切り臼砲試験に用いるEqS-Ⅱ爆薬である。
ガス試験A法または炭塵試験A法では、試験坑道の中にメタンガス9%または炭塵を所定量散布あるいは浮遊させて、装薬孔を模擬した臼砲に装填(そうてん)した400グラムまたは600グラムの爆薬を起爆する。なお、雷管は正起爆となるように装着する。その結果、10回(ガス)または5回(炭塵)実験して1回も着火しなかった場合を合格とする。爆薬量が多いほど着火しやすく、正起爆(発破孔内の装薬列において、親(おや)ダイを口元側に置く起爆法。親ダイ=雷管を取り付けた薬包。産業爆薬を薬包紙で巻き、または紙筒、合成樹脂等に充填したもの)より逆起爆(発破孔内の装薬列において、親ダイを主として孔底の近くに置く起爆法)のほうが着火しやすいことが知られている。ガス試験B法または炭塵試験B法では、EqS-Ⅰ爆薬またはEqS-Ⅱ爆薬を対象とし、雷管は逆起爆になるように装着する。ガス試験C法または炭塵試験C法では、EqS-Ⅰ爆薬よりも安全なEqS-Ⅱ爆薬を対象とし、溝切り臼砲上の溝の上に爆薬試料を置いて起爆する。ここで、溝切り臼砲は、着火がよりおこりやすいように爆薬包を空気中に露出させるために使用している。なお、ガス試験D法では、雷管が対象であって、爆発室に所定の濃度のメタンを充填し、雷管を起爆して、ガスの引火の有無を調べる。
[吉田忠雄・伊達新吾]
『日本産業火薬会資料編集部編・刊『産業火薬』新版(1989)』▽『火薬学会編、田村昌三監修『エネルギー物質ハンドブック』第2版(2010・共立出版)』▽『日本火薬工業会資料編集部編『火薬学』初版(2012・日本火薬工業会)』
石炭鉱山などメタンガスや炭塵の発生がある坑内での爆破に用いることが認められている爆薬。俗に炭鉱爆薬ともいう。爆発温度が低く,火炎を小さく抑えてある爆薬で,国の定める方法にしたがって検定を受け,それに合格した爆薬である。日本では,通商産業省工業技術院資源環境技術総合研究所が試験を行っており,メタンガスや炭塵の発生する石炭鉱山と同様な条件のもとで爆発試験が行われる。日本で用いられているおもな検定爆薬には,硝安ダイナマイト(ニトロゲルを基剤とし硝酸アンモニウムおよび減熱消炎剤を含む)や硝安爆薬などがある。
→硝安爆薬
執筆者:山口 梅太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…石炭鉱山の坑内で発破を行うと坑内のメタンガスや炭塵に着火して坑内爆発を起こすことがある。そのために,炭鉱内の発破ではガスや炭塵に着火するおそれのない検定爆薬が使われる。検定爆薬には爆発ガスの温度を下げたり,ガスへの着火が起こりにくくするような減熱消炎剤が入っているものが多い。…
※「検定爆薬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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