治まる(読み)オサマル

デジタル大辞泉 「治まる」の意味・読み・例文・類語

おさま・る〔をさまる〕【治まる】

[動ラ五(四)]
収まる3」に同じ。「内乱が―・る」「騒ぎが―・る」「風が―・る」「このままでは気持ちが―・らない」
政治秩序が行き渡る。「国が―・る」
痛みや、症状などがしずまる。「腹痛が―・る」「せきが―・る」
[類語](1)(2落ち着く治める統べる/(3癒える治る癒やす癒やしヒーリング

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精選版 日本国語大辞典 「治まる」の意味・読み・例文・類語

おさま・るをさまる【治・修・納・収】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
  2. [ 一 ] ( 治・修・収 ) 物事が安定した状態になる。ととのった状態になる。
    1. 乱れや騒ぎなどがしずまる。
      1. (イ) 平穏な状態になる。平和が保たれる。
        1. [初出の実例]「百姓乂(ヲサマリ)(やす)く、四夷(よものひな)賓服(まうできしたが)ふ」(出典:日本書紀(720)雄略二三年八月(前田本訓))
        2. 「世をさまらずして、凍餒(とうたい)の苦しみあらば、とがの者絶ゆべからず」(出典:徒然草(1331頃)一四二)
      2. (ロ) 乱れ、騒ぎなどがおだやかにかたづく。
        1. [初出の実例]「短冊は出る、御家は納(ヲサマ)る、姫君の御病気は平癒する」(出典:歌舞伎・毛抜(1742))
        2. 「お前さんさへ我(が)を折れば、三方四方円く納まる」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二)
      3. (ハ) 風雨、波、寒暑などが激しくなくなる。しずまる。
        1. [初出の実例]「邪風ここに頓かに戢(ヲサマリ)」(出典:大慈恩寺三蔵法師伝院政期点(1080‐1110頃)一〇)
        2. 「八嶋の外の よつのうみ 波もしづかに おさまりて」(出典:十六夜日記(1279‐82頃))
    2. 苦痛などがしずまる。病気がなおる。
      1. [初出の実例]「いみじく痛き程は、起きて押へたるなむ、少しをさまる心地する」(出典:秋成本落窪(10C後)二)
    3. 乱れた気持がしずまる。落ち着く。
      1. [初出の実例]「たれもたれも、ある限り心おさまらぬほどなれば、おぼす事どももえうちいで給はず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)賢木)
    4. 行ない、態度、心などがととのってよくなる。
      1. [初出の実例]「れいの、ことにおさまらぬけはひどもして」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
      2. 「美男だけに伝太の品行(みもち)(ヲサマ)らず」(出典:いさなとり(1891)〈幸田露伴〉七九)
  3. [ 二 ] ( 収・納 ) 物が整頓された状態で中にはいる。また、物事があるべき所に落ち着く。終わりになる。
    1. (物や金銭などが)受け取られる。納入される。「税金が納まる」 〔日葡辞書(1603‐04)〕
      1. [初出の実例]「手付けは三年も昔に納(ヲサマ)ったるんやもん」(出典:父の婚礼(1915)〈上司小剣〉四)
    2. ある範囲内に全部が残らずはいる。また、神仏などが、ふさわしい場所に位置を占める。
      1. [初出の実例]「仏舎利は龍宮にこそおさまり給ふなれ」(出典:法華修法一百座聞書抄(1110)六月一九日)
    3. もとあった所にきちんとはまる。「もとの鞘(さや)におさまる」
      1. [初出の実例]「ますらが左の眼の玉、光とともに飛帰り、もとの眼に治りしは、ただ流星のごとくなり」(出典:浄瑠璃・用明天皇職人鑑(1705)一)
    4. 外に現われ出たものがひっこむ。消える。弱まる。
      1. [初出の実例]「月は有明にて光おさまれるものから」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
      2. 「涼しい風が吹いて汗が収まった」(出典:旅日記から(1920‐21)〈寺田寅彦〉二)
    5. 物事が無事にすむ。終わりになる。決着がつく。
      1. [初出の実例]「又奉れるにも、なに事とかやありて、三度奏して後こそおさまりにけれ」(出典:増鏡(1368‐76頃)一)
    6. 生命の活動が停止する。死ぬ。
      1. [初出の実例]「眼と鼻の間を殴られちゃア一遍で絶息(ヲサマ)っちまひますが」(出典:落語思案の外幇間の当込み(1889)〈三代目三遊亭円遊〉)
    7. ( 比喩的に ) うまくあてはまる。適当する。似つかわしい状態である。
      1. [初出の実例]「『てめへの面(つら)幽霊はをさまらねへ』『あれは音羽やの様に好(いい)男でなくっちゃアはへねへ』」(出典:滑稽本浮世床(1813‐23)初)
    8. 歌舞伎のト書き用語。鳴り物などとともに、俳優の所作、舞台転換などの一連の動きが終わることをいう。
      1. [初出の実例]「ト是より下座へ取、楽の入たる誂への所作に成(なる)両人面白き振(ふり)有って、めでたけれと納る」(出典:歌舞伎・名歌徳三舛玉垣(1801)三立)
    9. 歌舞伎で、俳優が奥役から交渉された役を承諾する。
      1. [初出の実例]「納る、得心」(出典:南水漫遊拾遺(1820頃)四)
    10. ( から転じて ) 物事を承知する。納得する。
      1. [初出の実例]「承知するしゃうちせん、おさまるおさまらん」(出典:当世花詞粋仙人(1832))
    11. ある地位や状態に満足して落ち着く。ゆうゆうと落ち着いている。
      1. [初出の実例]「自分の目の前に結城紬(ゆふきつむぎ)を二枚重ねて納ってゐるこの男を」(出典:都会の憂鬱(1923)〈佐藤春夫〉)

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