源平盛衰記(読み)ゲンペイジョウスイキ

デジタル大辞泉 「源平盛衰記」の意味・読み・例文・類語

げんぺいじょうすいき〔ゲンペイジヤウスイキ〕【源平盛衰記】

鎌倉中期から後期軍記物語。48巻。作者成立年代ともに未詳平家物語異本一つとみられる。源氏関係の記事仏教説話、中国故事などが増補されている。盛衰記。げんぺいせいすいき。

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精選版 日本国語大辞典 「源平盛衰記」の意味・読み・例文・類語

げんぺいじょうすいき‥ジャウスイキ【源平盛衰記】

  1. 鎌倉時代の軍記物語。四八巻。作者、成立年代ともに未詳。源平の興亡、盛衰を多く挿話、伝説、故事をまじえつつ描く。「平家物語」の異本の一種とみられる。源氏関係の記事、仏教説話、中国故事などが増補され詳細だが、構成や表現の格調は語り物系の「平家物語」に比べて劣り、物語として散漫である。謡曲・浄瑠璃など後の文学への影響は大きい。げんぺいせいすいき。

げんぺいせいすいき【源平盛衰記】

  1. げんぺいじょうすいき(源平盛衰記)

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改訂新版 世界大百科事典 「源平盛衰記」の意味・わかりやすい解説

源平盛衰記 (げんぺいせいすいき)

鎌倉時代の軍記物語。48巻。〈げんぺいじょうすいき〉ともいう。祇園精舎(ぎおんしようじや)で始まり,建礼門院往生で終わる大筋骨格は《平家物語》(覚一(かくいち)本系)と同じであり,その異本の一種であるが,和漢の故事や説話を大量にとりこんで,《平家物語》の3倍近い大部な本となっており,同様の特徴を持つ《平家物語》の延慶(えんきよう)本・長門本とともに増補系諸本とか,広本とか呼ばれている。また琵琶語りの詞章としてつくられた語り本系の《平家物語》に対して,読むことを主眼とした本として,〈読本系諸本〉と呼ばれることもある。作者については,葉室(はむろ)時長説,玄慧(げんえ)法印説などがあるが,確定できない。本書独自の増補記事に仏教関係説話がとくに多いことから,作者を僧侶とする見方もある。成立時期は,土肥(どひ)経平の《湯土(ゆど)問答》(1783)による鎌倉中期説が行われてきたが,鎌倉後期ころとみる説が有力になっている。

 没落する平家に叙述の力点をおく《平家物語》に対し,増補系諸本は源頼朝蜂起説話など源氏方の記事を多くとり入れ,古代末の内乱を源平交替の動乱としてとらえようとしており,《源平盛衰記》という書名も,そのことを示している。石橋山合戦談,文覚(もんがく)と袈裟(けさ)御前の話などは,本書によって広く流布したものである。同類の延慶本などと比べて,なお70余の説話・異説の増補があり,全般に,話の劇的構成,暴露趣味,解説癖,教訓臭などが目につく。つまり本書は網羅的で,大衆受けのする読物風に《平家物語》を再構成したものであるが,饒舌(じようぜつ)にすぎて統一性に欠ける点もある。他方,史実に忠実な側面もあり,徳川光圀(みつくに)は修史のための史料として本書を選び,《参考源平盛衰記》(1689)を編ませている。《平家物語》流布本系と並んで,中世後期から近世にかけて広く読まれ,後代文芸に及ぼした影響も少なくない。
平家物語
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「源平盛衰記」の意味・わかりやすい解説

源平盛衰記(げんぺいじょうすいき)
げんぺいじょうすいき

軍記物語。「げんぺいせいすいき」とも読む。48巻。作中人物の呼称などの考証により鎌倉中期の成立といわれたが、武士の服装描写などからは、鎌倉末期もしくは南北朝期の時代性をみせていて、そのころの成立と思われる。編者は未詳、寺院関係者か。諸本として、静嘉堂(せいかどう)文庫蔵本、蓬左(ほうさ)文庫蔵本など古写本系と、近衛(このえ)本、古活字本など流布本系の2系統があるが、両系統の間に大差はなく、成立後、固定したままあまり流布しなかった。江戸期になって兵法の書、雑史としての関心などから取り上げられ刊行もされた。

 平安末期の動乱をめぐって、平家の滅亡を主題として描く『平家物語』は、早くから琵琶(びわ)法師の語る語り本のほかに、寺院を中心に読み本が行われた。その読み本は、源頼朝(よりとも)、木曽義仲(きそよしなか)の挙兵など、東国における戦闘を、その現地の側から詳しく記して、源氏の興隆と平家の滅亡を描くが、『源平盛衰記』は、その読み本の最終的集成本である。『平家物語』を、いわば与えられた物語として、その他の異本をはじめ、異説や伝承をもあわせて取り込み、これらを注釈的姿勢をもって再構成した物語である。源平両勢力の交替を、語り本が京都の人々の目をもってその動乱を体験するように語るのとは違って、素材からは距離を隔てて、それも源氏による天下平定の結果の側から、経過を回想する姿勢が顕著である。史料や寺院の資料のほか、故事、説話をも大量に取り込み、また、史実としてはありえないような話を、記録文学らしい体裁を整えて創作し、増補を行っている。この点で南北朝期の軍記物語『太平記』に通うものがある。時代を切り開いていった武士たちを、時代の展開に即し、その明るい側面に関心をもって記すよりも、むしろ、異様な暗い面に関心を示し、退廃の色が濃い。これらの性格から推しても、語り物としての『平家物語』のような庶民の想像力の所産とは考えられず、多様な資料に取り囲まれながら、時代を離れてとらえる、目覚めた個人が編んだものというべきであろう。

[山下宏明]

『『源平盛衰記』上下(1929、31・有朋堂文庫)』『津田左右吉著『日本文芸の研究』(1953・岩波書店)』


源平盛衰記(げんぺいせいすいき)
げんぺいせいすいき

源平盛衰記

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百科事典マイペディア 「源平盛衰記」の意味・わかりやすい解説

源平盛衰記【げんぺいせいすいき】

鎌倉時代の軍記物語。〈げんぺいじょうすいき〉とも読む。48巻。作者不詳。鎌倉中・末期の成立か。《平家物語》をもとに増補改修したらしく,筋に大差はないが,内容は詳細,豊富で《平家物語》の特殊な一異本というべきもの。源氏関係の叙述に付加が多く,筋からはずれた挿話が多い。語り物から読み物への移行を示す。
→関連項目赤坂下津倶利伽羅峠の戦澄憲

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「源平盛衰記」の解説

源平盛衰記
げんぺいじょうすいき

「げんぺいせいすいき」とも。軍記。「平家物語」非当道系諸本の広本系統伝本の一つで,近世以降一作品としてうけいれられた。48巻。諸資料記載増補作者名にあてて,「醍醐雑抄」では葉室時長説,「臥雲日件録」に玄慧(げんえ)法印説などの作者説があるが不詳。成立期も時長説の鎌倉初期から玄慧説の南北朝期まで諸説ある。内容は「平家物語」とほぼ同じだが,文書類資料,和漢故事や説話を大量に入れ文体も装飾的で,「平家物語」諸本間では後出増補集成的な色彩が濃い。文覚譚を含む源頼朝挙兵の関連記事や源義経の末期記事などは,語り系本文と異なる源氏寄りの視点がみえ,書名の由来を説明する。翻刻「新定源平盛衰記」。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「源平盛衰記」の意味・わかりやすい解説

源平盛衰記
げんぺいせいすいき

鎌倉時代の軍記物語。「げんぺいじょうすいき」とも読む。『平家物語』の数多い異本の一つ。 48巻。いくつかの異本によって集大成したもので,編次や記事に重複や矛盾が多く,統一を欠くうらみがある。しかし源氏関係の記事,挿話などを多く含み,内容豊富。『平家物語』が「語り物」であるのに対して,これは読み物風。本書特有の記事から題材をとった作品も多く,後世への影響は大きい。

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旺文社日本史事典 三訂版 「源平盛衰記」の解説

源平盛衰記
げんぺいせいすいき

鎌倉中期の軍記物語
48巻。作者不詳。内容は『平家物語』を増補したもので,異本の一種とされる。『平家物語』の「語りもの」に対し読み本としたもの。文学的価値は『平家物語』に及ばないが,謡曲・浄瑠璃など後世への影響は大きい。

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