最も重い刑罰である生命刑の総称。また,死に相当する罪をいう。日本古代における死刑は,すでに《隋書》倭国伝中に殺人,強盗,姦の罪に対して科されたことが見えるが,律令制度の死罪は大辟(だいびやく)/(たいへき)罪ともいい絞,斬の2種があり,斬は絞より1等重いとする。絞は受刑者を棒に縛し,2本の綱で首を挟み,その綱の左右を2人の執行人が絞り上げて窒息死させる。斬は刀で首を切り落とすものである。死刑の執行には天皇の勅裁を必要とし,かつその奏上は原則として3度行う。死刑の執行は市(いち)において公開されるが,皇親や五位以上の者は家で刑部省官人の立会いのもとで自尽することを許し,七位以上の者および婦人の絞は公開しない。市での執行は,弾正台および衛府の官人が立ち会い,もし囚に無実の疑いがあれば直ちに執行の停止を命じ,奏聞する。死刑は原則として秋分以後,立春以前に行い,立春から秋分までの間,および大祀・斎日等には,その執行を停止する。日本では,平安時代の弘仁年間(810-824)から1156年(保元1)まで約340年間,死刑の執行が停止された。
執筆者:小林 宏 江戸時代には幕府の《公事方御定書》によれば打ち首の上,田畑,家屋敷,家財を闕所(けつしよ)(没収)するもので,死屍は様斬(ためしぎり)の用に供された。処刑前に引廻しが行われる場合もある。獄門より軽く,斬罪,下手人よりは重い。斬罪,下手人は同じく斬首刑であるが闕所,様斬,引廻しをともなわなかった。また下手人はその適用が庶民間の普通殺人犯に限られたのに対し,死罪は士庶に科され,適用罪種も広範囲にわたった。10両以上の盗犯が死罪であったことはよく知られる。
→死刑
執筆者:加藤 英明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
江戸幕府法上の主として庶民に科せられた死刑の一種。下手人(げしゅにん)と同様、江戸では小伝馬町の牢屋(ろうや)の中の切場(俗に土壇場(どたんば)という)で斬首(ざんしゅ)する刑をいう。下手人は殺人だけに科せられるが、死罪は殺人以外の犯罪にも科せられる。殺人については、下手人が利欲にかかわらない喧嘩(けんか)口論などによる殺人に科せられたのに対し、死罪は利欲にかかわる殺人に科せられた。したがって、死罪のほうが下手人より重いとされ、下手人と異なり、死屍(しし)が様斬(ためしぎり)にされ、犯人の家屋敷・家財も没収され、情状の重い者には引廻(ひきまわ)しが付加されることがあった。
[石井良助]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
字通「死」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
江戸時代に行われた斬首による死刑の一種で,庶民に対して執行された。これに対して士身分に対する死刑は斬罪であった。主として主人の親類,地主,目上の親族などに対する傷害の罪に対して科せられた。斬首にあたり目隠しがなされ,死体は刀剣の様斬(ためしぎり)の用に供された。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…様者(ためしもの)ともいう。将軍の佩刀(はいとう)の場合,死罪の刑に処せられた者の死体を用い,牢屋内の様場(ためしば)において執り行った。浪人山田朝右衛門が代々御様御用(おためしごよう)の任にあたり,腰物奉行(こしものぶぎよう)らの立会いの下で,土壇に横たえられた刑屍を据物斬(すえものぎり)して斬れ味などを報告する。…
※「死罪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
7/22 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新