湯本温泉(読み)ゆもとおんせん

日本歴史地名大系 「湯本温泉」の解説

湯本温泉
ゆもとおんせん

[現在地名]長門市深川湯本

大寧寺たいねいじ川が深川ふかわ川に合流する付近、赤間関あかまがせき街道(北道筋)沿いの地にある。

慶長一五年(一六一〇)検地帳には記載はないが、寛永二年(一六二五)検地において、初めて湯坪役石として五石一斗二升を高請した。大寧寺由来書(「注進案」所収)によると、応永年間(一三九四―一四二八)大寧寺三世定庵が住山の頃「当国の一宮住吉明神、老翁の身を現し室に入て法を問ふ、(中略)菩薩戒を受け後に宗要を究む、応永丁未定庵和尚信衣を以て付属す、明神重ねて老翁の身を現して曰、他日山後に温泉を湧出して灌浴に便りせん、是則ち法乳の洪恩に酬ひ奉ると云終て十丈余の大竜と化し、法衣血脈を戴き雲に乗じて去る云々、温泉初俵山に湧出す、寺を去ること六拾丁、灌浴に便悪しく合山是を愁ふ、温泉移て寺の東に湧く、山門に近きこと六七丁云々」という温泉の起源伝承を記す。


湯本温泉
ゆもとおんせん

[現在地名]磯谷郡蘭越町字湯里

蘭越町の北東部、チセヌプリの南、馬場ばば川の上流にある温泉地。明治一八年(一八八五)大湯おおゆ沼のほとりに小屋を建て、入湯の便を図ったのが始まり。所有者の没後に老妻が湯番をしていたので婆の湯とよばれていたが(大正七年南尻別村「沿革誌」)、馬場川の名が定着すると馬場温泉となった。大正一五年(一九二六)硫黄会社の事務所を改修して湯本温泉が開業(蘭越町史)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「湯本温泉」の意味・わかりやすい解説

湯本温泉(山口県)
ゆもとおんせん

山口県北西部、長門(ながと)市にある温泉。深川(ふかわ)川中流の音信(おとずれ)川の河畔の狭い段丘上に立地。泉源8(うち現在使用しているのは4)、白亜紀流紋岩の破砕帯より湧出(ゆうしゅつ)し、泉質はアルカリ性単純温泉。中世以来大寧(たいねい)寺支配の霊湯として繁栄し、現在も県内では湯田温泉(山口市)とともに知られている。近くに大内義隆(よしたか)が自刃した名刹(めいさつ)大寧寺、義隆の墓、萩(はぎ)焼深川窯(よう)などがある。JR美祢(みね)線長門湯本駅下車。

[三浦 肇]


湯本温泉(神奈川県)
ゆもとおんせん

神奈川県足柄下(あしがらしも)郡箱根町(はこねまち)にあり、箱根温泉郷の表玄関。冬も温暖で、箱根でもっともにぎわう。早川と須雲(すぐも)川の合流点にあたり、奈良時代末の発見といわれる箱根最古の温泉。江戸時代には東海道を上下する旅人の「一晩湯治(とうじ)」で知られていた。箱根火山の基盤岩から湧(わ)き出し、硫酸塩泉と高温の塩化物泉の混合型。早雲寺(そううんじ)は小田原北条氏の菩提寺(ぼだいじ)で、北条五代の墓があり、絹本淡彩北条早雲像と織物張文台および硯箱(すずりばこ)は国指定重要文化財。豊臣(とよとみ)秀吉は小田原攻めのときこの寺を本陣とした。正眼寺(しょうげんじ)には曽我(そが)兄弟を供養した曽我堂がある。箱根細工が特産。箱根登山鉄道箱根湯本駅下車。

[浅香幸雄]



湯本温泉(福島県いわき市)
ゆもとおんせん

福島県いわき市にある温泉。常磐湯本温泉(じょうばんゆもとおんせん)ともいう。平安時代の開湯と伝えられ、古くは自然湧出(ゆうしゅつ)していたが、現在は地下坑内に湧出する熱湯を利用している。泉質は硫黄泉。歓楽的色彩が強い。JR常磐線湯本駅下車。

[原田 榮]


湯本温泉(福島県岩瀬郡天栄村)
ゆもとおんせん

福島県中南部、岩瀬郡天栄村(てんえいむら)にある温泉。岩瀬湯本温泉ともいう。泉質は塩化物泉。阿賀(あが)水系鶴沼川(つるぬまがわ)の上流に位置する山間の湯治場で、開湯は平安初期と伝えられる。近くの二岐(ふたまた)温泉や湯野上(ゆのかみ)温泉、羽鳥(はとり)湖などと大川羽鳥県立自然公園を形成する。国道118号が通じ、JR東北新幹線新白河駅からバスの便がある。

[原田 榮]


湯本温泉(岩手県)
ゆもとおんせん

岩手県南西部、和賀(わが)郡西和賀町(にしわがまち)にある温泉。和賀川上流の東岸にあり、1660年(万治3)の開湯と伝えられる。泉質は塩化物泉。閑静な山の湯で、ツツジや紅葉で知られ、スキー場もある。正岡子規の句碑「山の湯や裸の上の天の川」がある。JR北上(きたかみ)線ほっとゆだ駅からバスの便がある。

[金野靜一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「湯本温泉」の意味・わかりやすい解説

湯本温泉
ゆもとおんせん

岩手県南西部,西和賀町にある温泉。北上川の支流和賀川の東岸に湧出。泉質は硫酸塩泉。泉温は 86℃。共同浴場が多く,古くからの湯治場であったが,湯田ダムの完成によって観光地化した。スキー場も開発され,四季を通じて観光客でにぎわっている。湯田温泉峡県立自然公園に属する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報