日本映画。1953年(昭和28)作品。五所平之助(ごしょへいのすけ)監督。五所は第二次世界大戦前から松竹で小市民映画の監督を続け、戦中も国策映画や戦争映画をつくらなかったので注目された。本作は、1950年代前半、日本映画のリアリズム全盛時代の作品。実存主義作家として知られた椎名麟三(しいなりんぞう)の『無邪気な人々』を小国英雄(おぐにひでお)(1904―1996)が脚色。舞台は、場所によって本数が異なって見える、通称おばけ煙突のある東京の千住(せんじゅ)。中年夫婦(上原謙(うえはらけん)(1909―1991)と田中絹代(たなかきぬよ))のもとに、妻の前夫が赤ん坊を置き去りにした。この夫婦と、そこに下宿する若い男と女(芥川比呂志(あくたがわひろし)と高峰秀子(たかみねひでこ))が困惑し、預けた前夫のもとへ返そうと算段する。第二次世界大戦後になって、人情の通いあいから自己主張のぶつかりあいへと変貌(へんぼう)していく人々の姿がクールに描写され、三浦光男(みうらみつお)(1902―1956)のローキートーン(暗い画調)のカメラ、芥川也寸志(やすし)による音楽の効果とともに、異色のホームドラマとなった。切れ味のよい五所演出も健在で、国内外での評価が高く、第3回ベルリン国際映画祭で平和賞を受賞。海外での現代劇映画受賞の先駆けとなった。
[千葉伸夫]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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