精選版 日本国語大辞典 「気候学」の意味・読み・例文・類語
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気候について研究する学問。気候という語climateがギリシア語の傾斜(地軸の傾き)を意味するklineinからできたといわれていることから明らかなように、ギリシア時代には気候に関する認識があり、アリストテレスやヒポクラテスは気象あるいは気候についての最初の書物を著したとされている。その時代の気候は環境としての認識である。その後西洋においては、中世以後まで特別の発達はみられない。しかし東洋においては15世紀になると、中国の明(みん)、朝鮮の李朝(りちょう)では降水量の観測が行われた。17世紀に入ると西洋でも温度計、気圧計が発明され、特定地点であるが計器による観測が始まり、徐々に連続観測が拡大し気候資料が累積する。19世紀は気候学上の発見時代であり、各地の気候についての知識が急増した時代であった。日本においては、天候、季節の推移についての感覚は鋭く、記述も多いが、気候学的に意味のある観察、記述は江戸時代に入ってからで、天文学者である渋川春海(はるみ)、西川如見(じょけん)、農学者の宮崎安貞(やすさだ)、医者であり文筆家の橘南谿(たちばななんけい)(1753―1805)らにより行われている。西欧で19世紀から20世紀にかけての気候学の確立期に活躍した学者にフンボルト、ボエイコフ、ハン、ケッペンらがいる。日本では幕末期から気候学の知識が輸入され、従来からの知識と混じり、小出房吉(こいでふさきち)(1869―?)、中村精男(きよお)、岡田武松(たけまつ)、福井英一郎(1905―2000)らにより確立された。
[吉村 稔]
今日の気候学は多岐にわたり、各地の気候について正確に記述することを目的とする気候誌や気候区分論、気候の形成のメカニズムを物理学的に研究する物理気候学、気候を総観場(ある地域の気候を、天気の集合として天気図や上層風向などとの関係で調査する)との関係から研究する総観気候学が、純粋気候学の分野である。それに対して、気候を環境の構成要素と考えて、生物との関係を明らかにする気候学の立場があり、人間生活に関連した分野と、植物・動物を対象としたものとに大別される。前者はさらに、人間の生理的な面を対象としたものと、人間の活動と気候との関係を対象としたものとがある。また、この分野とは別に純粋気候学の一分野として、過去の気候、すなわち地質時代、先史時代、歴史時代から観測時代を通じての気候の変化、その現象を明らかにすると同時にその原因について研究する古気候学ないし気候変化論があり、近年の不順な天候との関係から、取り組む研究者も多くなった。気候学の対象とする大気の状態は、人間生活に密接に関係する地上1.2メートルないし1.5メートルの気層についてであるが、上層大気と地表付近との関係が明らかになるにしたがって、高層気候学が分化し、さらに現在の都市のように、人間活動が地表面から地下にまで拡大し、大地の構造に変化を与えるようになると、その分野の気候についても研究が必要になってきている。
さらに気候学に特色的な概念に、気候のスケールの概念がある。これは、対象とする空間の広さ、ひいては垂直的な広がりによって、作用する大気の大きさ、気候として把握される現象に差があるためで、大気候、中気候、局地気候(小気候)、微気候に分けられる。このスケールの概念は、時間についても考慮される。したがって、特定地点の気候についてもこれらを考慮していく必要がある。
気候学は大気の総合的な状態を対象としており、また観測は特別観測を除いては気象観測に依存する面が大きい。その意味からは気候学は気象学の一分野であるが、場所の限定のない気候学はない。また、どのように空間を設定するかが、気候を把握するうえにきわめて重要である。その意味では地理学の知識も不可欠である。
最近のリモート・センシング(遠隔計測)や情報処理技術の発展により、未知の地域の気候が明らかにされると同時に、人間活動の気候に対する影響あるいは気候変動の研究に、多くの成果が出ている。
[吉村 稔]
『吉野正敏著『気候学』(1968・地人書館)』▽『福井英一郎・吉野正敏編『気候環境学概論』(1979・東京大学出版会)』
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…気象の現象論的な面を重視したものを気象学とし,物理的な面に重点をおいたものを大気物理学といって区別することもある。また,日々の気象を記述し,研究をする学問を狭義の気象学とし,何年にもわたる気象の平均的な状態を記述し,研究をする学問を気候学として区別することもある。しかし,広義には気候学も気象学の一分野である。…
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