(読み)まぐさ(英語表記)lintel
lintol

精選版 日本国語大辞典 「楣」の意味・読み・例文・類語

ま‐ぐさ【&JISEB96;】

  1. 〘 名詞 〙 窓や出入口の上に水平に渡した横木
    1. [初出の実例]「扇二枚(各長九尺 広一尺六寸 厚三寸)〈略〉鼠走二枚(各長一丈 広五寸 厚二寸半)目草二枚(各長一丈 広五寸 厚二寸半)已上四物作功一人」(出典:正倉院文書‐天平宝字六年(762)正月三〇日・山作所作物雑工散役帳)

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改訂新版 世界大百科事典 「楣」の意味・わかりやすい解説

楣 (まぐさ)
lintel
lintol

窓や入口など建物開口部の上部の横木,広くは柱や壁の間に架け渡された横架材を指す。またこうした水平材と柱とを主体とする構造方式を,アーチを用いる組積造に対し,楣式構造trabeated constructionと呼ぶ。ただし横架材のうちでも,水平力をうけ持ち骨組みの一部として働くものを(はり),水平力を考慮せず垂直荷重をうけるだけのものを楣として区別することがあり,柱・梁による構造のほうはラーメン構造,そうではない単純な積み木的なものを柱・楣構造post-lintel constructionと呼んでいる。原始的な木造架構は,洋の東西を問わずこの柱・楣構造方式が多かった。この方式を石造におきかえ,完成した様式にまで高めたのが古代ギリシアの神殿建築で,これは西欧の石造建築でその後長い間尊重されることとなった。しかしやがてこの方式は装飾的形態とみなされ,組積造の表面を飾るものとなって構造的意味を失ってしまう。西欧建築のなかで楣式構造が再び構造的実質を伴って現れるのは,近代鉄骨鉄筋コンクリートによるラーメン構造の出現以後のことである。中国日本木造建築においては,宋代以後(日本では鎌倉時代以後),柱や束を貫通して相互に固める(ぬき)の採用,複雑・巧妙な継手仕口考案により,独自の楣式構造の伝統がつくり上げられた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「楣」の意味・わかりやすい解説


まぐさ

建物の出入口や窓の上部に取り付けた横木。両側の柱に大入(おおい)れ、または枘(ほぞ)差しにして上部の小壁を受け、上からの荷重を支える役目をする。下端樋端(ひばた)がつく溝のあるものを鴨居(かもい)とよび、溝のない横架材を無目(むめ)という。門の場合は扉のそばにつくが、同じく扉下の足元の横材は蹴放(けはなし)とよぶ。また窓の場合は下の横材を窓台(まどだい)という。石造やれんが造などの組積造(そせきぞう)の建物では、出入口や窓の上部をアーチとするが、上部に水平に単一石材を入れることもあり、それを楣石という。

[工藤圭章]

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