洞察(読み)どうさつ(英語表記)insight 英語

精選版 日本国語大辞典 「洞察」の意味・読み・例文・類語

どう‐さつ【洞察】

〘名〙 (「とうさつ」とも)
物事を見ぬくこと。見とおすこと。洞見透察
※殿村篠斎宛馬琴書簡‐天保七年(1836)一〇月二六日「これらの意味、知己ならではいはれぬ事、御洞察可被成下候」
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉三「人の胸中を洞察する明があるかの如く」
心理学で、新しい事態に直面したとき、試行錯誤法によらないで問題を解決する知性の重要な働き。見通し。〔いのち科学(1964)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「洞察」の意味・読み・例文・類語

どう‐さつ【洞察】

[名](スル)物事を観察して、その本質や、奥底にあるものを見抜くこと。見通すこと。「人間心理洞察する」「洞察力」
[類語]眼識先見明察目利き識見見識炯眼けいがん活眼慧眼眼力眼光心眼達眼審美眼目が高い目が利く目が肥える

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「洞察」の意味・わかりやすい解説

洞察
どうさつ
insight 英語
Einsicht ドイツ語

主として問題解決problem solvingの場面で解決の鍵(かぎ)となる行動を、人および動物が見通すことを意味する。その結果、外見的には突然新しい行動の方向が生じ、解決がなされるようにみえる。ドイツの心理学者ケーラーチンパンジーの回(まわ)り路(みち)実験では、たとえば柵に遮断されて、手を伸ばしても直接バナナをとれない場合、動物が、檻(おり)の中に置かれた棒に気づいてこれをとり、柵の間からバナナをかき寄せることに成功した。バナナをとった経験と棒を握った経験とを適切に結び付けることが解決の鍵で、洞察は経験の再構成reconstruction、構造転換restructureなどがポイントになる。洞察を含む学習を洞察学習insight learningといっている。一方、アメリカの心理学者ソーンダイクの問題箱の実験では、ネコが試みと仕損じを繰り返して、外見上、偶然に箱の外に出てくる経過が報告されている。これを試行錯誤学習trial and error learningという。この区別は記述的なもので、問題場面の構造、難易度によって、学習行動にいずれかが際だって認められる。

小川 隆]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典 第2版 「洞察」の意味・わかりやすい解説

どうさつ【洞察 insight】

動物心理学用語。〈見通し〉ともいわれる。ヒトないし動物がある困難な情況に直面したとき,突然,解決手段を見いだして,その情景の目的にかなった行動をとるような場合の心的過程を説明する概念で,ゲシュタルト心理学に由来する。すなわち,個々の情況の要素から,全体の連関を把握することをいう。洞察行動の最も有名な例は,W.ケーラーのチンパンジーの実験である。天井につるしたバナナを得ようと,なん回か跳びついてみたが,得ることのできなかったチンパンジーが,部屋に置かれた箱に気づき,これを重ねてバナナをとったり,さらに手近にある棒を用いて餌をとることにも成功したというものである。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「洞察」の意味・わかりやすい解説

洞察
どうさつ

見通し」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典内の洞察の言及

【思考】より

…第2は,思考を場の再構造化の過程としてとらえるゲシュタルト心理学の立場である。ここでは思考が,〈洞察(見通し)〉または観点変更という知覚の法則で支配される過程とみなされる。その結果,ものごとを一挙に洞察する直観が,論理以上に重視されることとなる。…

※「洞察」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

少子化問題

少子化とは、出生率の低下に伴って、将来の人口が長期的に減少する現象をさす。日本の出生率は、第二次世界大戦後、継続的に低下し、すでに先進国のうちでも低い水準となっている。出生率の低下は、直接には人々の意...

少子化問題の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android