改訂新版 世界大百科事典 「河手」の意味・わかりやすい解説
河手 (かわて)
中世,河川に設けられた関所を通過する旅客や荷物に課せられた通行税の一種。もともと河渡などの交通上の施設や労役に対する代償の意味を持つものとして,渡賃や船賃と同様のものであったらしい。しだいに一種の得分として,渡場などで通行する旅客や荷物から関銭を徴収することによって得られるものを,河手と称するようになった。史料上の初見は《吾妻鏡》建暦2年(1212)9月21日の条で,鎌倉幕府は諸国での〈津料河手〉の徴収を禁じたが,所々の地頭から〈得分〉として,認めてもらいたい旨の申し出があったため,この禁止を解除したとある。これ以後,幕府は1262年(弘長2),81年(弘安4)としばしば幕府の下知状を帯びたもの以外の徴収を禁じている。南北朝時代の1346年(正平1・貞和2)12月13日に室町幕府より出された〈諸国守護人非法条々〉のうちには,〈新関を構え,津料と号し,山手河手を取り,旅人の煩を成す事〉を禁じたことがみえる。これ以後は〈河手〉と称する史料はみえず,津料・関銭に吸収されていったものと思われる。
執筆者:小林 保夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報