橋懸り(読み)ハシガカリ

デジタル大辞泉 「橋懸り」の意味・読み・例文・類語

はし‐がかり【橋懸(か)り/橋掛(か)り】

能舞台で、舞台と鏡の間とをつなぐ能役者通路。舞台に向かって左手後方に欄干のある橋のように掛け渡されている。
初期歌舞伎舞台で1にあたるもの。下手奥の役者出入り口をさした。

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精選版 日本国語大辞典 「橋懸り」の意味・読み・例文・類語

はし‐がかり【橋懸・橋掛】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 能舞台の一部で、鏡の間と舞台とをつなぐ通路。舞台に向かって左手後方に斜めに、欄干のある橋のように掛け渡されている。→のうぶたい(能舞台)
    1. [初出の実例]「東西に幄(かりや)を打て、両方に橋(ハシ)懸りを懸たりける」(出典太平記(14C後)二七)
  3. 初期の歌舞伎劇場の舞台の一部。見物席から見て左側(下手)奥寄りをいい、役者の登場、退場に用いられた。のち、上手出口すなわちチョボ床の下の廊下状板敷をいう。
    1. [初出の実例]「をしゃう先立てまく打上はしかかりに出るを見れば」(出典:慶長見聞集(1614)五)
  4. 建物の各部をつなぐ通路として渡した橋。渡殿(わたどの)
    1. [初出の実例]「くうでん・らうがく・はしがかり、仏前の方丈きらいなく、あなたこなたをほっかけたり」(出典:浄瑠璃・公平入道山めぐり(1681‐88頃)五)

橋懸りの補助注記

について、古くは、舞台真後ろから奥に延びる形もあるなど、その位置・角度などは一定していない。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「橋懸り」の意味・わかりやすい解説

橋懸り
はしがかり

能舞台の一部で,本舞台の左手から奥に,斜めに長く延びたところ。「橋掛り」とも書く。鏡の間に通じる。両側勾欄 (こうらん) があり,手前白州に3本,向う側に2本の若松を植える。舞台の延長として使われる重要な演技の場で,登場人物囃子方の通路としても使われる。手前の松は,舞台に近いほうから,一の松,二の松,三の松と呼ばれる。

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世界大百科事典(旧版)内の橋懸りの言及

【能舞台】より


[構造・様式]
 一般に能舞台は,約6m四方(正式には京間(きようま)3間すなわち19.5尺四方)の本舞台の四隅に柱を立て,屋根をかける。これにアト座,地謡座,橋掛り(橋懸りとも)をつける。柱のうち目付柱(めつけばしら)はとくに重要で,演者にとっては演技の目標となる。…

※「橋懸り」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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