漢語(読み)カンゴ

デジタル大辞泉 「漢語」の意味・読み・例文・類語

かん‐ご【漢語】

日本語の中で、字訓ではなく、字音で読まれる語。また、字音で読まれる漢字から成る熟語。昔、中国から伝わり日本語として定着したもののほかに、日本で作られたものもある。字音語。→和語わご外来語
中国の漢民族の言語。中国語

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精選版 日本国語大辞典 「漢語」の意味・読み・例文・類語

かん‐ご【漢語】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 漢民族の言語。中国の標準語。中国語。
    1. [初出の実例]「各取弟子二人漢語」(出典:続日本紀‐天平二年(730)三月辛亥)
    2. [その他の文献]〔庾信‐奉和法筵応詔詩〕
  3. かんおん(漢音)
    1. [初出の実例]「伏願。貸恩波於涸鱗、賜徳花乎窮翼。則漢語易詠。呉音誰難」(出典:性霊集‐四(835頃)為藤大夫啓一首)
  4. 和語に対して漢音、呉音など漢字の字音による語。また、漢字の熟語。字音語。もともと中国で用いられていたものを日本語の中に借用したもの、和語に漢字をあてて音読したもの、日本で作られたものなどがある。
    1. [初出の実例]「当時歌を詠まんに用ふる所の詞は〈略〉その漢語俗語はもとより用ふべからず」(出典:国歌八論(1742)正過)
  5. 漢文に典故のある語。
    1. [初出の実例]「燈火親しむべし抔(など)といふ漢語(カンゴ)さへ借用して嬉しがる様になった」(出典:三四郎(1908)〈夏目漱石〉四)

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改訂新版 世界大百科事典 「漢語」の意味・わかりやすい解説

漢語 (かんご)

日本語の中に用いられる,中国から借用した単語,またその造語成分を用いて日本で新たに合成した語。漢字での表記が定まっており,その発音は,上代以来の日本字音に従っている。中国現代音で借用するものは漢語といわないが,現代語が漢字によって日本字音で漢語の列に借用されることもある。ウマ,ウメ,ムギなども中国起原の語と説かれるが,これらは字音の体系からはずれて,和語の中に混じている。

中国語の造語成分は,日本語では1~2音節にあたり,漢字1字で表される。1字だけで1語をなすもの〈胃・苦・差・地,愛・功・徳・説・天〉などもあるが,多くは2字連続2~4音節のもの〈天地・春秋・苦楽・進退,都市・時日・健康・敬愛,満月・地価・最善・反論,世上・夜半・整然,知己・投機・選炭〉等々であって,さらに3字以上のものは,〈仏法僧,春夏秋冬〉などのほか,2字の漢語に1~2字の漢語が重ねて複合した形のものが多い。このような複合形式でも,その構成要素の一々がもはや意識されないものも少なくない。中国起原の擬声・擬態語もおおむね2字からなる。〈殷々(いんいん)・巍々(ぎぎ),蹌踉(そうろう)・曖昧(あいまい),嚠喨(りゆうりよう)・颯爽(さつそう)〉など。日本ではほぼ漢語の造語法に従って新語を作るほか,日本語の語序に漢字2字を結んで音読する〈水防〉〈文選(ぶんせん)〉など,日本語に漢字をあてて音読する〈尾籠←おこ〉〈出向←でむく〉など,漢語めかした造語がある。略語も〈蔵相〉〈早慶〉のように多く音読となる。字音の性質としては,漢音,呉音,唐音,慣用音およびそれらの混合が見られる。かつて呉音語が多かったが,今日では漢音語の勢力が大きい。なお,漢語の造語成分と和語または西洋語との結合した〈手帳〉〈短靴〉〈アルミ貨〉などがある。

品詞論的には,名詞として用いられるものが最も多い。そのうち作用の概念に関するものは,動詞〈する〉と結合して,動詞としてしきりに用いられるが,単独の場合も叙述の機能を果たすことがある。性状に関する語は,単独には名詞というよりも主として叙述の機能をもつが,普通は付属語〈だ〉〈な〉など,文語〈なり〉〈たり〉を伴って,形容動詞となる。以上のうち少数のものは,〈料理→りょうる〉〈退治→たいじる〉〈四角→しかくい〉など,直接に語尾の母音が交替し,また活用語尾を接する。また,全く付属語を伴わずに副詞の資格をもつ〈極〉〈折角〉〈事実〉などもある。

漢語の中には,和語や他の漢語と同義グループをなすものがあり,その選択は,微妙なニュアンスの差を表すためか,むずかしそうな用語による文章の権威づけ品格づけのために行われる。日常語として他に言換えのない漢語は,古く固定した動植物名などのほか,主として思想的・文化的部面の概念に関する。数詞は十以下を除いて,ほとんど漢語である。漢語の数は,辞書《言海》では和語の3/5に達するという。現代の婦人雑誌のある調査では,よく使われた名詞2600語の2/5を占め,人間,社会,思想などの分野でいちじるしいかたよりが認められた。かつて女子は漢語を使うことが少なかったが,今は口頭でも男子との差はない。

漢文訓読のとき,漢語が翻訳されずに訓読文中に現れることは,ごく初期の訓点資料にも見られる。《万葉集》や宣命(せんみよう)では,学者語としてだけでなく,日常語への漢語の混用が知られる。その数は時代とともに増したらしいが,ことに漢音系の漢語が飛躍的にふえたのは,明治初年以来とみえる。それは使用者の文化的優位を示すために,また簡潔で安定した語形での命名を得るために,かつ教育の普及に伴って重用されたが,一方では,日本字音の特性から同音語を多く作り,文字を見なければ通じない場合を生じさせ,ひいて漢字の学習を多くの人に過大に強制することになった。今日,漢字制限がまず実施されて,表記上漢字を用いない漢語がしばしば目に触れるようになり,新聞社などでは,文字の面から同音の他の漢字への書換えや言換えに積極的で,しだいに一般に平易化に向かっている。漢語の整理は,しかし究極的には日常語としての同音語の排斥であって,漢語の存在は否認されるべきでない。漢語の表現性をかえって曖昧で抽象的だとする論もある一方,日本語のリズムの中で漢語のもつ価値を研究する必要もある。
国語国字問題
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「漢語」の意味・わかりやすい解説

漢語
かんご

日本では、中国起源の字音語をさす(中国では、外国語に対して自国語の称)。「和語」に対する概念であり、「外来語」とも区別することが多い。問題は、(1)古く奈良時代より以前に入ってきた中国語(梅・絵など)、(2)中国で音訳された外国語(仏(ブツ)・刹那(セツナ)・葡萄(ブダウ)・牡丹(ボタン)など)、(3)呉(ご)音・漢音以外の字音語(蒲団(フトン)・椅子(イス)・銭(ゼニ)など)、(4)日本製の字音語(火事・返事・大根など)を漢語と認めるか否かである。実際的には、(1)(2)は除外し、(3)(4)は漢語として扱われることが多い。

[石塚晴通]

沿革

漢字・漢語は、貨幣・印などとして1世紀には日本に入ってきているが、書記用などに用いられるようになったのは5世紀以降と考えられている。中国から多くの文物が伝えられるとともに、その用語として漢語が知識人を中心に用いられるようになった。奈良時代の『万葉集』には、すでに「男餓鬼(をガキ)」「女餓鬼(めガキ)」「力士舞(リキジまひ)」等の和語との熟合語も用いられ、日本語への同化現象がみられる。基礎となる漢字音としては、7世紀後半期に「漢音」が伝えられ、のちに正音とされたが、すでに仏教用語・日常語に「呉音」が普及しており、以後も長く両音が用いられた。平安時代には、仮名文学にも漢語が多く用いられ(消息(セウソコ)・懸想(ケサウ)・愛敬(アイギヤウ)・精進(シヤウジン)など)、また「講(カウ)ず」「気色(ケシキ)ばむ」「上衆(ジヤウズ)めく」「装束(サウゾ)く」「執念(シフネ)し」等のごとく、日本語の用言として活用させたり、サ変動詞をつくったりして、日常語として普及していった。また、「推参(スイサン)」「合期(ガフゴ)」等の日本製漢語もつくられるようになった。鎌倉・室町時代には、日本語の語彙(ごい)として漢語はさらに普及・定着し、新たに「唐(とう)音(宋(そう)音)」に基づく漢語(石灰(シツクイ)・饅頭(マンヂウ)・瓶(ビン)など)も入ってきたが、これらの多くは物の名として入り、一字一字の漢字の音としては定着しなかった。また、「火事(クワジ)(ひのこと)」「返事(ヘンジ)(かへりごと)」「大根(ダイコン)(おほね)」等の日本製漢語も前代以上に用いられるようになった。江戸時代には、漢語はさらに普及し、町人階級特有の漢語(商売・才覚・分限など)が用いられるなどの漢語の階級による分化もみられるに至っている。さらに、洋学の翻訳語として明治初期にかけて漢語が大量につくられ、これらのなかには英華字典の中国訳の借用も多い(天使・礼拝・異邦人など)が、日本製の訳語(絶対・帰納・仮説など)も多くつくられた。現代においても、概念を表すことばなど漢語に多くを依存している。

[石塚晴通]

『山田孝雄著『国語の中に於ける漢語の研究』(1940/再版・1970・宝文館)』『池上禎造著『近代日本語と漢語語彙』(『金田一博士古稀記念言語民俗論叢』所収・1953・三省堂)』『森岡健二著『近代語の成立明治期語彙篇』(1969・明治書院)』『阪倉篤義編『講座国語史3 語彙史』(1971・大修館書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「漢語」の意味・わかりやすい解説

漢語
かんご

中国においては古代から現代にいたる漢民族の言語の総称として用いられるが,日本では一般に,日本語に借用語として入った中国語をさす。漢音呉音など漢字音で読まれるので「字音語」ともいう。宋以後の借用語「行火 (あんか) 」「蒲団 (ふとん) 」などや,中国語起源でも相当古く入ったため,もはや漢語意識の失われた「相 (さが) 」「銭 (ぜに) 」などは,漢語と呼ばないこともある。日本において漢字を組合せてつくった「自動車」「火事」などを,本来の漢語と区別して「漢字語」と呼ぶことがある。漢語の借用は日本語に大きな影響を与えた。現在でも日本語の語彙のなかで,漢語はかなりの位置を占めており,同音異義語の多量発生などの問題も生じている。

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百科事典マイペディア 「漢語」の意味・わかりやすい解説

漢語【かんご】

日本では日本語文に借用された中国起源の語,および音読語彙(ごい)として日本で作られたものをいう。その漢字表記は定まっており,その発音は上代以来の日本字音による。漢字伝来当時,日本に文字がなかったため漢文が公私の用文に用いられ,多量の漢語が日本語の中に混入し,日本語とりわけ文章語の中で重きをなすようになった。また幕末・明治以後,欧米語の和訳に使用されたためさらに急増。同音異義語が多い。
→関連項目外来語日本語和語

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世界の主要言語がわかる事典 「漢語」の解説

かんご【漢語】

中国語」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の漢語の言及

【外来語】より

…英語と日本語の関係は,英語から日本語への一方的な借用関係のように見えるが,16世紀以降,〈bonze(坊主)〉〈shogun(将軍)〉〈mikado(帝)〉〈geisha(芸者)〉〈kamikaze(神風)〉〈nemawashi(根回し)〉など少数ながら日本語が英語の体系内に入っている。明治維新までの中国語からの借用語はふつう〈漢語〉といって外来語とはいわない。朝鮮語からの借用語(〈チョンガー〉),アイヌ語からの借用語(〈ラッコ〉)も外来語とはいわない。…

【漢詩文】より

…しかし公家の文章家は多かれ少なかれ,同時代の五山文筆僧と交流し,その作風に影響されている。【玉村 竹二】
【近世】
 近世初期,漢詩文を制作するうえで必要とされる漢語その他中国文化万般にわたる知識をもっとも豊富に有していたのは儒者であったから,近世における漢詩文の歴史は,儒者の余技という形で出発した。すなわち近世最初の儒者である林羅山,松永尺五(せきご),堀杏庵,那波活所(なわかつしよ)などが,同時に近世最初の漢詩人でもあった。…

【シナ・チベット語族】より

…ミャンマーのチン特別地区に住むチン族の言語も動詞は面倒な形態変化や人称接辞をもち,また一部のチン語では口語体と文語体で違った構造を示している。漢語(中国語)は殷・周時代までさかのぼる記録をもつが,それ以外はチベット語が7世紀,ナム語(死語)が8世紀,西夏語(死語)が11世紀,ビルマ語が12世紀,シャム・ラオス語が13世紀までさかのぼれるのみで,ほとんどの言語は20世紀に入って文字言語となった。言葉の実態と歴史がよくわからなかったのが大きな原因となって,この語族の比較研究はなかなか進展しなかったが,最近は種々の報告が公にされ,研究が著しく進んだ。…

【接頭語】より

…テ痛い,トリ調べ,サシ上げる,ヒッかく,カッ払うなどは本来は自立する単語であることが明らかであるが,固有の具体的意味が薄れて単なる強調を示すものとなっている点で接頭語的である。また漢語起原のものとして敬語のゴ以外にも,不,無,未,亜,次,過などがある。しかし第,非,本,毎の類は形式的な意味限定ながらアクセントの点で独立性があり,翌,約,故などとともに連体詞とみられる。…

【中華人民共和国】より

…正式名称=中華人民共和国People’s Republic of China面積=960万km2人口(1996)=12億2390万人(台湾・香港・澳門を除く)首都=北京Beijing(日本との時差=-1時間)主要言語=中国語(漢語)通貨=元Yuan
【概況】

[建国]
 1949年10月1日,北京(当時は北平と呼ばれた)の天安門楼上で,中国共産党主席毛沢東は,中華人民共和国の成立を高らかに宣言した。これによって,台湾および金門,馬祖など若干の島嶼(とうしよ)をのぞき,中国大陸に真の統一国家が実現し,この日はこれ以後,建国記念日,すなわち国慶節として国家の記念日に指定された。…

【中国語】より

…漢民族の日常使用する言語であると同時に,中華人民共和国の〈国語〉であり,また国際連合諸機関で中華人民共和国を代表するための国際公用語でもある。漢民族の言語ということを特に強調するときの中国人の呼び方は漢語Hàn yǔである。
【構造】

[音韻]
 単位となる〈音節〉の独立性が高く,語彙もただひとつの音節から成ることが珍しくない〈単音節語〉である。…

【文字】より

… 現代かなづかいがそういう反対をおさえて実施されるようになったのは,だいたいにおいて旧かなづかいよりも容易である(現代の音韻とのずれがすくない)ためであるが,一方において障害となる問題の大部分が漢字のかげにかくれていることが注意される。漢語には同音異義語がきわめて多く,〈科学〉と〈化学〉,〈鉱業〉と〈工業〉などのように関係の近い単語の中にも音では区別されないものがあるが,文字の上ではその区別が表記されている。そして,漢語はこのような表記法だけの問題でなく,新しい単語が文字のほうから造られ,文字言語から音声言語にとり入れられるという問題をも提供している(英語においてもユネスコUNESCOとかビットbit(binary digit)とかいうように文字を媒介としての新造語も多くみられる)。…

【和語】より

…〈倭語〉とも書き,〈大和言葉(やまとことば)〉ともいう。日本語語彙の三大要素の一つとして,漢語(字音語),外来語に対して,種(しゆ)の違いを強調する用語。本来の日本語といっても,文献以前の日本語形成期に早く借用(もしくは混入)していた語に〈うま(馬)〉〈うめ(梅)〉などが認められるが,それらは和語に包括するのが普通で,文献時代以後,外国語から摂取したものに対して固有の種をさす。…

※「漢語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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