浪人(読み)ロウニン

デジタル大辞泉 「浪人」の意味・読み・例文・類語

ろう‐にん〔ラウ‐〕【浪人】

[名](スル)
古代本籍地を離れ、他国を流浪している者。浮浪人
(「牢人」とも書く)中世・近世主家を自ら去ったり、あるいは失ったりした武士。江戸時代には幕府の大名取りつぶし政策などにより著しく増加し、政治・社会問題となった。浪士
入学試験や入社試験に不合格となり、入学就職ができないでいる人。また、職を失って、きまった職のない人。「一年浪人して志望校を目ざす」

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精選版 日本国語大辞典 「浪人」の意味・読み・例文・類語

ろう‐にんラウ‥【浪人・牢人】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 郷土を離れて、諸国を流浪する人。特に令制で、戸籍に記載されている本貫(ほんがん)の地を離れた者。調庸の負担から逃れることになる。
    1. [初出の実例]「不土人浪人及王臣佃使。撿録財堪甲者」(出典:続日本紀‐延暦九年(790)一〇月癸丑)
    2. [その他の文献]〔柳宗元‐李赤伝〕
  3. ( ━する ) 主家を去り封祿を失った人。また、そのようになること。特に近世、仕官していない武士。主人持ちでない武士。浪士。
    1. [初出の実例]「昔は信濃国住人、今は牢人(ラウニン)笠原平五頼直」(出典:源平盛衰記(14C前)二七)
    2. 「おのれが野崎の暴れ故伯父は侍一分立たず、らう人し大坂へ下るとの便」(出典:浄瑠璃・女殺油地獄(1721)中)
  4. ( ━する ) 職業を失うこと。また、一定の職業のない者。失業者。
    1. [初出の実例]「高祖は、領地とては一尺の地も持せず、独夫の牢人なりしかども」(出典:集義和書(1676頃)一二)
  5. ( 牢人 ) 牢に入れられている人。牢者。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  6. ( ━する ) かけおちをすること。また、その人。
    1. [初出の実例]「うらが国で浪人せる者ア、ろくなアことじゃアおざらぬぞ〈おう刕にては、欠落するをらう人といふ〉」(出典:滑稽本・旧観帖(1805‐09)二)
  7. ( 浪人 ) ( ━する ) 上級学校の入学試験に不合格となり、学籍をもたないで、翌年の試験のために勉強すること。また、その人。
    1. [初出の実例]「真田の人相は、ぐっと若くなって二十歳ぐらいの浪人風〈略〉飴色の眼鏡をかけ、スプリングの下に学生服を着ている」(出典:野獣死すべし(1958)〈大藪春彦〉)

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百科事典マイペディア 「浪人」の意味・わかりやすい解説

浪人【ろうにん】

主家を持たない武士態の者。牢人とも。本来は戸籍を離れた浮浪人。主君を離れて禄を失った武士は,戦乱期には軍功による再仕官もできたが,江戸時代,幕藩体制の確立以後は困難になった。とくに家康・秀忠・家光の3代の時代には大名改易などでその数は多く,家光晩年の1650年ごろには40万〜50万人にものぼったという。大量の浪人発生は慶安事件などを起こすに至ったため,幕府は大名・旗本の統制を緩和し,浪人発生の減少に努めた。なお浪人は士籍を失ったのちも苗字帯刀を許されて武士の体裁を保ったが,裏店の借家に住まい,身柄は町奉行の配下で,法的身分は百姓・町人と変わらなかった。
→関連項目五人組(日本史)散切総髪柳沢氏

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普及版 字通 「浪人」の読み・字形・画数・意味

【浪人】ろう(らう)にん

流浪の人。唐・王勃春思の賦〕僕は本(もと)浪人、生自ら淪(しづ)む。書を懷(いだ)いて洛を去り、劍をいて秦を辭す。

字通「浪」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「浪人」の意味・わかりやすい解説

浪人
ろうにん

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