いいたい事柄を何かに例えることによって、効果を期待する表現方法。たとえば、「花咲き匂(にお)うような人生」(堀辰雄(たつお)『風立ちぬ』)というような表現である。
比喩は、(1)例える事柄と(2)例えられる事柄と(3)例える行為との三者から成り立つ。これら三者が、どの程度ことばとして示されるかによって、直喩・隠喩・諷喩(ふうゆ)の3種に区別できる。
直喩は、「(1)星ばかり映して居る深山の湖(3)のような(2)眼」(岡本かの子『春』)にみるように、(1)(2)(3)の三者がすべて言語化している場合である。(3)の例える行為は、「のような」という、たとえであることを示すことばとなって言語化されている。このように、たとえであることが、ことばによって明らかに示されているので、明喩(めいゆ)ともいう。もっともわかりやすい比喩である。
隠喩は、「(2)彼女の眼は、(1)夕闇の波間に浮ぶ、妖しく美しい夜光虫だった。」(川端康成(やすなり)『雪国』)にみるように、(1)(2)だけが言語化され、(3)のたとえであることを示す語句が隠されてしまう場合である。暗喩ともいう。(3)が言語化されないので、(1)たとえと(2)例えられるものとが直結し、写真の二重写しのような重層効果をあげる。
諷喩は、「(1)井の中の蛙(かわず)大海を知らず」のごとく、(1)の例える事柄しか言語化されない場合である。(2)の例えられている事柄が、裏面に隠されているので、教訓や風刺に用いると、相手の耳に入りやすくなり、効果的である。寓喩(ぐうゆ)ともいう。『イソップ物語』などの作品は、人間の世界を動物の世界にそっくり置き換え、真にいいたいことを隠し、さらに、たとえであることもまったく示さないので、長大な諷喩である。
比喩は、古今東西を問わず、また韻文・散文の違いや文学ジャンルの違いなどにかかわりなく、広く一般的に用いられる表現方法である。比喩を用いると、表現したい事柄を、具体的なイメージを伴って、生き生きと描き出すことができる。
[山口仲美]
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