精選版 日本国語大辞典 「溜」の意味・読み・例文・類語
たまり【溜】
〘名〙 (動詞「たまる(溜)」の連用形の名詞化)
① 水などが流れて行かずに集まること。また、そのものやその所。また、代金などを支払わずにためたもの。
※台記‐保延二年(1136)一〇月一一日「若為二大雨一者、可レ張二雨皮一也〈此定と云は、有二檐溜一の程也〉」
③ 人の集まる場所。
(イ) 人が集まって控える場所。控室。待合所。
(ロ) 江戸時代、奉行所へ出頭した者の控えている場所。
(ハ) =ため(溜)②
(ニ) 相撲の土俵下の、審判委員・行司・力士などが控えるところ。土俵だまり。
⑤ 醤油の一種。大豆を煮て種麹(たねこうじ)を混ぜて発酵させた豆麹に、塩と水を加えた中に漉(こ)し籠を立てて、その中にためた液を熟成させた調味料。多く、刺身などの付け醤油として用いる。たまり醤油。〔俳諧・毛吹草(1638)〕
⑥ 堪え支えること。こらえ保つこと。→ひとたまり。
※甲陽軍鑑(17C初)品二六「既に北条衆百に上杉衆二千にて、少もたまりなく上杉衆まくるときく」
⑦ 見物席をいう、人形浄瑠璃社会の語。
ため【溜】
〘名〙 (動詞「ためる(溜)」の連用形の名詞化)
① ためること。また、ためておくところ。
(イ) 特に、ゴルフ、野球などで瞬発力をためておくこと。「溜めのないバッター」「バックスイングに溜めを作る」
(ロ) 特に、糞尿をためておくところ。こえだめ。
※雑俳・柳多留‐八(1773)「どぶろくの生酔ためへころげ込み」
(ハ) 溜井、溜池など。
※俳諧・焦尾琴(1701)風「かすがいに古枝もすてず大桜〈楓子〉 溜めを樋守のひらく春雨〈其角〉」
② 江戸時代、江戸で病気の囚人または一五歳未満の囚人を収容した牢屋。品川と浅草の二か所にあり、非人頭の管理に委ねられ、手代、上番人、小屋頭、鍵番などの役職が置かれた。溜医師が病囚の治療に当たったが、それ以外の取り扱いでは、小伝馬町牢屋とほとんど異ならなかった。非人溜。たまり。
※禁令考‐後集・第四・巻三三・享保七年(1722)五月「溜預け之事 牢舎申付候ものを最初より溜え遣間敷候」
③ 他家から贈答品を持って来た使いの者に与える金銭や物品。ためせん。ためがみ。おため。
※浮世草子・世間手代気質(1730)三「包銭十文づつ溜(タメ)にいただいて帰り」
④ 狸の糞。〔日葡辞書(1603‐04)〕
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