デジタル大辞泉
「母音交替」の意味・読み・例文・類語
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ぼいん‐こうたい‥カウタイ【母音交替】
- 〘 名詞 〙
- ① 単語の中のある母音の音色や長さが、その単語の文法的機能に応じて交替する現象。例えば英語の sing, sang, sung, song の場合。アプラウト。母音転換。
- ② 母音の交替が造語法一般に使われる現象。ハラハラ→ホロホロなど。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
母音交替
ぼいんこうたい
vowel gradation; Ablaut; apophony
一般に印欧語比較文法の術語として用いられ,同語源に属する形態素にみられる音節主音の交替をさす。印欧祖語では造語法上・形態論上の重要な機能を果していた。現代英語の sing~sang~sung,songはその反映である。通例,母音交替には質的母音交替 (ギリシア語 légō~lógosのようなe~o交替) と量的母音交替 (e~ē; ei~i; eu~u; ē,ā,ō~əなど) があるとされ,また階程により,延長階程,基礎 (強) 階程,弱階程 (低減階程とゼロ階程) に分けられる。動作者を示す接尾辞-terを例にとれば-tēr~-tōr (延長) ,-ter ~-tor (基礎) ,-t (低減) ,-tr (ゼロ) である。ギリシア語の「父」 (主格・単数) ,patér-a (対格・単数) ,patrá-si (<t,与格・複数) ,patr-ós (属格・単数) を参照。ただし,延長階程はあとから2次的に発達したものであり,これを除いて祖語の母音交替を音韻論的に整理すると,結局e~o~ゼロの一つの型にまとめられる。交替は祖語の古い時代に生じたもので,その原因はアクセントがからんでいると考えられているものの,なお未解決の問題を残している。いずれにしろ,元来は文法的機能をもたないまったく音声的な交替であったものが,その交替条件の消失とともに文法的機能をもつようになったと考えられる。転じて広く,インド=ヨーロッパ語族の諸言語以外における母音の交替現象に対しても母音交替という名称が用いられている。このときの英語は普通,vowel alternationが用いられる。
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世界大百科事典(旧版)内の母音交替の言及
【母音変化】より
…ところが末位の複数語尾/i/が前の母音/oː/を/eː/に変質させたので,中世英語では/feːt/となり,これが現代では[fiːt]に推移した。こうした名詞の単数形と複数形との間に見られる母音交替を〈ウムラウトUmlaut(母音変異)〉と呼んでいる。これは後の前舌母音/i/が前の後舌母音/o/を前舌母音e/に変えた逆行同化の例である。…
※「母音交替」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」