精選版 日本国語大辞典 「演技」の意味・読み・例文・類語
えん‐ぎ【演技】
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演劇において俳優が観客の前で身ぶりやことばをもってある事件や人物などの行動を表してみせること。ドラマdramaの語が行動するという意味のギリシア語dranから出ていることに示されるように、演技は演劇の本質であり、本来何もない空間である舞台において観客の眼前にいっさいを生み出す作業である。今日では俳優が身ぶりとことばによって映画、テレビ、ラジオなどの媒体の素材となることもいい、歌曲、舞踊、曲芸、体操などの技をやってみせることも含まれる。日本語の「演技」は「技を繰り広げてみせること」を意味するので、見せ物(ショー)として意識されることが多く、日常の見知られた自分を隠し別人として行動する意味にも用いられることになる。これは西欧における、ドラマを成り立たせ展開していくアクション(行動)とは異質の概念であることは注意される必要がある。
人類の最初の演技は物真似(ものまね)による身ぶり信号だったと考えられるが、やがて災厄を祓(はら)い、豊穣(ほうじょう)を祈る呪術(じゅじゅつ)の踊りとなる。日本の俳優の古語「わざおぎ」の「おぐ」は神霊を招き寄せること、神がかりして踊ることであって、天岩戸(あめのいわと)の前での天鈿女命(あめのうずめのみこと)の乱舞が起源と言い伝えられている。神のことば、神に祈ることばが文字に記されやがて1人の作者が台本を書くようになると、神事から離れた演劇が本格的に成立する。その時期は西欧ではギリシア悲劇、日本では能の成立時とされる。台本の文学的完成が進むにつれ、演技は神がかりや即興を脱して朗々たる台詞(せりふ)の吟唱と華麗な身ぶりによって明確な様式をつくりだした。日本の代表的な演劇である歌舞伎(かぶき)の演技は文字どおり歌舞が基本であり、男性のみの俳優がまず女方(おんながた)から修行に入ることなどに代表されるように、人間の生理さえ離れて虚構の世界をつくりだす様式美の力をみることができる。
西欧ではギリシア悲劇において合唱と群舞の間に挟まれる主人公たちの対話の場面がしだいに拡大独立して、ルネサンスを経て人間の対立と葛藤(かっとう)を描く近代のドラマへと発展する。演技は、激しい情熱と複雑な心理をもつ近代的人間像をリアルに表現する技術となり、鋭い人間観察とその再現が名優の条件となった。やがて19世紀には演出家の芸術意図によって統一される劇団が現れ、アンサンブル演技が演劇界の主流となると、文学者―演出家―俳優のヒエラルキーが成り立ち、俳優の演技は上級者の指示を忠実に模倣し、よかれあしかれ舞台の一部品をつくりだす作業にすぎなくなった。20世紀初めモスクワ芸術座において近代演技の頂点が形づくられるが、その演出家兼俳優のスタニスラフスキーは従来の演技を整理研究して、初めて一貫した心身の訓練に基づく演技の体系をみいだした。このスタニスラフスキー・システムは以来通俗化されつつ現在の世界の演技術の基盤となってもいる。
しかし、20世紀が深まるにつれ、演技は大きく変貌(へんぼう)し、メイエルホリドのビオメハニカбиомеханика/biomehanika(人間工学)、アルトーの「残酷の演劇」、ブレヒトの叙事詩的演劇の主張などが相次いで現れる。さらにアメリカにおける深層心理の表出の試みなどと交錯して、文学の放棄、統一ある性格の破壊、心理主義の打破、身ぶりと叫びの拡大、仮面や人形の使用、ハプニングhappeningなど舞台上に激しい生の躍動を回復する方法が求められてきた。近年、演劇の枠を超えたパフォーマンスperformanceと名づけられた表現活動なども注目されているが、現代は神がかりから歌舞様式、なまなましい人間情念の表出まで、演技の全歴史を一気によみがえらせる新しい表現の模索の時代といえるだろう。
[竹内敏晴]
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…演出とは,舞台のために書かれた戯曲に,あらゆる方法によって魂を与え,光を与え,生命を与えることである。戯曲を上演するためには,その中心となる俳優の演技をとりまく舞台装置,照明,音楽,音響効果などさまざまな要素が必要であるが,そのすべてを統一して調和させるのが演出の仕事である。演出家の使命は現代演劇の発展とともに重要性を増してきたが,この役割は演劇の歴史とともにあったといえる。…
…したがって,よい作者は,言語の指示内容を減殺せぬよう,せりふに過剰な説明や修飾をつけ加えるべきではなく,よい俳優は,せりふの表現内容を破壊せぬように,ひとりよがりの興奮や陶酔を避けるべきだ,ということになろう。
[〈立ち聞き〉のために語られる言葉]
ところで,せりふの指示内容と表現内容とのこの関係は,当然,演劇的な行動,すなわち広義の演技行動の本質的な構造に対応している(〈戯曲〉の項参照)。演技行動とは現実行動の再現であり,現実の目的をかっこに入れた行動であって,その分だけ行動の過程を重視し,細部の手つづきを入念に行う行動である。…
※「演技」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
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