武者所(読み)ムシャドコロ

デジタル大辞泉 「武者所」の意味・読み・例文・類語

むしゃ‐どころ【武者所】

院の御所警備する武士詰め所。また、その武士。
建武政府が設置した京都の警備機関。新田氏一族を中心に64人の武士で構成

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精選版 日本国語大辞典 「武者所」の意味・読み・例文・類語

むしゃ‐どころ【武者所】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 院の御所を警護する武士の詰めていた所。また、その武士。上皇が在位中に滝口の武士であった者を中心に編制され、院の武力として重要な意義をもった。武者
    1. [初出の実例]「上皇脱屣後〈略〉滝口為武者所」(出典西宮記(969頃)八)
  3. 建武新政の際、京都警護を任とした武士の詰めていた所。新田一族を頭人として六番六四人で構成された。
    1. [初出の実例]「右のごとく武者所を並る。御当家新田人々を以て頭人として、諸家の輩を結番せらる」(出典:梅松論(1349頃)上)

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改訂新版 世界大百科事典 「武者所」の意味・わかりやすい解説

武者所 (むしゃどころ)

院武者所ともいう。院御所の警固,院御幸の供奉などを任務とした武者。985年(寛和1)円融院が武者所10人に弓箭を帯せしめたことをはじめとする。院庁始とともに院蔵人所,院御随身所,院武者所の設置が行われる例で,その員数は10余人から30人ほどであった。天皇在位のときの滝口をあてることが多かった。令制の本官をもたぬ者も多く,1093年(寛治7)白河上皇の春日社御幸に供奉した武者所のばあいは,30人中,有官者は9人のみであった。なお,無官の武者所は労効(ろうこう)によって右馬允に任ずる例であった。
執筆者: その後,建武新政に際して武者所が復活し,京都警衛を任務としたと推測されるが,詳細は不明。《建武年間記》によれば6番で構成され,総勢63人で,新田義顕以下の新田一族が多く頭人の地位を占めた。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「武者所」の意味・わかりやすい解説

武者所
むしゃどころ

(1)上皇の御所を警護する武士の詰所(つめしょ)、またその武士。985年(寛和1)以降設置され、単に「武者」あるいは「所」ともよばれた。(2)建武(けんむ)新政政府によって設置され、皇居の警衛を任とする禁衛軍を統轄し、京都の治安保持にあたった機関。1333年(元弘3・正慶2)に設置され、64人の武士が六番(組)に分かたれ、輪番で任務についた。各番の頭人(とうにん)は、一番=新田義顕(にったよしあき)、二番=同義貞(よしさだ)、三番=同行義(ゆきよし)、五番=同義治(よしはる)と、新田一族が六番のうち四番を占め、このほか四番は長井広秀(ひろひで)、六番は武田信貞(のぶさだ)が頭人に任ぜられた。禁門の警備や市中の治安維持にあたったほか、風俗の取締りや土地問題などにも関与したらしい。

[新田英治]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「武者所」の解説

武者所
むしゃどころ

平安中期以降,院などにおかれ,御所や上皇自身の警護にあたった武者,およびその詰所。985年(寛和元)円融院に10人おかれたのが初見。天皇に近侍する滝口(たきぐち)を中心にのち増員され,北面とともに院の武力を担った。建武政権にも設けられ,詳細は不明だが,御所の警護のほか洛中警衛にあたったと推測される。足利尊氏離反後の1336年(建武3・延元元)に65人が6番に編成された交名(きょうみょう)が残る。継続して,南朝にも設置された痕跡がある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「武者所」の意味・わかりやすい解説

武者所
むしゃどころ

(1) 「院武者所」の略。上皇の御所を警固した武士の詰所をいい,転じて武士をさした。永観3 (985) 年に配置されたのが初見。 (2) 元弘3=正慶2 (1333) 年に設置され,建武新政時,主として京都の警備を司り6組 (番) から成り総員 64人で構成された。

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旺文社日本史事典 三訂版 「武者所」の解説

武者所
むしゃどころ

①上皇の御所を警備する武士の詰所
②建武政府の中央機関の一つ
武者ともいう。
建武の新政に際し設置され,京都の警備をおもな任務とした。新田義貞を頭人 (とうにん) (長官)として,新田氏一族を中心に有力武士64名の6番交代制で構成された。

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百科事典マイペディア 「武者所」の意味・わかりやすい解説

武者所【むしゃどころ】

(1)院の武者所。上皇・法皇の御所を警衛する武士の詰める所。略して武者または所。(2)建武政権の武者所。皇居警備軍の統轄機関で,政権の武力中枢としての役割を果たしたとみられる。新田・長井・三浦・小早川などの武士65人で,これを6番(組)に分けて交替制とした。

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世界大百科事典(旧版)内の武者所の言及

【院司】より

… 院司の構成にはかなり変遷があるが,《西宮記》《拾芥抄》《名目抄》その他の記録により,平安・鎌倉時代の院司を概括すると,二十数種に及ぶ。それを性格・機能のうえから分類すると,(1)院中の諸事を統轄処理するもの=別当・判官代・主典代,(2)上皇の側近に侍し身辺の雑事に奉仕するもの=殿上人・蔵人・非蔵人,(3)各種の職務を分掌するもの=別納(べちのう)所・主殿(とのも)所・掃部(かもん)所・薬殿・仕所・召次所・御服所・細工所・御厨子(みずし)所・進物所・御厩・文殿(ふどの)など,(4)上皇の身辺および御所の警固に当たるもの=御随身所・武者所・北面・西面などに整理できる。まず(1)は院司の中核で,(1),もしくは(1)(2)に限って院司と称した例も多い。…

※「武者所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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