酸化数Ⅱの化合物が普通に知られている。化学式Cu(OH)2。硫酸銅(Ⅱ)CuSO4水溶液にアンモニアNH3を加えると,まず沈殿を生じ,さらにこれが溶けはじめる。沈殿がちょうど溶解するまでアンモニアを加えた溶液に,アルカリを加えるか,またはこれを硫酸デシケーター中に保存して遊離のアンモニア濃度を減少させると,青白色の結晶性沈殿として得られる。これは反応性がやや小さく100℃に熱しても変化しない。硫酸銅(Ⅱ)水溶液に直接アルカリを加えるとゲル状水酸化物を沈殿するが,これはより反応しやすく,水溶液のまま加熱すると酸化銅(Ⅱ)CuOに変化し黒色を呈する。比重2.368。次に示すような無限鎖状構造をもつ。
各銅原子の上方および下方から隣の鎖のOHが結合し,銅は6個のOHによりとり囲まれている。希酸に不溶。シアン化アルカリ水溶液,アンモニア水には可溶。濃いアルカリ水溶液には[Cu(OH)4]2⁻をつくって青色溶液となる。銅水溶液の加水分解反応により[Cu2(OH)2]2⁺が生成する。
執筆者:水町 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
【Ⅰ】水酸化銅(Ⅰ):CuOH(80.55).銅(Ⅰ)塩水溶液に水酸化アルカリを加えると黄色の沈殿として得られる.生じたものは水酸化銅(Ⅰ)とされているが,それよりはCu2O・(H2O)nかCu2Oであろうといわれている.黄色は沈殿の粒の大きさによるとされている.360 ℃ で脱水,酸化銅(Ⅰ)になる.また,沈殿を水中で煮沸すると赤色の酸化銅(Ⅰ)になる.【Ⅱ】水酸化銅(Ⅱ):Cu(OH)2(97.57).可溶性銅(Ⅱ)塩水溶液に小過剰の水酸化アルカリを加えて0 ℃ に保つと,青色のゲル状の水酸化銅(Ⅱ)が得られる.密度2.36 g cm-3.ゲル状のものは反応性が強い.60~80 ℃ に加熱すると黒色の酸化銅(Ⅱ)にかわる.いくぶん両性の性質をもち,濃アルカリには [Cu(OH)4]2- となって溶ける.希薄な酸には溶けない.アンモニア水,シアン化カリウム水溶液には錯塩をつくって溶ける.テトラアンミン錯体[Cu(NH3)4](OH)2溶液は濃青色で,銅の定性分析に利用される.また,シュワイツァー試薬としてセルロースの溶解にも用いられる.そのほか,媒染剤,顔料,銅塩の製造,触媒原料,着色紙などに用いられる.[CAS 20427-59-2]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
銅の水酸化物。銅(Ⅰ)塩水溶液に水酸化アルカリを加えると黄色沈殿としてCu(OH)が得られるといわれているが、これは酸化銅(Ⅰ)Cu2Oのゲルであるとされている。
一般に水酸化銅というときは水酸化銅(Ⅱ)をさすことが多い。銅(Ⅱ)塩水溶液に水酸化アルカリを反応させると得られる。青色の粉末。冷水に不溶。熱水では脱水されて黒色の酸化銅(Ⅱ)となる。アンモニア水、シアン化アルカリなどには錯イオンをつくって溶ける。アンモニア水に溶けた濃青色の溶液はシュワイツァー試薬(銅アンモニア溶液)とよばれ、キュプラ(銅アンモニアレーヨン)の製造などに用いられる。水酸化アルカリにはコロイド溶液となって溶け、濃いときは錯イオンをつくって溶ける。濃アルコール、酸にも溶ける。
[中原勝儼]
水酸化銅(Ⅱ)
Cu(OH)2
式量 97.6
融点 ―
沸点 ―
比重 2.368(測定温度20℃)
結晶系 斜方
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
東海沖から九州沖の海底に延びる溝状の地形(トラフ)沿いで、巨大地震発生の可能性が相対的に高まった場合に気象庁が発表する。2019年に運用が始まった。想定震源域でマグニチュード(M)6・8以上の地震が...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新