デジタル大辞泉
「比」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
ひ【比】
- 〘 名詞 〙
- ① 同列に並ぶこと。比肩。また、類を同じくすること。たぐい。ともがら。比類。否定の言い方で現われるのが普通。
- [初出の実例]「兄弟は同胞とて其親しき事他人の比に非ざれば」(出典:小学読本(1874)〈榊原・那珂・稲垣〉四)
- [その他の文献]〔隋書‐長孫晟伝〕
- ② くらべること。並べてつき合わせること。比較。対比。〔周礼‐天官・宰夫〕
- ③ 詩経の六義(りくぎ)の一つ。中国古代詩の一形式で他の事物にたとえて、自分の気持を表現すること。また、その形式による詩。日本で、和歌・連歌・俳諧・能楽などにも適用されている。
- [初出の実例]「莫レ宜二於和歌一、和歌有二六義一、一曰風、二曰賦、三曰比、四曰興、五曰雅、六曰頌」(出典:古今和歌集(905‐914)真名序)
- [その他の文献]〔詩経大序〕
- ④ 数量を比較するのに用いる数学的概念の一つ。二つの数または同種の量a、bがあるとき、aがbの何倍に当たるか、aがbの何分の一に当たるかという関係を示すものをaのbに対する比という。a:b と書き「a対b」と読む。比率。割合。〔工学字彙(1886)〕
- ⑤ 易の六十四卦の一つ。。上卦は坎(水)、下卦は坤(地)。水地比ともいう。親しむ意で、地上の水が地中に浸潤して親密となるさま。〔易経‐比卦〕
- ⑥ 奈良・平安時代初期、年数を数える単位。一比は六年。主に六年に一回作る戸籍の作成回数を表わすのに用いる。
- [初出の実例]「古記云。五比。謂二五六卅年一也」(出典:令集解(701)戸)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
比
ひ
ratio
2つ以上の数または2つ以上の量,たとえば a と b があるとき,この量の大きさの関係を表わすのに用いられる概念で,a:b という符丁を比といい,「 a 対 b 」あるいは「 a と b との比」などと読む。 a:b と a':b' が等しいというのは,a:b を一定倍 k 倍に拡大して a':b' になること,すなわち a'=ak,b'=bk あるいは a'/a=b'/b=k のことで,このとき a:b=a':b' と書く。特に a:b:c のように,3つ以上の比は連比という。中等教育までは,0を用いないのが普通であるが,a ,b ,c のうち2つまでは0の場合を考えることもある。 0:0:0 というのは考えないのが普通である。2つの場合 a:b=a':b' の場合は,a/b=a'/b' とも同じで,これは b に対して a が何倍かを表わしているので,a の b に対する倍率で比を処理することもできる。この a/b を比 a:b の値ということもある。連比の場合は「比の値」は通常は考えない。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
比
ひ
数a、bについて、a=rbすなわちa/b=rであるとき、rをaのbに対する比または比の値といい、a:b(「a対b」と読む)とも書く。a、bはそれぞれ、この比の前項、後項とよばれる。これを入れ換えた比b:aをもとの比の反比または逆比という。以上の定義に従えば、ある比とその反比が意味をもつためにはa≠0,b≠0でなければならない。なお、割合は比の値を表す日常用語である。
二つの量A、Bを比較する場合も、BがAのr倍であることを、BのAを基準とする比または比の値がrであるという。とくに、Aを単位量とすれば、rはBの大きさを表す数になる。同種の量の比の値を比率といい、これを小数で表したものを歩合という。これを、100分の1、1000分の1、100万分の1を単位として表したものをそれぞれ百分率、千分率、百万分率といい、単位名としてはパーセント(%)、パーミル(‰)、ピーピーエム(ppm)が用いられる。日本では10分の1、100分の1、1000分の1をそれぞれ割、分、厘とよぶことも行われている。これが狭い意味での歩合である。異種の量の間でも比を考えることができる。速さ(m/秒など)、密度(g/cm3など)がそれである。
[植竹恒男]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
比【ひ】
同種類の二つの量a,b(≠0)に対して,商a/bをaのbに対する比,またはaとbの比といい,a:bで表す。aを比の前項,bを後項といい,a/bの数値を比a:bの値という。
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
世界大百科事典(旧版)内の比の言及
【音楽】より
…このように包括的な〈音楽〉の概念は,ヨーロッパ中世においては崩壊し,それに代わって思弁的な学として〈自由七科septem artes liberales〉の中に位置づけられる〈音楽〉と演奏行為を前提として実際に鳴り響く実践的な〈音楽〉の概念が生まれたが,後者は中世からルネサンスにかけてのポリフォニー音楽の発展につれて,しだいにリズム理論,音程理論などを内部に含む精緻な音の構築物へと進化した。これらの実践的な音楽とその理論がギリシア古代から一貫して受け継いだのは,音楽的な構築の基礎を合理的に整除できる関係(ラティオratio)と数的比例(プロポルティオproportio)に求める考え方である。合理的に割り切れることと数的比例を重んじるこの精神は,古代中国の音律理論にも見られるところであるが,これをリズム理論,音程とハーモニーの理論,楽節・楽段の構造その他,部分と全体の照応するほとんどすべての関係に及ぼして,精緻な音の構築物を作ろうとするところに西欧的な〈作曲composition〉の特色があった。…
【株価収益率】より
…株価を1株当り年間税引利益金で除したもので,株価が〈1株当り利益〉EPS(earnings per shareの略)の何倍に買われているかを示す指標(単位は〈倍〉)。PERあるいは単に略して〈レシオratio〉という呼称のほうが一般的である。1920年代のアメリカで生まれた株価評価の考え方であり,今日まで主流を占めて使用されている。[株式投資]の採算は従来,株主配当すなわち[利回り]を基本としてきたが,企業基盤の確立,高度経済成長時代での投資活発化を背景に,企業の収益力,安定性に加え成長性を重視する傾向が強くなり,58年前後の,いわゆる利回り革命前後より普及が始まり,今日では株価評価上,最も代表的な指標となっている。…
【理性】より
…ドイツ語のVernunftには1870年西周が〈智〉,85年に有賀長雄が〈理〉〈道理〉,96年には清野勉が〈理性〉を当てた。ラテン語のratioは明治30年代に桑木厳翼が〈理性〉と訳し,ギリシア語のnousは1881年の〈万有叡智〉,明治30年代の〈心霊〉の訳語のあと,明治40年代の末に〈理性〉と訳された。なおrationalの訳は1881年以来〈合理的〉である。…
※「比」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」