無顎類(読み)むがくるい

精選版 日本国語大辞典 「無顎類」の意味・読み・例文・類語

むがく‐るい【無顎類】

〘名〙 古生代前期に出現し、絶滅した魚類うち上下の両顎が発達しないものの総称。現在のヤツメウナギ、メクラウナギ類の祖先にあたる。

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デジタル大辞泉 「無顎類」の意味・読み・例文・類語

むがく‐るい【無顎類】

現生ヤツメウナギなど円口類と絶滅した翼甲類よくこうるいなどを含む魚類の一群。口は吸盤状で、あごはない。
[類語]脊椎動物魚類両生類爬虫類鳥類哺乳類

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改訂新版 世界大百科事典 「無顎類」の意味・わかりやすい解説

無顎類 (むがくるい)

最も原始的な脊椎動物(魚類)の1綱Agnatha。古生代のカンブリア紀後期に出現し,デボン紀に繁栄したが,その後衰退し,現在に至っている。口に上下両顎の骨がなく,餌を吸引するようになっている。現在のものは円口類とよばれることもあり,ヤツメウナギ目とメクラウナギ目に分けられている。ヤツメウナギ類は眼の後方に1列に並ぶ7対の鰓孔(さいこう)が開いている。自由生活をするスナヤツメのような種類もいるが,多くは生魚の体表に吸着し,寄生して生活する。メクラウナギ類は鰓孔は1対か6~15対で,腐食性である。ヤツメウナギ類の最古の化石はアメリカのイリノイ州メゾンクリークで発見された古生代石炭紀後期のマヨマイゾンMayomyzonで,すでに現生のものとほとんど異ならない形態をしていた。

 古生代の無顎類は甲皮類ostracodermとよばれ,いわゆる甲冑魚(かつちゆうぎよ)のなかまである。大きく頭甲亜綱(単鼻亜綱)と翼甲亜綱(双鼻亜綱)に分けられる。

 頭甲亜綱の魚には鼻孔が一つしかない。その代表的なものはケファラスピス類である。この類は1対の胸びれ様の突起をもち,体は大小の固い骨板で覆われていた。また体側と背面に一種の感覚域をもっており,振動を感知したと考えられている。頭甲亜綱はさらに骨甲類,欠甲類に分けられる。骨甲類はシルル紀の後期からデボン紀後期に至るまで化石を残している。スウェーデンの古生物学者ステンシエE.A.Stensiöが独特な手法によりこの類を研究し,脳,神経系などを詳細に記載したため,無顎類の中では最もよく構造がわかっている。頭部は骨板で覆われ,その腹面には小さなうろこによって覆われたまるい部分がある。この部分の前端に口が開き,その側縁には鰓孔が並ぶ。このまるい部分が上下に動いて水を吸ったり出したりしたと考えられている。欠甲類はヤモイティウスJamoytius,ビルケニアBirkeniaなどシルル紀に栄えたものを含み,現在の円口類などの祖先ではないかとも考えられている。体側に一連の鰓孔が開いている。

 翼甲亜綱に属する魚には鼻孔が2個ある。その代表的なものはプテラスピス類である。この類は一般に鰓孔は1対しかない(テローダスなどには数対あるとされている)。内部形態はわかっていない。体は大小の骨板で覆われており,プテラスピスやドレパナスピスDrepanaspisは背,腹,体側に大きな骨板をもっている。これら2属を含む異甲類のほかに翼甲亜綱にはテローダス類が含まれる。シルル紀からデボン紀にかけて生息した10~40cmほどの魚で,体は縦扁し,楯鱗のような小さな突起で覆われている。

 世界最古の魚類は翼甲亜綱のアナトレピス属Anatolepisのもので,カンブリア紀の後期の地層から発見されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「無顎類」の意味・わかりやすい解説

無顎類
むがくるい
[学] Agnatha

脊索(せきさく)動物門Chordata、脊椎(せきつい)動物亜門Vertebrataあるいは頭蓋(とうがい)亜門Craniata、無顎上綱に属する魚類の総称。以前は円口類(えんこうるい)Cyclostomata(またはCyclostomi)といわれていた。あごをもたないすべての魚類が含まれ、そのほかのあごをもつすべての魚類を含む顎口(がっこう)上綱Gnathostomataと区別する。研究者によって、ヤツメウナギ上綱とヌタウナギ上綱に絶滅種のコノドント上綱、翼甲(よくこう)上綱、欠甲上綱、歯鱗(しりん)上綱、頭甲上綱(骨甲(こっこう)上綱ともいう)の5上綱を加えて7上綱とする見解もある。DNA(デオキシリボ核酸)分析の結果、ヤツメウナギ類とヌタウナギ類は非常に近縁で単系統群であることが示されたことから、これらに対して以前使われていた円口類を復活させる研究者もいる。

[尼岡邦夫 2015年9月15日]

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世界大百科事典(旧版)内の無顎類の言及

【あご(顎)】より

…上顎は口を閉じたとき下顎に対応し,口の天蓋(てんがい)をなす部分の全体だが,その境界ははっきりしない。 このような定義からいって,脊椎動物の最も原始的なグループである無顎類(古生代のカブトウオ類や現存のヤツメウナギの仲間)はあごというものを備えていない。したがって,他のものにかみつくことはできない。…

【円口類】より

…脊椎動物のうち,もっとも原始的な形質をもつ無顎口上綱Agnathaに属する魚類(無顎類)はデボン紀末までにほとんど絶滅し,残った現存種を含む唯一の綱が円口類Cyclostomiである。メクラウナギ目,ヤツメウナギ目がこの綱に属する。…

【魚類】より

…【日比谷 京】
【分類と系統】
 魚類は水中で生活し,主としてえらで呼吸を行い,ひれをもっている脊椎動物である。分類学的には脊椎動物門を魚類上綱と四肢動物上綱に分け,魚類上綱Piscesはさらに無顎(むがく)綱(無顎類)Agnatha,棘魚(きよくぎよ)綱(棘魚類)Acanthodii,板皮(ばんぴ)綱(板皮類)Placodermi,軟骨魚綱(軟骨魚類)Chondrichthyes,硬骨魚綱(硬骨魚類)Osteichthyesに分けることが多い。 地球の歴史において,もっとも古い魚類の化石はカンブリア紀後期の地層から発見されている。…

【口】より

…半索動物の腸鰓類や原索動物では,口は比較的単純な開口にすぎないが,口に続く咽頭に多数のえら穴が形成されて,食物をこし取るのにも役だっているのが特徴的である。【原田 英司】
【脊椎動物の口】
 脊椎動物では,顎骨つまり口の骨格をもたない無顎類(太古の甲皮類と現存の円口類)と顎口類(顎骨をもつその他すべての脊椎動物)とで,口の特色は著しく異なる。無顎類の口は骨のしんをもたず,上下に開閉することがない。…

※「無顎類」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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