精選版 日本国語大辞典 「氏子」の意味・読み・例文・類語
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氏神(うじがみ)を信奉する人々のことであるが、氏神の変遷に伴って、現在では神社の信仰圏を形成する人々をさす。古代の氏神は氏長(うじおさ)を中心に春秋の二度にわたって祭りが営まれていた。その祭祀(さいし)を支持する一族すべてが氏人(うじびと)として参加していた。その祭祀集団が自然に血縁的な関係になっていたので、そこで祀(まつ)られる氏神が一族つまり血縁集団の崇拝する神ということになっていたと考えられる。それゆえに氏神ともよばれていたのであろう。つまり古代の氏人は氏族すべての者をさし、それがそのまま氏神の祭祀集団を構成していたのである。現在使われている氏子という名称は、平安末期から中世にかけて文書に出てくるようになる。そして、それまでの氏人にとってかわり、中世以降に氏神の祭祀構成員を意味するようになった。氏神の内容そのものが、古代の氏神からしだいにムラの守護神とみなされるようになると、産土神(うぶすながみ)や鎮守神と同一視されるようになり、氏子そのものも一定地域に即した地域的な祭祀集団を意味するようになった。
現在は氏神とかお宮といえば神社を対象としている。それを信奉する氏子は地域的に限定されるので、同じ地域に二つ以上の社(やしろ)をもつことはない。ただいくつかの村落がまとまって郷として機能している場合には、自らの属するムラの氏神と郷の氏神との二重氏子という形をとることになるが、通例はいずれかに力点が置かれているものである。とにかく、今日的にはムラの神として機能する氏神はムラという一定の地域の守護神として存在しており、氏子はその地域における祭祀集団ということになっている。そしてなんらかの形でその祭祀に関与することになるのである。
ところで、どのような氏神でも、氏子中(うじこじゅう)からとくに世話役として氏子総代が選出され、その管理、運営にあたる。氏神がムラの物事いっさいの中心であるような土地柄では、ムラ寄合(よりあい)を兼ねた氏子寄合などで選出されることになる。一定の任期をもつ輪番制であったりするが、社の清掃、神主の世話、祭礼の運営の責任者となる。また、もともと氏神の祭りに専業の神職が必要だったわけではない。神主などの神役は、氏子のなかから出ていたのである。それが日常生活の複雑化や祭祀形式の多様化に従って、専門の担当者を必要とするに至ったのである。それ以前の、氏子が交代で祭祀を営む形態は、宮座(みやざ)における一年神主や頭屋(とうや)などにみることができる。宮座というのは、伝統を守って祭祀を執り行ってきたもとからの氏子集団が、新しく転入した人々に対して特権的なものとなったときに称するものである。座ともいうが、氏神を中心にした関係からとくに宮座とよばれている。こうしたものとは本質的に異なるが、氏子間に共通した風習もみられる。たとえば、東京近郊の大鷲(おおとり)神社の氏子はその名にちなんで卵はもとより鶏肉も食すことはないという。また、切り口が天王神社の紋に似ているというのでキュウリは食べないといったような食物禁忌を伝える事例は各地に残っている。
氏子としての承認を受ける機会であるが、赤子が誕生して忌み明け後の初宮参りを、氏子入りとするのが一般的である。赤飯などを携えて神社に参る。その際に、赤子をつねってでも泣かせて氏神にその声を聞いてもらうなどという事例が顕著である。氏子入りが同時に地域社会の一員として承認されるという儀礼でもある。土地によっては7歳になってようやく氏子入りするという所もある。そうした土地ではそれまでは神の子だからといった解説がなされている。また、嫁入りなどの際に氏神を訪れるのも、氏子への加入と同時に、その共同体の一員として承認を求める初宮参りと同様の感覚からきているものであろう。なお、誕生や婚姻に伴う氏子入りだけでなく、他所からの移住によって氏子入りが必要となることもある。ムラに移住するときには、そこでの共有財産の使用権などが絡んでくるので、氏子入りが同時にムラ入りや株入りを兼ねることになる。
昨今の都市部のように転住が頻繁に行われるようになると、氏神と氏子との結び付きがどうしても希薄になる。そのうえ、場合によっては氏子入りする神社が兄弟姉妹の間でも異なるという現象が生じてくる。したがって、氏子ならば当然の義務とみなされていた氏神への奉仕も、有志の寄付金に象徴されるような形で求めざるをえなくなっている。さらには、管理や運営をめぐって、地元民と移住者との対立が生じることもある。
[佐々木勝]
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