横隔膜の先天的または後天的な
食道裂孔ヘルニアは成人のヘルニアの80~90%を占め、脱出臓器は胃です。
ボホダレクヘルニアは先天性のヘルニアで、左背側に多く、小腸や大腸が脱出します。モルガニヘルニアも先天性で、右側に多く、
外傷性ヘルニアは、事故などで横隔膜が損傷を受けて発症します。通常、左側に多く、胃、小腸、大腸などさまざまな臓器が脱出することがあります。
食道裂孔ヘルニアは、高齢になるにしたがい、肥満、妊娠、
ボホダレクヘルニア、モルガニヘルニアは、先天的なものです。
外傷性ヘルニアは、交通事故や高所からの転落事故で発症します。
食道裂孔ヘルニアの多くは無症状です。食後に強まる胸骨後部痛や胸焼けを感じたり、吐血や下血を来す場合もあります。
ボホダレクヘルニアが大きい場合は、出生直後に呼吸困難、チアノーゼなどの重い呼吸障害に陥ることがあります。モルガニヘルニアは、無症状から呼吸困難やチアノーゼを来す例までさまざまです。
外傷性ヘルニアでは、受傷直後に胸骨下部の強い痛み、嘔吐、呼吸困難、ショックなどが現れることがあります。
胸部X線検査で、胸腔内や縦隔内に腸管のガス像を認めます。消化管バリウム造影検査では、より明瞭に脱出した腸管が描写され、確定診断となります。
食道裂孔ヘルニアで胸やけなどの症状がある場合には、制酸剤などを投与します。無症状の場合は放置しておいてかまいません。
ボホダレクヘルニア、モルガニヘルニア、外傷性ヘルニアでは手術が行われます。手術で、横隔膜裂孔がふさがれば予後は良好です。
高齢の女性が、食後に強まる胸骨後部痛や胸やけを感じたら、食道裂孔ヘルニアの可能性があるので、内科を受診してください。
ボホダレクヘルニアやモルガニヘルニアは、出生直後のチアノーゼなどから、産婦人科医が気づきます。
交通事故や高所からの転落事故後に、胸骨下部の強い痛み、呼吸困難などを感じたら、早めに内科や外科を受診します。
沖本 二郎
横隔膜ヘルニアには、先天性のものと後天性のものがあります。
先天性のものにはさらに、ボックダレック
藤原 利男
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
横隔膜に欠損孔があって腹腔(ふくくう)内の胃、小腸、結腸、肝臓(左葉)、脾臓(ひぞう)、膵臓(すいぞう)などの臓器が胸腔内に脱出した状態をいう。そのほとんどは左側に発生する。右側に少ないのは肝臓が欠損孔を閉塞(へいそく)するためと考えられている。多くは先天性で新生児期から症状を現すが、まれに外傷性横隔膜欠損による後天性ヘルニアもみられる。症状は、胸腔に脱出した腹腔臓器が肺を圧迫するため呼吸困難(チアノーゼ、呼吸促進、陥没呼吸、努力呼吸など)をきたす。先天性では、圧迫による肺の発育不全が高度なものほど、生後早期から症状が著明であり、予後も不良である。治療は、術前に適切な呼吸管理を行い、開腹して横隔膜欠損を修復する。
[戸谷拓二]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…しかし膀胱,卵巣,その他の内臓も脱出することがあるため,医学的に正確な呼名ではない。また,脱出臓器が腹膜に包まれていない場合は内臓脱出と呼ぶのが正しく,椎間板ヘルニア,脳ヘルニア,肺ヘルニア,および横隔膜ヘルニアや腹壁瘢痕(はんこん)ヘルニアは真のヘルニアとはいえない。しかし,外見上あるいは症状がヘルニアに類似するため,習慣上〈ヘルニア〉と呼ぶことが多い。…
※「横隔膜ヘルニア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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