歴史文学(読み)れきしぶんがく

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「歴史文学」の意味・わかりやすい解説

歴史文学
れきしぶんがく

歴史上の事実や人物を題材に,史実を背景として書かれた文学。広義には史書を含める場合もある。
(1) 西洋 古くはヘブライ民族の建国を題材とする旧約聖書中の『出エジプト記』,トロイ戦争を題材とするホメロスの『イリアス』などがあり,ルネサンス期になると,アリオストの『狂乱のオルランド』や第1回十字軍に取材したタッソの『エルサレム解放』などの叙事詩,シェークスピアの史劇などがある。 19世紀に入り W.スコットによって歴史小説の文学形式が確立され,『ウェーバリー』に始り『アイバンホー』などを含む小説群は,史実と創作がとけあって歴史小説の典型を示し,後代に大きな影響を与えた。ほかにドイツではゲーテの『ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン』,シラーの『ワレンシュタイン』,フランスのユゴー,スタンダール,デュマなども歴史小説の傑作を残した。
(2) 中国 現実性を重視するのは民族的特性で,古代から「前言往行」の記録が中国文学の主流をなしてきたといえる。『春秋左氏伝』,司馬遷の『史記』,司馬光の『資治通鑑』などがその代表的な古典としてあげられ,現代では郭沫若が最も注目される。
(3) 日本 古くは『大鏡』をはじめとする歴史物語類,『平家物語』『太平記』などの軍記物があげられる。明治以後では森鴎外の『阿部一族』や『渋江抽斎』,昭和期に入ってからは島崎藤村の『夜明け前』などの歴史小説がその代表である。

歴史文学
れきしぶんがく
historical literature

旧約聖書の分類の1つで,ヨシュア記士師記ルツ記サムエル記列王紀歴代志エズラ記ネヘミア記エステル記 (トビト書,ユデト書) の総称。神の啓示の具体化としてのユダヤ民族の歴史が述べられているが,今日の意味での歴史とは必ずしもいえない部分も少くない。旧約聖書中の知恵文学,預言文学,黙示文学などに対置される。

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