化学パルプで抄造した上質の印刷,筆記,包装用紙で,比較的厚手の紙の総称。1878年に開催されたパリ万国博覧会に出品した日本の大蔵省印刷局特製のミツマタを原料とした局紙は評判が非常に良かったが価格が高かったため,ヨーロッパにおいて亜硫酸パルプを原料にしてこれに似せて紙を作った。初め日本にも輸入され,模造した紙であったことからこの名がつけられた。オーストリアの製紙工場で作った模造紙はジャパン・シミリsimili Japanpapierと称して日本へも輸出されたが,1913年に九州製紙会社がさらにこれを模造し,亜硫酸パルプから作った紙にスーパーカレンダーがけして光沢をつけた模造紙を作った。翌年には他の工場でも生産するようになり,それにしたがって輸入は徐々に減少した。一般にスーパーカレンダーにかけて強光沢をもたせた紙をA模造,マシンカレンダーだけで光沢をつけた紙をB模造と呼んでいる。局紙はミツマタを原料としたので色は淡黄色であった。そのため模造紙も初めは着色していたが,需要者の意向で白色に変わった。印刷適性も向上し,模造紙は印刷紙の一種と考えられるようになり,筆記,包装用紙にも使われている。
執筆者:臼田 誠人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
局紙(きょくし)に似せ、化学パルプを用い機械抄(ず)きによって製造した上質の印刷・筆記・事務および包装用の紙。局紙は元来日本の印刷局で、三椏(みつまた)を主原料とし、練りと填料(てんりょう)(紙の不透明度を増加させるために用いる助剤)にかわってロジンサイズを使用し、溜(た)め漉(ず)きにより鳥の子に模して製造した淡黄色の手すきの紙であり、きわめて高価なものであった。明治の初めヨーロッパで局紙にまねて亜硫酸パルプを粘状叩解(こうかい)したものを、練りと填料を用いずロジンサイズを施し、機械抄きによって大量にかつ安く製造したため、この名がある。現在日本ではA模造、B模造およびC模造に分けられる。A模造はスーパーカレンダー仕上げ、B模造はマシンカレンダー仕上げ、C模造は未晒(みさらし)亜硫酸パルプを原料としたものである。いずれも抄造の際に填料を用いないので、通常の印刷紙に比べ灰分含有量が少ない。
[御田昭雄 2016年4月18日]
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…この紙は78年,パリの万国博覧会に出品され,高く評価されて世界的に知られるようになり,85年には多量に輸出されるようになった。これを輸入したオーストリアで亜硫酸パルプを用いて模造したものが日本に逆輸入され,これをさらにまねて作ったものが模造紙である。はじめは手すき紙であったが,のちに機械すきも行われた。…
※「模造紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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