無水酢酸(読み)ムスイサクサン(その他表記)acetic anhydride

デジタル大辞泉 「無水酢酸」の意味・読み・例文・類語

むすい‐さくさん【無水酢酸】

酢酸2分子から水1分子が取れて縮合した形の化合物刺激臭のある無色の液体。アセチルセルロースの製造のほか、アスピリンなどの合成原料として使用。化学式(CH3CO)2O
[補説]平成13年(2001)11月25日に改正・施行された「麻薬及び向精神薬取締法」で麻薬向精神薬原料の一つに指定されたため、無水酢酸を輸出入・製造・譲渡する場合や、盗難・紛失などが判明した場合などは、厚生労働大臣あるいは都道府県知事に届け出なければならない。

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精選版 日本国語大辞典 「無水酢酸」の意味・読み・例文・類語

むすい‐さくさん【無水酢酸】

  1. 〘 名詞 〙 酢酸の無水物。化学式 (CH3CO)2O 刺激臭のある無色の液体。水に少しずつ溶けて酢酸となる。アセチルセルロース・アスピリン・染料などの原料となるほか、アセチル化剤として重要。

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改訂新版 世界大百科事典 「無水酢酸」の意味・わかりやすい解説

無水酢酸 (むすいさくさん)
acetic anhydride

酢酸酸無水物。化学式(CH3CO)2O。融点-68℃,沸点140.0℃の強烈な刺激臭をもつ無色の液体。クロロホルムエーテルなどの有機溶媒に易溶。皮膚に触れると水ぶくれを生じる。水と徐々に反応して酢酸になるが,無機酸が存在すると急激に反応する。また無機塩基と激しく反応して酢酸塩となる。第三アミンの存在下にアルコールと反応して酢酸エステルを生じ,アンモニアまたはアミンと反応してアセトアミドを生じる(アセチル化)。この反応はセルロースの水酸基のアセチル化にも適用できる。

また塩化アルミニウムを触媒にしてベンゼンと反応させるとアセトフェノンが得られる(フリーデル=クラフツ反応)。酢酸ナトリウムの存在下にベンズアルデヒドと反応させるとケイ皮酸を生じる(パーキン反応)。

製法としては種々の方法が知られているが,(1)酢酸の蒸気を熱分解して得られるケテンと酢酸との反応,(2)アセトアルデヒドの自動空気酸化,(3)塩化アルミニウムを触媒とする酢酸とホスゲンの反応,(4)アセチレンと酢酸の反応で得られるエチリデンアセテートのルイス酸触媒分解などで製造されている。

おもにはアセチルセルロースの製造に用いられているが,医薬品,染料などの合成におけるアセチル化剤,縮合剤などの反応試剤としても重要である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「無水酢酸」の意味・わかりやすい解説

無水酢酸
むすいさくさん
acetic anhydride

酸無水物の一つで、酢酸2分子から1分子の水をとった組成をもつ。

 工業的には、アセトアルデヒドの酸化により直接無水酢酸をつくる方法と、酢酸の熱分解により発生させたケテンを酢酸と反応させる方法により製造されている。刺激臭をもつ無色の液体で、皮膚につけると水疱(すいほう)や炎症を生ずる。蒸気は催涙性をもっている。水には約2.7%溶けて、水と反応して徐々に酢酸になり、エタノール(エチルアルコール)に溶けて徐々に反応して酢酸エチルになる。これらの反応は酸があると促進される。エーテルなどの有機溶媒に溶ける。アセチル化剤として広く使用され、セルロースをアセチル化してアセチルセルロースをつくるのに使われるほか、アスピリンなどの医薬、染料、クマリンなどの香料の合成に用いられる。特定麻薬向精神薬原料に指定されている。「氷酢酸」とよばれている水の含有量が低い高純度の酢酸とは別物である。

[廣田 穰 2016年11月18日]


無水酢酸(データノート)
むすいさくさんでーたのーと

無水酢酸
  (CH3CO)2O
 分子式 C4H6O3
 分子量 102.1
 融点  -73℃
 沸点  140.0℃
 比重  1.0871(測定温度15℃)
 屈折率 (n)1.39038

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化学辞典 第2版 「無水酢酸」の解説

無水酢酸
ムスイサクサン
acetic anhydride

acetic acid anhydride.C4H6O3(102.09).(CH3CO)2O.アセトアルデヒドの酢化,ケテンと酢酸との反応などにより得られる.無色の刺激臭をもつ液体.融点-73 ℃,沸点139 ℃,44 ℃(2.0 kPa).1.080.1.3904.引火点53.9 ℃.エーテル,ベンゼンなどに可溶.皮膚に触れるとやけどを起こす.求核試薬と容易に反応する.水と反応して酢酸になる.工業的に重要で,アセチルセルロースの製造やアセチル化剤として用いられる.眼や粘膜を強く刺激する.[CAS 108-24-7]

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百科事典マイペディア 「無水酢酸」の意味・わかりやすい解説

無水酢酸【むすいさくさん】

化学式は(CH3CO)2O。刺激臭を有する無色の液体。融点−68℃,沸点140.0℃。水と反応して酢酸になり,アルコール,セルロースなどとエステルをつくる。アセチルセルロース,酢酸ビニルの製造,医薬,染料などの有機合成におけるアセチル化剤として用いられる。酢酸またはアセトンの熱分解で得られるケテンCH2COと酢酸の反応,アセトアルデヒドの空気酸化などによってつくる。
→関連項目酢酸

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「無水酢酸」の意味・わかりやすい解説

無水酢酸
むすいさくさん
acetic anhydride

酢酸の酸無水物。化学式 (CH3CO)2O 。無色,中性,刺激臭の液体。沸点 139.47℃ (760mmHg) ,比重 1.0850 (15℃) 。加水分解を受けて酢酸になる。アセチルセルロースの製造や,アセチル化剤または縮合剤に使われる。皮膚や眼をおかす。アセチレンあるいはケテンと酢酸を反応させて製造する。

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栄養・生化学辞典 「無水酢酸」の解説

無水酢酸

 C4H6O3 (mw102.09).(CH3CO)2O.エタン酸無水物ともいう.アセチル化剤,縮合剤として使われる.

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