一般には,水の流出入を調節する門扉などの構造物をいうが,河川工学では,取水,排水,通航などのために河川や水路を横断して設けられる流水の調節施設で,堤防の機能をももつものを指す。したがって,洪水時や高潮時に扉を全閉して,堤防の代りとなりうるものをいい,せき(堰)との区別は洪水時,高潮時に堤防の機能を有するかどうかにある。水門は,おもに,低平地において支川や排水路が合流するところに設けられることが多い。それは,本川の洪水が支川や排水路に逆流するのを防ぐためである。しかし,水門を全閉している間は,支川や排水路の水は本川に排出されない。したがって,本川の水位が低い間に,可能なかぎり支川や排水路の水を排出し,水門を全閉した後は,支川や排水路の末端に池を造ってそこに一時貯留するか,ポンプ設備で排水する方法がとられる。高潮に対する防潮水門にも同様な方法がとられる。取水のためや分派点に設けられる水門は,洪水時に全閉すればその機能を果たすことができるので,支川,排水路の合流点における水門のようなむずかしい操作は必要ない。なお,扇状地河川のように急こう配な河川では,支川などへの逆流も限界があるので,その合流点に水門が設けられることはほとんどない。なお,水門と同様の機能を有する河川構造物として,堤防内を暗きょで横断する樋門(ひもん)がある。
執筆者:大熊 孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
洪水の支川への逆流や高潮、津波の河川への遡上(そじょう)を阻止するために河川を横断してつくられる構造物。本川の洪水が支川に逆流するのを防止するために支川に設置される逆流防止水門、高潮・津波が河川を遡上するのを防止するために河口付近に設置される防潮水門がある。水門にはゲートが備えられる。水門のゲートは平常時は開けておき、洪水時、高潮発生時、津波襲来時に全閉する。ゲート全閉時に支川の水を本川に、河川の水を海に排水するために排水機場を設置することがある。イギリス・テムズ川のテムズバリア(1984年完成)はロンドンを高潮から守るための防潮水門である。
[鮏川 登]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…池水や河水を放出・流下させる水門のことで,〈圦樋(いりひ)〉ともいう。佐藤信淵の《隄防溝洫志》に〈川下の井路筋へ用水を引入れ,或は用水落堀より川中へも落す為に,堤に仕込みて其戸を開闔(かいこう)する者也。…
※「水門」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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