江の川(読み)ゴウノガワ

デジタル大辞泉 「江の川」の意味・読み・例文・類語

ごう‐の‐がわ〔ガウ‐がは〕【江の川】

江川ごうがわ

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日本歴史地名大系 「江の川」の解説

江の川
ごうのかわ

中国地方最大の川で、上流域は可愛えの川とよばれる。全長二〇六キロ。中国脊梁山地の阿佐あさ山山塊、山県郡大朝おおあさ町北端の三坂みさか峠付近に源を発し、大朝盆地を南下して千代田ちよだ町を経、高田郡八千代やちよ町で東に流れを変え、さらに東北に向かい三次みよし盆地で大きく屈曲して西北流となるが、ここで備北山地に発する神之瀬かんのせ川・西城さいじよう川と、世羅台地に発する馬洗ばせん川を合わせる。一般にはこの諸河川合流以降を江の川と称し、双三ふたみ郡・高田郡の郡境沿いに流れて、やがて北流、脊梁山地のくびれた所を横断して島根県域に入ると「江川ごうがわ」とよばれる。島根県域での本流域はほとんど平野をもたず、地盤の隆起に抗して激しい浸食下刻作用を続けた跡が河岸段丘にみられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「江の川」の意味・わかりやすい解説

江の川 (ごうのかわ)

広島・島根両県にまたがる中国地方第一の川。この川の名称は,旧河川法の時代には広島県側が郷川(ごうがわ),島根県側が江川(ごうがわ)と告示されていたが,1966年4月に1級河川に指定された際,江の川と統一された。本流は広島県山県郡北広島町北端の阿佐山に発する可愛川(えのかわ)であり,標高400~700mの中国(高田)高原の上を南東へ,ついで北東に流れて三次市に至り,ほぼ同じ規模の支流,馬洗(ばせん)川,西城川,神野瀬(かんのせ)川を合わせる。その後,流路を西方へ反転させ,中国山地の隆起に抗して江の川関門と呼ばれる深い峡谷をうがち,典型的な先行性流路を形成する。島根県に入ると美郷町粕渕(かすぶち)まで大迂回した後,南西へ,さらに北西へと流れ江津市で日本海に注ぐ。水源の阿佐山と河口の江津市との直線距離は30kmにすぎないが,本流の長さはその6倍以上の194kmもある。また,全流域面積3870km2のうち,2/3以上が広島県側すなわち中国山地の南側にある。広島県側にある江の川上流部の可愛川は,大半が中国高原の上にあり,これを浅く削って数多くの小盆地を形成する。大朝,八重,吉田,吉舎(きさ),三良坂,西城,庄原,比和などの盆地がそれで,谷底平野はすみずみまで水田化され,それぞれに地方中心の古い町が発達してきた。その中心が三次市で,江の川上流部の水がすべて集まるのと同じく,多くの人と物資が集散する。三次盆地一帯には県下の1/3にあたる3000基をこす古墳が集中し,中国山地の砂鉄生産などを背景に,5~8世紀ころにはかなりの社会的・経済的発展があったとみられる。近年は大規模な農業基盤整備事業を推進して農業の近代化をはかるとともに,中国自動車道の完成を契機に企業の誘致に熱心である。典型的な求心的合流点に位置する三次市街地は,古くから水害に悩まされてきた。特に最近は,河川改修の進捗につれて各支流から増水しやすくなり,合流点付近に異常な高水位を招くことが多く,1972年7月の豪雨災害がその例である。このため現在は,土師(はじ)ダム(1974完成)など上流ダム群の洪水調節によって,尾関山観測所(合流点の下流)での計画高水流量毎秒7600m3を基準に大規模な護岸を完成させている。三次の夏の風物詩鵜飼い,晩秋の晴れた早朝に発生する三次の霧は,いずれも江の川の広い川面と関係がある。

 江の川中・下流部の谷は谷底平地を欠く峡谷ないし幼年谷であり,河口にすら三角州ができていない。しかし,中国山地を貫通する山陰山陽の大動脈として古くから舟運に利用されてきた。江戸中期から特に盛んになり,沿岸の船着場は大変にぎわった。下り荷として三次からは雑貨を主に酒,しょうゆ,反物が,川本からは鉄,薪炭や石見銀山の銀,銅が積み込まれ,江津からの上り荷(塩,乾魚,焼物など)の倍以上の量であった。三次から江津までの下りは1日で足りたが,上りには数日を要した。舟運は沿岸の〈たたら〉や石見銀山の衰退に伴って明治末期から徐々に少なくなり,大正以降は発電用の鳴瀬堰堤(なるせえんてい)の築造(1919),道路改修と自動車通行,三江北線の開通(1937)によって完全に消滅していった。しかし,舟運に代わるはずであった三江線の全線開通は1975年8月まで待たなければならず,またこの間に1973年の豪雪や1972年の水害なども災いして流域の過疎化が進んだ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「江の川」の意味・わかりやすい解説

江の川
ごうのかわ

中国地方第一の長流。延長194キロメートル、流域面積3870平方キロメートル。「ごうがわ」「ごうのがわ」ともいい、江川とも記す。中国太郎ともよばれる。広島・島根県境の阿佐山(あさやま)山塊に源を発し、広島県北部を東流し北流して三次(みよし)市付近で神瀬(かんのせ)、西城(さいじょう)、馬洗(ばせん)の3川と合流ののち、先行性河川となって中国山地を横断し、峡谷と河岸段丘を形成しながら島根県中央部を三瓶山(さんべさん)に向けて北流。美郷(みさと)町粕淵(かすぶち)で河流を西に転じ江津(ごうつ)市で日本海に注ぐ。三次市より上流を可愛川(えのがわ)という。下流に沖積平野をつくらず「能無(のうなし)川」ともいわれ、また、大水害の記録が多い。とはいえ、水量が豊かで勾配(こうばい)は緩く、古来水運が盛んで山陰と山陽を結ぶ文化、宗教、経済の通過路となる。近世には、石見(いわみ)銀山経営と流域花崗岩(かこうがん)風化地域でのたたら製鉄の進展により、島根側で江津、川本、浜原、広島側で三次、作木(さくぎ)などの河港や渡津(としん)集落が発展した。上り舟には米、塩、茶、瓦(かわら)類、下り舟にはコウゾ、木材、薪炭、和紙、銑鉄(せんてつ)を積み、人も乗せた。1930年(昭和5)江の川に沿ってJR三江(さんこう)線が江津(当時の名称は石見江津)―川戸間に開通してからは舟運は衰退し、浜原ダムの築造で航行は不能となった(三江線は2018年に廃線)。断魚渓(だんぎょけい)、千丈渓(せんじょうけい)などの峡谷や多くの滝があり、アユ釣りも行われる。

[野本晃史]


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百科事典マイペディア 「江の川」の意味・わかりやすい解説

江の川【ごうのがわ】

広島県北部の中国山地に発し,島根県江津市で日本海に注ぐ中国地方最大の川。長さ194km,流域面積3900km2。上流は可愛(えの)川(江ノ川)といい,三次(みよし)盆地で馬洗川,西城川,神野瀬川などを集めて江の川となる。かつては山陽と山陰を結ぶ要路で,三次,粕淵(美郷町),川本などは河港であった。石見銀山の輸送路でもあった。河谷に三江線が通じる。包蔵水力が大きく,中流以上に多くのダムがある。
→関連項目石見高原邑智[町]川本[町]桜江[町]島根[県]広島[県]瑞穂[町]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「江の川」の意味・わかりやすい解説

江ノ川
ごうノがわ

江川」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の江の川の言及

【可愛川】より

…広島県北東部を流れる江の川(ごうのかわ)上流部の本流部分。広島県側での呼称で吉田川,郷川と呼ばれたこともあるが,1966年江の川が1級河川に昇格した際に名称統一があり,江の川とされた。…

※「江の川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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