精選版 日本国語大辞典 「漢民族」の意味・読み・例文・類語
かん‐みんぞく【漢民族】
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民族意識のうえで中国黄河(こうが/ホワンホー)中下流域の中原(ちゅうげん)地域を原郷と考え、沿岸諸島嶼(とうしょ)、東北地区にも移住して生活し、海外ではとくに東南アジアを中心に、中国籍の華僑(かきょう)、移住先諸国籍の華人として、世界各地に居住する世界最多人口の民族。漢族、漢人ともいう。中国国内の人口は13億人余りとされ、うち漢民族は約92%を占めるといわれている(2010年センサス)。
[渡邊欣雄]
漢民族はおよそ紀元前10世紀ごろ、西北の中央アジアから中原地域に周という部族が移動定着し、徐々に周辺諸部族を統合していく過程で形成されたとされる。「民族」という概念は、ヨーロッパ近代の影響で初めて認識されたカテゴリーであるから、むろん周代に漢民族が存在したわけではない。漢民族が自他ともに民族として認識されたのは日清(にっしん)戦争以後であり、中国国内の少数民族との相対において自覚されたのである。したがって近代に形成された漢民族は、それ以前のおよそ3000年にわたる諸集団との融合によって形成されてきたといえる。言語の漢語は漢民族という概念の成立以後、北京(ペキン)官話を共通語として採用したものである。漢語はシナ・チベット語族に属し、多くの方言に分岐している。しかし、およそ3300年前から用いられた甲骨文字以降の文字が「漢字」の名において連綿と用いられてきており、国家統一に役だつとともに、漢字も統廃合がなされてきた。漢民族の成立とともに、漢字は漢民族固有の文字と考えられるに至る。
[渡邊欣雄]
「北京原人」の名で知られるように、中国には前期旧石器時代以来の人類が生活していた。漢民族の母体としての文化の淵源(えんげん)は、長江(ちょうこう/チャンチヤン)(揚子江(ようすこう/ヤンツーチヤン))流域に同様の古さの農耕文化があったにもかかわらず、彼らの意識のうえで黄河流域にあった新石器時代の農耕文化に求められてきた。彼らの歴史認識によれば、以後この華北の原郷から周囲の諸集団、ことに長江流域以南の異部族を包摂していく過程を通じて、地方色のある独自の文化を発展させてきたと考えられている。
漢民族の大部分は灌漑(かんがい)農耕による集約的定着農耕民である。華北は麦、アワ、コウリャン、トウモロコシなどの畑作穀物やジャガイモを主として栽培しているのに対して、華中、華南では水稲耕作とサツマイモの栽培が盛んである。こうした栽培作物の多様性と高度の料理技術とが結合して、地方色豊かな中華料理を生み出してきた。住居も、東北地区や華北の防寒を目的としたれんが造りや土造りの平屋家屋が多いのに対し、華中、華南では防暑、防湿に重点を置いた2階建て木造家屋が多いなど、環境に即した生活様式が認められる。
[渡邊欣雄]
漢民族の社会は伝統的に父系出自集団がその基礎をなしている。子供は父の姓を名のり、結婚後も妻は生家の姓を保つ。一夫一婦制で夫方居住が通則であるが、同姓の男女は結婚できない同姓不婚の原則があった。同祖同姓の一族は「宗族(そうぞく)」とよばれ、祠堂(しどう)に共祖を祀(まつ)り、族長が数百、数千人の族員を統轄している。漢民族の宗教は儒教、仏教、道教の3教、あるいはこれにイスラム教、キリスト教を加えて5教とされるが、基幹宗教は「敬天崇祖」の民俗宗教である。崇拝の対象である諸神には最高神である玉皇上帝(ユーファンシャンティ)をはじめ幾多の機能神がおり、人々の現世利益(げんぜりやく)の対象となっている。また祖先崇拝は漢民族社会の宗教的根幹をなすものであり、さらに悪鬼、邪霊の防除を行う祈祷呪術(きとうじゅじゅつ)も宗教生活に欠かせない。このような漢民族の社会と宗教の伝統は、1949年の中華人民共和国成立以後、大陸では幾多の変革を受けたが、改革開放政策の実施以後復活を遂げた。
[渡邊欣雄]
『石川昌著『中国を知る事典』(1981・日本実業出版社)』▽『橋本萬太郎編『民族の世界史5 漢民族と中国社会』(1983・山川出版社)』▽『曽士才・西澤治彦・瀬川昌久編『アジア読本・中国』(1995・河出書房新社)』
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[1864~1915]ドイツの精神医学者。クレペリンのもとで研究に従事。1906年、記憶障害に始まって認知機能が急速に低下し、発症から約10年で死亡に至った50代女性患者の症例を報告。クレペリンによっ...
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