検断(読み)ケンダン

デジタル大辞泉 「検断」の意味・読み・例文・類語

けん‐だん【検断】

中世、侍所六波羅探題守護地頭などが刑事上の事件を審理し、判決する手続き。
検断職けんだんしき1」の略。
大庄屋おおじょうやのこと。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「検断」の意味・読み・例文・類語

けん‐だん【検断・&JISEAFC;断】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 中世法上の言葉で、所務、雑務と区別されて、幕府侍所、六波羅探題、守護、地頭、または諸寺社の機関、集会などが刑事犯人検挙し、あるいは刑事事件を審理し、判決する一連の手続行為を総称していう。
    1. [初出の実例]「無恩許、殊可撿断」(出典吾妻鏡‐建暦二年(1212)八月二七日)
  3. けんだんさた(検断沙汰)
    1. [初出の実例]「次検断事、於地頭御家人等事者、同可進之、至非職之輩者、可尋成敗之」(出典:入来院家文書‐貞和二年(1346)一二月七日・鎮西沙汰事書并足利直義御教書案)
  4. けんだんさた(検断沙汰)
    1. [初出の実例]「検断事、右、相分其得分於四分、預所壱分、〈略〉惣追補使壱分可之」(出典:高野山文書‐元徳三年(1331)四月七日・関東下知状)
  5. 犯罪人の家財、土地などを闕所にすること。没収すること。
    1. [初出の実例]「大犯三ケ条之罪過難親子共仁。家内雑具以下悉検断畢」(出典:鵤荘引付‐永正一一年(1514)三月一四日)
  6. けんだんしき(検断職)」の略。
    1. [初出の実例]「可早領知安芸国都宇竹原両庄地頭公文撿断并竹原庄惣撿挍職」(出典:小早川家文書‐文永元年(1264)三月一二日・将軍家政所下文)
  7. ( 戦国時代以後、地頭領主が私的にを行なうようになっていったなごりから ) 江戸時代庄屋名主)の上にあって数村を支配した在地の有勢者。のちの大庄屋(おおしょうや)に当たる。
    1. [初出の実例]「私領には大庄屋と云て〈略〉国に依り、割本或は惣庄や検断抔と唱る処もあり」(出典:地方凡例録(1794)七)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「検断」の意味・わかりやすい解説

検断【けんだん】

非違を検察し,断罪すること。統治し裁判する検断職をもいう。平安末期,諸国は国衙(こくが)と荘園領主本所),京都は検非違使(けびいし)庁が検断権を有したが,前者は鎌倉時代以降早い時期に守護(しゅご)・地頭(じとう)の手に移り,後者も14世紀末には武家に吸収される。検断には財産没収(検断得分)が付随したので,検断権の所在を巡り本所側と武家方とでしばしば相論が起きた。なお鎌倉幕府・室町幕府とも侍所(さむらいどころ)が全国的な刊事裁判を行った。戦国期には戦国大名が領内で強力な検断を行使した。また中世の惣(そう)村では,惣掟を定め,これによって成員を検断する自検断が行使された。江戸時代,一部地域で村役人の称を検断といった。
→関連項目菅浦大犯三箇条和佐荘

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「検断」の意味・わかりやすい解説

検断
けんだん

鎌倉時代中期以降に現れる,幕府訴訟制度の一系統で,刑事上の罪を検察,断罪すること。刑事犯人の検挙,裁判およびその執行は検断沙汰といった。鎌倉幕府は,鎌倉の検断は侍所,京都では六波羅検断方,地方では各国の守護地頭の任務とした。謀反,夜討,強盗,窃盗,山賊,殺害,放火打擲(ちょうちゃく)などの犯罪があった場合,検断に処せられる規定であった。検断沙汰手続の内容は所務沙汰に準じるが,訴訟受理の官司が,京都では検断頭人,鎌倉では侍所であること(守護は管国の荘園に検断犯罪があったとき,その犯罪人が凡下非御家人について引き渡しを求め事件を取り扱った),引付の合議のみで判決が確定すること,判決の文書形式がやや軽く,引付頭人,奉行人連判の下知状の形式をとることなどが異なる。これは,主として『沙汰未練書』の記載に基づいた説であるが,そうであれば,当該手続は弾劾主義によって貫かれていたことになる。しかし,謀反,殺害などは,守護が職権をもって訴追すべきものであったから,かかる幕府政治の基礎を脅かす犯罪については,別に糾問主義的手続が存在したはずであるが,その内容は明らかでない。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「検断」の意味・わかりやすい解説

検断
けんだん

不法を糾断し非違を検察する意。平安後期から中世を通じて、犯人処刑、刑事裁判、警察権行使などの治安維持機能を総称する。また統治し裁判する職(『日葡(にっぽ)辞書』)も意味した。もともと検断権は朝廷に属するが、地方では国衙(こくが)、また不入権をもつ荘園(しょうえん)では荘園領主が行使するようになり、検断所、検断沙汰人(さたにん)などが置かれた。鎌倉期以降は諸国守護権に基づいて幕府が掌握し、侍所(さむらいどころ)、六波羅(ろくはら)探題検断方、守護、地頭(じとう)などがこれを行使した。検断に付随する没収財産を荘園領主3分の2、地頭3分の1に分け取ることもあった。室町以降、検断権は守護大名、戦国大名の手に移った。また畿内(きない)や周辺の郷村で自治的に行うものに自検断があった。江戸時代、東日本の村役人の名称に検断肝煎(きもいり)などがある。

[羽下徳彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

山川 日本史小辞典 改訂新版 「検断」の解説

検断
けんだん

中世で,今日の刑事的事件についての取締りと犯人に対する断罪。鎌倉時代には朝廷のほか荘園領主や幕府も検断権をもち,幕府の検断権は六波羅探題・守護・地頭らによっても行使され,御家人のなかには国衙(こくが)の検断権を継承した者もあった。室町時代以降検断権は守護大名・戦国大名の手に移った。その間畿内近国の惣村(そうそん)では,自検断とよんで自治的に検断を行う場合もあった。江戸時代には大庄屋を検断とよぶ地域もあった。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「検断」の解説

検断
けんだん

中世,刑事犯人に対する検察・断罪のこと
平安末期,検断権は国衙 (こくが) か荘園領主にあったが,鎌倉時代には,侍所 (さむらいどころ) ・守護・地頭が分有して行使した。守護の検断権は一般に大犯 (だいぼん) 三箇条と呼ばれている。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

今日のキーワード

メタン

化学式 CH4 。最も簡単なメタン系炭化水素で,天然ガスの主成分をなしている。また石炭ガスにも 25~30%含まれる。有機物の分解,たとえばセルロースの腐敗,発酵の際に生成され,沼気ともいわれる。また...

メタンの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android