デジタル大辞泉
「浮島」の意味・読み・例文・類語
うき‐しま【浮島】[地名]
宮城県松島湾の塩竈浦にある島。[歌枕]
「塩竈の浦の干潟のあけぼのに霞に残る―の松」〈続古今・春上〉
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うき‐しま【浮島】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① 湖や沼などの水面に浮かび漂っている島のようなもの。植物の根や地下茎の集まり、泥炭の固まりなどから成り、その上に土があったり、植物が生えていたりする。〔書言字考節用集(1717)〕
- ② 水上に浮かんでいるように見える島。〔日葡辞書(1603‐04)〕
- [ 2 ]
- [ 一 ] 宮城県塩竈(しおがま)市の松島湾塩釜浦にある島。歌枕。
- [初出の実例]「みちのくは世をうき嶋もありといふを関こゆるぎのいそがざるらん」(出典:小町集(9C後か))
- [ 二 ] 茨城県稲敷市、霞ケ浦南岸の台地状の島。古くから知られた景勝地。現在は陸繋島。旧浮島村。信太(しのだ)の浮島。歌枕。
- [初出の実例]「乗浜(のりはま)の里の東に浮島(うきしま)の村有り」(出典:常陸風土記(717‐724頃)信太)
- [ 三 ] =うきしまがはら(浮島ケ原)
- [初出の実例]「寄せかへる波の立ちゐに浮島の松にさえ行く風の音かな〈藤原家衡〉」(出典:名所百首(1215)冬)
浮島の語誌
歌枕としては[ 二 ]の[ 一 ]と[ 二 ]の二箇所があるが、平安時代には専ら[ 一 ]を言い屏風絵にも描かれていて、中世以降にみえる[ 二 ]の方は「信太の浮島」と言って区別することが多い。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
浮島
うかしま
[現在地名]橘町大字浮島
屋代島の北方海上約五キロに位置し、周囲七キロ、面積二・八平方キロの小島。
大内氏の水軍宇賀島十郎左衛門の根拠地で、弘治元年(一五五五)九月には陶晴賢が浮島の兵船を率いて厳島を攻めた。その様子を「陰徳太平記」は「先陣宗勝、其後に左は武慶、右は通康、其後に因島、村上と次第に漕並べ、三百余艘を杉形に備へて馳せ向へば、大島、宇賀島是を見て三百艘許り漕ぎ出し戦ひたりけれども」と記している。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
浮島 (うきしま)
floating island
植物や植物遺体(泥炭または枯死体)からなり,湖沼や河川に浮遊する島。浮島が浮遊するのは,植物や植物遺体のもつ浮力と浮島内部に発生するメタン,二酸化炭素などのガスによる浮力によっている。日本では,尾瀬ヶ原に代表される高層湿原の池沼に浮島は多くみられ,池底から水面に浮上したコウホネ類などの浮葉植物の根茎や,水面に長く伸びるミツガシワの根茎を核にしてスゲ類やミズゴケ類が侵入して浮島が発達することが知られている。大きさは普通は数m2程度までだが,時には数haに発達する(京都市深泥池,山形県琵琶沼)。泥炭塊が浮遊する場合(鹿児島県藺牟田池)や浮島に高木が生育する場合(和歌山県新宮藺沢)もある。高層湿原以外でも,ヨシ,マコモなどの抽水植物が岸から離れて浮島となる場合がある。熱帯・亜熱帯では,ホテイアオイ,ボタンウキクサなどの浮遊植物やイネ科・カヤツリグサ科の抽水植物からなり,浮芝suddとよばれる浮島が広く見られ,船の航行に障害となるほど巨大に発達する場合がある。乾季に露出した湖底・河底に生えて繁茂した植物が,雨季の増水とともに底から離れて浮島となる場合も知られている。
執筆者:藤田 昇
浮島 (うきしま)
海岸で遠方の島や岬を見ると,それらと海水面との切口が,島や岬の内側に切れ込んで,浮き上がって見える現象である。これは空気の温度が低く,海水の温度が高い場合に,海面に近い空気が暖められ,そこを通る光線が強く屈折することによっておこる。逃水や蜃気楼と似た現象である。
執筆者:畠山 久尚
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
浮島
うきしま
floating island
湖岸や湖底を形成している植物,未分解の植物遺体,腐泥,泥炭などの塊が,水位変動やガスの発生などの作用によって湖中へ分離浮遊したもの。浮島のなかには季節によって浮上したり,沈降したりする周期的浮島 temporary anchored floating islandもある。浮島の表面は普通,挺水 (抽水) 植物が生育していることが多いが,なかには樹木が生えている例も報告されている。日本では大規模なものはみられないが,イギリスの湖沼地方 (北ウェールズ) で,7800m2という記録がある。日本では,浮島大沼 (山形県) ,尾瀬ヶ原 (群馬県) などの浮島がよく知られている。
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浮島〔熊本県〕
熊本県上益城郡嘉島町東部にある溜池。周辺の水田約65ヘクタールを潤す。水生植物が豊富で、鳥類を多く観察することができる。冬にはカモが飛来する。池のほとりに立つ浮島神社は池に浮かんでいるかのように見え、地元では「浮島さん」と呼ばれて親しまれている。農水省「ため池百選」に選定されている。
浮島〔千葉県〕
千葉県安房郡鋸南町(きょなんまち)の勝山漁港の西約1.1kmに位置する無人島。
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浮島【うきしま】
浅い沼や池でみられる水上を浮動する島。植物や植物遺体(泥炭)からなる。突出湖岸が水位の上昇,低下などで植物をのせたまま浮き出したもの。山形県の大沼が有名。
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出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
世界大百科事典(旧版)内の浮島の言及
【蜃気楼】より
…砂漠や乾燥地ではよく起こっている。海面が暖かいときには[浮島]現象が見えることもある。(3)水平方向に強い温度勾配がある場合には,遠方の山や船が左右二つ並んで見えることがあるという。…
【藺牟田池】より
…泥炭の厚さは時には1m以上に達し,減水時は底に固定されているが増水時には浮いて漂う。これが浮島で,泥炭形成植物群落は天然記念物になっている。またジュンサイやヒシもとれる。…
【桜川[村]】より
…霞ヶ浦南岸にあり,村域は霞ヶ浦沿岸の低地から筑波稲敷台地の東端にかけて広がる。東部の浮島は明治期までは霞ヶ浦に浮かぶ島で,古くは紀貫之の歌にも詠まれたが,大正期以降の干拓で地続きとなった。かつては早場米地帯で米作が中心であったが,近年は野菜の生産がふえている。…
【湿原】より
…
[湿原の遷移]
泥炭湿原のでき方には,湖沼の陸化による場合と,草原や森林の排水不良や湧水での沼沢化による場合とがあり,沼沢湿原,低層湿原,高層湿原へと進行するのが普通である。貧栄養な湖沼では,スゲ類が[浮島]となったり岸辺から開水面にマット状に張り出し,その上にミズゴケ類が発達して直接高層湿原化する場合がある。陸化型の場合は,湿原の層序の下層に湖成堆積物の層が出現するのでわかる。…
※「浮島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」