こう‐わん カウ‥【港湾】
〘名〙 海が
陸地に入りこんだところ。また、人工的にそのようにつくられたところ。船の
出入、
停泊、客の
乗降、
貨物のあげおろしなどの
設備のある
水域をさしていう。
みなと。
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デジタル大辞泉
「港湾」の意味・読み・例文・類語
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港湾
こうわん
harbour; port
船舶の停泊,荷の積み降ろし,乗客の乗降などのために,風や波や潮流を遮蔽した水域。人間が舟で海へ出るようになって以来,港湾は文明に大きな役割を果たしてきた。地中海に発展したフェニキア人(→フェニキア)は海上交通に通じ,前13世紀にサイダ(シドン)とテュロス(ティルス)に港湾を築き,貿易活動は当時の全世界に及んでいた。中世のベネチアとジェノバが地中海貿易の覇を競ったように,大都市は海路を開発する能力に応じて力を得てきた。当時の港湾の多くは自然の地形をいかした天然港湾で,1800年代半ばまでほとんど進歩はみられなかった。初期の船は小型であったので,どこでも天然の港湾で十分役割を果たしていたからである。やがて産業革命とともに貿易と商業が盛んになり,船舶の大型化に伴い港湾も人工的に広さと深さとを拡張する必要が生じてきた。これを天然港湾に対して人工港湾と呼ぶ。こうした意味では今日の港湾のほとんどは人工港湾といえる。現代は,遊覧船の集う小さな囲い港から数千エーカーを有する港湾までさまざまな規模の港湾が存在する。
港湾の機能で重要なのは,遮蔽水域の広さである。ニューヨークやサンフランシスコの港湾は,狭い海峡や陸地が風や波の理想的な天然の防壁となっているが,多くの港湾は波や風が容赦なく侵入する開口面をもつ。このような港湾では防波堤がつくられている。インドのチェンナイ(マドラス)のように海辺の開けた場所にある港湾の防波堤は,激しい波浪によって大きな被害を受けることが多く,しばしば修理が必要となる。港湾のもう一つの重要な基準に,水深がある。現代の大型船舶は特別な航路や水路を要し,30m以上の水深が必要なものもある。天然港湾ではそれほどの水深はまれであり,定期的な海底浚渫が必要となる。
港湾の設備の大半は荷の積み降ろし用で,用途によりさまざまな形態がある。たとえば外国貿易に使われるような港湾では,大型埠頭,倉庫,荷役機械,航路標識,通関,検疫事務所,道路や鉄道網などが必要である。このような大規模停泊港には船荷用桟橋が連なり,諸設備と連結されている。ニューヨーク港の海岸線延長は 770km以上であるが,岸壁延長を加えるとさらに 240km長くなる。昔ながらの埠頭に加え大型タンカーから石油を大量に移送する設備を備えた港湾は,定期的な浚渫によって航路水深が維持されている。この大量積み降ろしのスペースは沖に設定されるが,設備としては送油管を運ぶ軽量桟橋があればよい。ほかによく見られる設備にドックがある。
日本は屈曲に富む海外線をもつため,各所に多数の港湾が存在している。国内の港湾は港湾法と漁港漁場整備法によって分類されており,経営形態には私営と公営がある。第2次世界大戦後は重工業への転換とともに臨海工業地帯の造成,掘込港の建設などを中心に港湾開発が進められてきた。天然の地形を利用した港湾としては長崎港,舞鶴港があり,人工港湾としては横浜港や神戸港,大阪港がある。苫小牧港,田子ノ浦港(静岡県),鹿島港などの掘込港湾は,完全な人工港湾といえる。
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港湾【こうわん】
慣用的には港とも。天然の地形を利用,また人工的に外海と隔てるなどして風波の侵入を防ぎ,船舶の出入停泊,旅客の乗降,貨物の積卸しなどを安全・便利に行えるように設備した場所。日本では古くから津(つ),湊(みなと),泊(とまり)などの語が用いられ,〈港湾〉は明治に入ってからつくられた言葉である。慣用的には商港,工業港,漁港,軍港などが含まれるが,厳密には港湾は港湾法の適用を受ける港を指し,漁港法の適用を受ける漁港とは区別されている。日本の港湾法では特定重要港湾(京浜,清水,名古屋,四日市,大阪,神戸,関門など),重要港湾(青森,酒田,舞鶴,高知など),地方港湾,避難港に分けられる。外国貿易上からは,関税法により外国との貿易通商を許されている開港,自由に貨物の積卸し・貯蔵などの許された自由港などがある。一般に護岸,防波堤などの外郭施設を備え,埠頭(ふとう)・桟橋の係留施設,貨物の積卸しをするクレーンなどの荷役施設,倉庫などの保管施設,その他通信・交通・検疫施設などを備える。浚渫(しゅんせつ)・埋立て・堤防等の技術の進歩により鹿島港のような全くの人工港も作られている。→港町
→関連項目バース|埠頭
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こうわん【港湾 harbor】
船を安全に出入り,停泊させ人や貨物などの水陸輸送の転換を行う機能をもつ沿岸域の空間。日本では古来,津(つ),湊(みなと),泊(とまり)などと称していた。これらの語に代わって新たに港湾ということばがつくられ用いられるようになったのは明治になってからである。厳密にいえば,港湾とは港湾法の適用を受けるもののみを指し,漁港法の適用を受ける漁港とは区別されている。港湾という語句はいわば法的な用語であるが,慣用的には港湾と漁港を併せて港(みなと)と呼ぶことが多く,したがって港湾は港の概念に含まれているといえる。
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港湾
こうわん
port and harbo(u)r
人為的につくられた港の施設と、陸域・水域を含めた港の領域とを一体として総称する。港湾の開発、利用および管理は港湾管理者が行い、洋の東西を問わず地方自治体、管理組合、港務局などが管理者となっている。日本の港湾は1950年(昭和25)に制定された港湾法に基づいて運用されている。
[堀口孝男]
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普及版 字通
「港湾」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典内の港湾の言及
【河港】より
…河川沿岸に位置し,もっぱら内陸水路の交通にかかわる港。たとえ内陸の川のほとりにあっても,ロンドン,武漢,モントリオールなどのように海外の港と海上航路で結ばれているものは港湾seaportであって,河港とは呼ばれない。明治期以前の日本では河川が重要な輸送路になり,奥地からは米や薪炭などが平底の小さい川船で下航し,海岸からは塩や塩乾魚などが上航していた。…
※「港湾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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