無尽(読み)ムジン

デジタル大辞泉 「無尽」の意味・読み・例文・類語

む‐じん【無尽】

尽きるところがないこと。限りがないこと。「縦横無尽
口数を定めて加入者を集め、定期一定額の掛け金を掛けさせ、一口ごとに抽籤または入札によって金品給付するもの。→頼母子講たのもしこう
[類語]尽きせぬ無尽蔵無限頼もし講

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精選版 日本国語大辞典 「無尽」の意味・読み・例文・類語

む‐じん【無尽】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 形動 ) 尽きることの無いこと。限りが無いこと。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「亦如上歎一レ色無比無尽也」(出典:勝鬘経義疏(611)歎仏真実功徳章)
    2. 「無尽(ムジン)の食在り、広大の家あり」(出典:米沢本沙石集(1283)三)
    3. [その他の文献]〔列子‐湯問〕
  3. むじんこう(無尽講)」の略。
    1. [初出の実例]「定 相撲御神楽大饗契約無尽人数事」(出典:香取文書‐至徳四年(1387)二月二五日)
  4. むじんせん(無尽銭)」の略。
  5. むじんせん(無尽銭)」の略。
    1. [初出の実例]「頼母子講と名附、無尽取立候一件御仕置之評議仕候趣」(出典:徳川禁令考‐後集・第三・巻二四・寛政七年(1795)一一月)
  6. むじんがいしゃ(無尽会社)」の略。
    1. [初出の実例]「長池は、そのころ無尽の外交員をしていたが」(出典:美しい女(1955)〈椎名麟三〉二)

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改訂新版 世界大百科事典 「無尽」の意味・わかりやすい解説

無尽 (むじん)

日本で一般の人々の間で古くからあった相互扶助的な金融方式。〈頼母子(たのもし)〉とも呼ばれる。一定の口数を定め加入者を集め,一定の期日ごとに各口について一定の出資掛金)をさせ,1口ごとに抽選または入札によって所定の金額を順次加入者に渡す方式でお金を融資するものである。明治以降新しい銀行制度が移植,確立され,特殊銀行や一般金融機関は整備されたが,一般の人々の間では質屋や無尽が多く利用された。しかし資本主義発達につれて,無尽も会社組織で経営するもの(営業無尽)が増加し,その数は1913年末には1151社を数えるに至った。会社の基礎が脆弱(ぜいじやく)であったため,公共性,健全性の立場から15年〈無尽業法〉が制定され,最低資本金が定められるとともに免許制となった。その後,数回の法改正によって金融機能がしだいに拡充された。42年には〈金融事業整備令〉によって整理統合時代をむかえ,1940年の221社が45年には57社となった。51年〈相互銀行法〉の制定(1951年10月施行)により物品無尽会社1社を残して,すべて相互銀行に転換した。
執筆者:

中世において無尽は〈無尽銭〉として使用,〈無尽銭を貸す〉,あるいは〈無尽銭土倉〉などの表現をとる。1279年(弘安2)の史料には,石原家高に腹巻を質物(しちもつ)として無尽銭を貸した鎌倉の住人慈心のことがみえ,このことから無尽銭の貸出しは質物を取ることが原則であったことがうかがえる。南北朝内乱後,無尽や頼母子は一般に普及する。《建武式目》の6条には,無尽銭土倉を興行すべきことがうたわれており,無尽銭土倉の積極的保護策がとられている。それは,内乱中に無尽銭土倉は莫大な課役を掛けられ,また,そこへの打入りを制することができなかったため,断絶しそうになったものもあったためである。無尽銭土倉はこの場合,土倉と同じ意味で用いられているといえよう。また無尽銭土倉は〈貴賤急用〉に用いられたとあるので,広く庶民にも利用されていたことがわかる。無尽銭土倉は室町期徳政一揆の攻撃目標になった。
執筆者: 近世には人々が仲間(無尽講)をつくり,お互いに掛金を持ち寄って融通し合い,ひと通り回り終わっても再組織して続けるようになり,無尽は頼母子と同義(関西では頼母子の呼名が多い)になった。貨幣経済が庶民の間にまで密着して浸透してきた近世末から明治期にかけ,対人相対信用力のより一層の充実が庶民間にみられるようになった。大金が動き庶民家産の激変を伴いかねない不動産担保金融や,動産質の短期少額金融の質屋や,書入れ質で家産を危機に陥れかねない高利貸金融などと違った,日常性の上に立つ仲間意識と安全性,確実性をお互いにもつ庶民金融として,いわゆる無尽は隆盛期を迎えた。明治維新期以降,小規模で仲間意識が濃厚な非営利性の無尽は,そのまま庶民街に滞留しつづけたが,大規模かつ若干の投機性や営利性をはっきり目的とした無尽は,近世末以降にしだいにこみいってわずらわしくなった無尽業務や世話役活動からしても,有力者の単純な世話と口ききでは間に合わなくなってきた。膨大な集金,利息の計算,通信連絡,講員の離合集散の業務や長期にわたる諸管理運営の指導力は,講元の専業化をもたらすことになった。このような過程を経て無尽業として専業化する人々が全国に群生した。
頼母子
執筆者:

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普及版 字通 「無尽」の読み・字形・画数・意味

【無尽】むじん

尽きず。宋・軾〔趙景の春思に次韻す~〕詩 飄然(へうぜん)がざるの舟 此の無盡の興に乘ず (欧陽脩)行樂の處 木皆すべし

字通「無」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「無尽」の意味・わかりやすい解説

無尽【むじん】

一定の口数を定めて加入者を集め,定期に掛金を払い込ませ,抽せん・入札等の方法で掛金者に対し金銭または物品を給付し,順次にすべての口に及ぼす契約。庶民金融の手段として古くから発達。協同組合的な無尽講(頼母子(たのもし)講)と企業化した営業無尽に大別される。後者のうち金銭無尽は相互銀行の独占的業務であった。物品無尽は無尽業法で規制される。→無尽会社
→関連項目金融業相互銀行

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知恵蔵mini 「無尽」の解説

無尽

日本の相互扶助制度の一つ。一定の口数と給付金額を定めて加入者を募り、定期的に掛け金を払い込ませて、抽選・入札などの方法により金銭や物品を与えるもの。鎌倉時代に始まったとされ、江戸時代に発展、明治時代には営利を目的とし会社の形態をとる無尽業者が増えたため、1931年には「無尽業法」が施行されて営業無尽は免許制度となった。1951年の「相互銀行法」の制定により、無尽会社は、銀行業務を行う相互銀行(後に廃止)と、2016年9月現在無尽を継続する唯一の会社である日本住宅無尽株式会社に分かれた。一般個人による無尽は、16年現在も各地にそれぞれの名称・仕組みで残っているが、特定の参加者による定期的な飲み会(寄り合い)がメインとなりそれに無尽の仕組みを組み合わせるといったものも多くなっている。

(2016-9-15)

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「無尽」の解説

無尽
むじん

中世~近代を通じて発達した講組織による相互金融。ほぼ同義に用いる頼母子(たのもし)や合力銭(ごうりきせん)との相違はあまりはっきりしないが,起源が無尽銭にあるならば,無尽はもともと営利的性格をおびていた可能性がある。中世後半に入って頼母子と混用されるようになり,講の会合の際の共同飲食がうむ仲間意識に支えられた,相互扶助的な庶民金融として普及する。その一方で営利的な無尽も発達し,近世には射倖性を高めたものも現れて,一部の藩では無尽を禁止した。近代には会社組織の営業無尽が盛んに行われ,大正初期の段階で数百の無尽会社が確認される。

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旺文社日本史事典 三訂版 「無尽」の解説

無尽
むじん

講の一種で,庶民の間の相互金融の仕組み
鎌倉時代には無利子の頼母子 (たのもし) という互助法があったが,室町時代には土倉が担保をとり,利子をとったものを無尽といった。江戸時代に最も盛んとなり,寺社の修復にも利用された。一定の掛金を出し,入札の上で講中の者が抽籤により落札する。落札者は以後は掛銭のみを出し,全員が落札すれば解散する。大正時代に無尽会社となり,多くは1951年の相互銀行法によって相互銀行に移行し,現在は第二地方銀行に分類される。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「無尽」の意味・わかりやすい解説

無尽
むじん

一定の口数と給付金額とを定めて,定期に掛け金を払い込ませ,1口ごとに抽選,入札その他の方法により,掛け金者に対し金銭以外の財産の給付をなすべきことを約する行為。住宅無尽のようなものがこれに属する。無尽を営業の目的とするのが無尽会社であり,無尽会社は免許を受け,かつ資本金額 5000万円以上の株式会社でなければならない。歴史的には頼母子講に由来する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「無尽」の意味・わかりやすい解説

無尽
むじん

頼母子講

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世界大百科事典(旧版)内の無尽の言及

【講】より

…鍛冶仲間や牧牛飼育者の荒神講,牧馬や牽き馬業者の馬頭観音講,大工など建築業者の太子講,養蚕のオシラ講,漁師仲間の夷(えびす)講,薬種業の神農講などが著名である。 社会的講は地域の共同生活が反映し,相互扶助による契約講,労働力交換のゆい,モヤイ講,年齢別の子供講,若者講,老年講,葬式組の無常講,性別によるカカ(嬶)講,娘講,尼講など,また金品の融通をはかる経済的講は,頼母子(たのもし),無尽(むじん),模合(もやい)などとよばれ,融通する目的の品目により,米頼母子,舟頼母子,馬無尽などとよばれて,それらが生活の大きな支えとなっていた。頼母子無尽【桜井 徳太郎】
[中世の講]
 中世社会の講には大別して宗教的講と経済的講とがある。…

※「無尽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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