気体の状態法則を利用する温度計。圧力式温度計のうちの気体充満式のもののように簡便な構造の製品もあるが,一般には,実験室用の計器であって熱力学温度の直接測定などに使われる。一定量の理想気体の圧力,体積,熱力学温度の3量の間の関係に着目すれば,気体温度計の原理をいく通りか考えることができるが,実際には定積気体温度計,すなわち内容積一定の容器内に密閉された気体の圧力,またはその基準値との比を実測することによって,それに比例する性質をもつ熱力学温度,またはその基準値との比を求める形式のものが多く用いられる。気体としてはヘリウムが広く使われ,それと理想気体との性質の差に関する補正を他の実験で求めて適用する。気体の純度(容器壁に吸着されていた気体の放出がないことなど),容器の内容積の一定性,正しい圧力(比)測定など,細心の注意が必要とされる。
執筆者:高田 誠二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
気体の体積、温度、圧力の間に一定の関係式(状態方程式)が成り立つことを利用して、温度を測定する温度計。ボイル‐シャルルの法則に厳密に従う理想気体を作業体とすれば、理想的な温度計ができるが、実際の気体温度計ではもちろん実在気体を使用する。したがって、これによって得られる温度測定値に適当な補正を行って絶対温度目盛りでの温度測定値が得られる。気体温度計は定圧気体温度計と定積気体温度計とに分けられる。前者は圧力を一定に保つときの体積の変化から温度を決め、後者は体積を一定に保つときの圧力の変化から温度を決める。気体温度計は、原理は簡単であるが、実際の操作はめんどうであり、実験室、工場などにおける現実の温度測定に使われることはほとんどなく、もっぱら温度の絶対測定の基準とされている。
[沢田正三]
一定量の気体は温度がかわると圧力および体積がかわるので,体積を一定に保って圧力を測るか,圧力を一定に保って体積を測る,あるいは二つの容器の温度を一定に保っておき,ある圧力で片方の容器だけに入れておいた気体を他方の容器にまで流し入れたのちの圧力を測ることをすれば温度(気体温度)を知ることができる.それらは定容気体温度計,定圧気体温度計,定温度容器気体温度計といわれる.わずかな補正を加えることによって気体温度は熱力学的温度に変換できるので,気体温度計は温度の定点の熱力学的温度値を決めるのにもっぱら用いられてきた.気体にはヘリウム,ネオン,アルゴン,水素,窒素などが用いられ,低温用容器には銅,高温用容器には石英ガラスがもっぱら用いられている.圧力計には水銀U字管を用いたものが一番精度が高い.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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[歴史]
熱膨張を利用した古代の魔術まがいのしかけを別とすれば,温度の変化を示す装置を最初に考案したのはG.ガリレイといわれる。彼は,今日いう気体温度計に近いものを17世紀初期に作ったが,大気圧の変動の影響を受けるものであったから,真の温度計とはみなされず,サーモスコープthermoscope(温度見の意)と呼ばれた。ガラス管の中に液体を封入した構造の温度計は,17世紀半ばにイタリアなどで実用化され,ヨーロッパ各地に普及した。…
※「気体温度計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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