止ん事無い(読み)ヤンゴトナイ

デジタル大辞泉 「止ん事無い」の意味・読み・例文・類語

やんごと‐な・い【止ん事無い】

[形][文]やんごとな・し[ク]《「止む事無し」が一語化したもの》
家柄身分がひじょうに高い。高貴である。「―・い生まれ」「―・いお方」
そのまま捨てておけない。なおざりにできない。のっぴきならない。
うちにしも―・きことありとて、出でむとするに」〈かげろふ・上〉
なみなみでない。特別である。
「(左大臣ヲ)―・く重き御後見とおぼして」〈賢木
貴重である。
「―・き物持たせて」〈・七〇〉
[派生]やんごとなげ[形動]やんごとなさ[名]
[類語]高貴尊い貴いノーブル貴族的みやびやか優雅優美みやび高雅典雅風雅優形やさがた上品ゆかしい奥ゆかしいしとやかたおやか女性的エレガントドレッシー婉麗えんれい優優典麗麗しい静淑優婉閑雅婉然楚楚そそ窈窕ようちょう端麗温雅物柔らか気高い気品雅趣高尚つつましいつつましやかしおらしい清雅高踏雅致﨟長ろうたけるみやびる端雅都雅高貴

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「止ん事無い」の意味・読み・例文・類語

やんごと‐な・い【止事無】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]やんごとな・し 〘 形容詞ク活用 〙 ( 「止む事無し」が一語の形容詞に転じた語。「やむごとなし」とも表記 )
  2. やむを得ない。よんどころない。なおざりにできない。打ち捨てておかれない。
    1. [初出の実例]「やむごとなき事によりてまかりのぼりにけり」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)春上・一三・詞書)
  3. ひと通りでない。並々でない。重々しい。権威がある。格別である。特別である。
    1. [初出の実例]「おほやけのやんごとなからんまつり事にまゐらでは、いと便なかるべし」(出典:落窪物語(10C後)四)
    2. 「親となりなば、いみじうやむごとなく我が身もなりなむ」(出典:更級日記(1059頃))
  4. 地位・家柄などが第一流である。高貴である。
    1. [初出の実例]「あるやむごとなき人の御局より」(出典:伊勢物語(10C前)一〇〇)
  5. 貴重である。尊い。もったいない。恐れ多い。
    1. [初出の実例]「いささかなることも、殿のし給ふ度ごとに参らぬはなきを、やんごとなきことにしも、まうでざらん」(出典:宇津保物語(970‐999頃)あて宮)

止ん事無いの派生語

やんごとな‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

止ん事無いの派生語

やんごとな‐さ
  1. 〘 名詞 〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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