化学式K2CO3。俗に炭酸カリまたは単にカリ(加里)ともいう。植物灰の主成分をなす。タバコの煙にも相当量含まれる。
無水和物のほかに,1.5水和物,2水和物がある。無水和物は潮解性のある無色の粉末。融点891℃。比重2.29。屈折率1.531。MI2CO3⇄MI2O+CO2の解離圧はアルカリ金属の炭酸塩中最も低く,1000℃において8.3torr(mmHg)(図)。水100gへの溶解度105.5g(0℃),113.5g(25℃),156g(100℃)。エチルアルコールに不溶。水溶液は加水分解のためアルカリ性を示し,二酸化炭素を吸収して炭酸水素カリウムKHCO3を生ずる。1.5水和物は単斜晶系。比重2.043。2水和物は斜方晶系。比重2.043。
(1)水酸化カリウム水溶液に加圧下で二酸化炭素を通ずる。
2KOH+CO2─→K2CO3+H2O
(2)塩化カリウムを原料としたルブランLeblanc法を用いて,炭酸ナトリウムと同様にしてつくる。
(3)カーナル石KCl・MgCl2・6H2Oまたは塩化カリウムの水溶液に炭酸マグネシウムを懸濁させて二酸化炭素を通じ,複塩を沈殿させる。
2(KMgCl3・6H2O)+3MgCO3+CO2─→2(MgCO3・KHCO3・4H2O)↓+3MgCl2+3H2O
これを加圧下で熱水と煮沸すると,炭酸マグネシウムが沈殿して,炭酸カリウムの水溶液が得られる(シュタスフルトStassfurt法)。
2(MgCO3・KHCO3・4H2O)─→2MgCO3↓+K2CO3+9H2O+CO2
(4)木灰の抽出液,テンサイからテンサイ糖やエチルアルコールをつくった残液からも得られる。工業製品にはナトリウム塩の混在することが比較的多いので,その水溶液に二酸化炭素を通じて純粋な炭酸水素カリウムKHCO3を析出させ,これを加熱分解して純粋な無水和物とする精製法がよく用いられる。
軟セッケン,硬質ガラス,光学ガラス,医薬品の原料とされ,染色,漂白,皮なめし,羊毛洗浄に用いられる。有機合成における温和な脱水剤,炭酸ナトリウムとの当量混合物は分析用の融剤とされる。
→炭酸ナトリウム
執筆者:藤本 昌利
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
炭酸のカリウム塩。炭酸カリまたは単にカリともいう。カリウム塩中もっとも重要なものの一つ。陸上植物の灰の中に10%程度含まれており、水による抽出液は灰汁(あく)とよばれ、古くは洗剤に使用されていた。水酸化カリウムの45~50%溶液に二酸化炭素を吹き込み、全部が炭酸カリウムとなったところで不純物を濾別(ろべつ)し、真空濃縮することによって製造される。
2KOH+CO2→K2CO3+H2O
また、炭酸水素カリウムとして析出させてから熱分解する方法も行われる。
2KHCO3→K2CO3+CO2+H2O
無水和物は無色、吸湿性の結晶。水によく溶け、水溶液中では加水分解してアルカリ性を呈する。アルコールには溶けない。二酸化炭素を吸収して炭酸水素カリウム(重炭酸カリウムともいう)に変わる。ほかに1.5水和物(単斜晶系)、二水和物(斜方晶系)が知られている。軟せっけん、硬質ガラス、光学ガラスなどの製造原料、染色、漂白、羊毛の洗濯などに使用される。実験室では脱水剤、融剤、分析試薬として用いられるほか、医薬品の製剤原料にもなる。
[鳥居泰男]
K2CO3 | |
式量 | 138.2 |
融点 | 891℃ |
沸点 | ― |
比重 | 2.29 |
結晶系 | 単斜 |
屈折率 | (n) 1.531 |
溶解度 | 113.5g/100g(水25℃) |
解離圧 | 8.3mmHg/1000℃ (アルカリ金属の炭酸塩中もっとも低い) |
K2CO3(138.21).単にカリともいう.水酸化カリウム水溶液に二酸化炭素を作用させて濃縮すると得られる.また,炭酸水素カリウムの熱分解により無水物が得られる.無水物は白色の粉末.密度2.42 g cm-3.融点891 ℃(分解).潮解性で,水に易溶,エタノール,アセトンに不溶.水溶液はアルカリ性を示し,二酸化炭素を吸収して炭酸水素カリウムを生じる.水溶液からは常温で二水和物が析出する.ほかに1.5水和物(単斜晶系.密度2.04 g cm-3)がある.軟せっけん,ガラス,陶磁器,医薬品などの原料,染色,漂白,脱水剤,肥料,炭酸ナトリウムと混合して分析用融剤などに用いられる.[CAS 584-08-7]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…炭酸カリウムK2CO3の俗称。加里と書くこともある。…
※「炭酸カリウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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