精選版 日本国語大辞典 「炭水化物」の意味・読み・例文・類語
たんすい‐かぶつ ‥クヮブツ【炭水化物】
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地球上でもっとも多量に存在する有機化合物で、広義には糖類あるいは糖質ともいい、生物にとってきわめて重要な物質である。一般に炭素、水素、酸素の3種の元素からなり、一般式Cm(H2O)nとして書き表せるものが多く、あたかも炭素と水の分子(H2O)からなっているようにみえるので炭水化物とよばれる。なお、酸素原子の数が一般式より一つ少ないもの(デオキシリボースなど)、また硫黄(いおう)化合物を含むもの(コンドロイチン硫酸など)や窒素原子を含むもの(アミノ糖など)も炭水化物のなかに含める。化学的には、多価アルコールのアルデヒドまたはケトンおよびその誘導体の総称である。
[上原亮太・馬渕一誠]
炭水化物はそれを構成する単位糖の数により、単糖、オリゴ糖(少糖)、多糖に分類される。
(1)単糖 アルデヒド型のものとケトン型のものがあり、それぞれアルドース(ブドウ糖など)およびケトース(果糖など)とよぶ。アルデヒド基またはα(アルファ)-ケトール基をもつため還元性があり、フェーリング液を用いた還元性の検出は古くからよく知られている。また立体化学的には、不斉炭素をもつため旋光性があり、それぞれに2種の光学異性体が存在する。単糖類は、1分子のもつ炭素の数により、さらに三炭糖から七炭糖まで分類される。ブドウ糖は六炭糖である。
(2)オリゴ糖 単糖単位が数個、グリコシド結合(糖類でのエーテル結合をいう)したもので、2個結合したものをとくに二糖類といい、ショ糖、麦芽糖、乳糖などが含まれる。さらに、三糖類、四糖類などと分類される。オリゴ糖でもアルデヒド基が結合に使われずに遊離の状態にあるものは還元性をもつが、もっともよく知られた二糖類であるショ糖は還元基をもたない。単糖およびオリゴ糖はともに水に溶けやすく、エーテルには溶けない。いずれも甘味をもち、とくに果糖は強い。
(3)多糖 単糖単位が多数グリコシド結合してつながったもので、分子量は数千から100万を超えるものもある。加水分解することにより、オリゴ糖あるいは単糖を生じる。単一の単糖類から構成されるものを単一多糖といい、複数種の単糖類から構成されるものを複合多糖という。
[上原亮太・馬渕一誠]
炭水化物は生物界に広く分布するが、その生物的機能は大きく分けて(1)生物体の構成成分であることと、(2)活動のエネルギー源となることである。
構造を保つ多糖類は構造多糖ともよばれ、植物の細胞壁をつくるセルロース、昆虫や甲殻類などの外皮をつくるキチン、動物の軟骨や腱(けん)の成分であるコンドロイチン硫酸、関節液や眼球硝子(しょうし)体液に含まれるヒアルロン酸などがある。
エネルギー源としての炭水化物は、脂質やタンパク質とともに生物体において重要な役割を果たしている。緑色植物は炭酸同化作用によって水と空気中の炭酸ガス(二酸化炭素)からブドウ糖を合成し、これをデンプンとして貯蔵する。動物は自ら炭水化物を合成できないので、これを植物から摂取し、グリコーゲンとして肝臓に貯蔵する。エネルギー源として生物体に蓄えられた多糖は栄養多糖(貯蔵多糖)ともよばれる。これらの栄養多糖は、動植物においては解糖系やTCA回路、また酵母などでは発酵によって代謝され、生命活動のエネルギー源や生合成に役だっている。
なお、栄養学的にはとくにデンプンとブドウ糖が重要である。ヒトは必要とするエネルギーの大半をデンプンとして摂取するが、これはほかのほとんどの多糖類を栄養とすることができないからである。また、ブドウ糖は、動物においては血糖として全身の、とくに脳、中枢神経系、筋肉におけるエネルギー源として重要な役割を果たしている。ちなみに、糖残基と非糖残基からなる化合物にも、生物体にとって重要なものが多い。オリゴ糖や多糖が脂質やタンパク質などと共有結合した複合糖質は、構造支持にかかわるほか、種々の細胞間相互作用や生物的認識の過程で細胞表面の特異的マーカーやシグナルとして機能することが明らかになっている。
[上原亮太・馬渕一誠]
『西沢一俊・吉村寿次著『炭水化物――ライフサイエンスのための化学』(1980・朝倉書店)』▽『内藤博ほか著『新 栄養化学』(1987・朝倉書店)』▽『Eric E. Cornほか著、田宮信雄・八木達彦訳『生化学』(1988・東京化学同人)』▽『Gardner W. Stacyほか著、後藤良造・世良明訳『生命科学のための有機化学』(1990・東京化学同人)』▽『新津恒良ほか著『図説 現代生物学』(1994・丸善)』▽『Philip W. Kuchelほか著、林利彦訳『生化学1 生体構成物質』『生化学3 代謝と生合成』(1996・オーム社)』▽『平沢栄次著『はじめての生化学――生活のなぜ?を知るための基礎知識』(1998・化学同人)』▽『日本応用糖質科学会東日本支部監修、日高秀昌・坂野好幸編『健康の科学シリーズ8 糖と健康』(1998・学会センター関西)』▽『P・M・ゲイマンほか著、中浜信子監修、村山篤子・品川弘子訳『食物科学のすべて』(1998・建帛社)』▽『永井彰・上野信平著『セメスター対応 生物学入門』(1998・東海大学出版会)』▽『石井裕子著『栄養ハンドブック』(1998・保育社)』▽『伏木亨ほか編『栄養と運動――身体運動・栄養・健康の生命科学Q&A』(1999・杏林書院)』▽『Ann C. Snyder著、山崎元監訳、小熊祐子ほか訳『エクササイズと食事の最新知識――疾病予防・健康増進への戦略』(1999・ナップ)』▽『ロスコスキー著、田島陽太郎監訳、秋野豊明ほか訳『生化学』(1999・西村書店)』▽『リッター著、須藤和夫ほか訳『リッター生化学』(1999・東京化学同人)』▽『ボルハルト・ショアー著、古河憲司ほか監訳『ボルハルト・ショアー現代有機化学』下(2000・化学同人)』▽『北岡正三郎著『食物・栄養科学シリーズ 入門栄養学』3訂版(2000・培風館)』▽『吉田勉編著『栄養学――生化学的アプローチ』第2版(2000・学文社)』▽『ネスレ化学振興会監修、和田昭允ほか編『食事と運動――21世紀に向けて食を考える』(2000・学会センター関西)』▽『吉田勉編、伊藤順子ほか著『わかりやすい栄養学』(2001・三共出版)』▽『橋本俊二郎ほか著、講談社サイエンティフィク編『新版 食品化学実験』(2001・講談社)』▽『管理栄養士国家試験21委員会編著『これであなたも管理栄養士5 食品学・食品加工学・調理学』(2001・講談社)』▽『童夢編『炭水化物――熱や力のもとになる』(2002・偕成社)』▽『R・J・ウーレット著、高橋知義ほか訳『ウーレット 有機化学』(2002・化学同人)』▽『吉田勉編著『基礎栄養学』(2003・医歯薬出版)』▽『吉田勉編著、藤森泰ほか著『基礎からの生化学』(2003・学文社)』▽『豊田正武・田島真編『食物栄養系のための基礎化学』(2003・丸善)』▽『五十嵐脩・志村二三夫編著『生化学』(2003・光生館)』
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糖質ともいう.化学的には炭素と水の化合物で,(CH2O)n の分子式をもつ一群の化合物をさし,古くは含水炭素ともいわれた.しかし,この一般式に合わない多くの類似体が見いだされてきたので,アルデヒドやケトンのポリヒドロキシ同族体(単糖類)と,これらの脱水縮合物(オリゴ糖類,多糖類)を意味するようになった.広義には,さらに次のような近縁の誘導体をも含める.すなわち,還元誘導体(糖アルコール,デオキシ糖,グリカールなど),酸化誘導体(アルドン酸,ウロン酸,糖酸など),脱水誘導体(アンヒドロ糖,グリコセエン,単純なグリコシドなど),そのほかイノシトール,アミノ糖,チオ糖など.広く動物,植物界に存在し,緑色植物によって二酸化炭素と水とから光合成される.地上にもっとも多量に存在する有機物で,動物の三大栄養素の一つ.
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… 摂取する栄養素の質によって栄養型が分類される。緑色植物はクロロフィル(葉緑素)のはたらきで,太陽光線のエネルギーによって二酸化炭素と水から炭水化物であるブドウ糖を合成することができ(光合成),これが体内で分解するときに生じるエネルギーによって,根から吸収した窒素,硫黄,リン,カリウム,マグネシウムなどの無機化合物を材料として,タンパク質,核酸,その他あらゆる生体構成成分を合成する。このような栄養型を独立栄養(無機栄養,自栄養)という。…
…炭水化物の別称。炭水化物は(CH2O)nの分子式を示すことが多く,あたかも炭素と水が化合したかのように受け取られ,このように称された。…
※「炭水化物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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