(読み)サル

デジタル大辞泉 「猿」の意味・読み・例文・類語

さる【猿】

霊長目のうち、ヒト科を除いた哺乳類の総称。原始的な原猿中南米広鼻猿、アジア・アフリカの狭鼻猿類人猿の四つに大別される。ほとんどがオーストラリア以外の熱帯地方にすみ、ニホンザルはその北限の種。日本では、ふつうこれをさす。ましら。→日本猿

㋐ずるがしこい者や、物まねのじょうずな者などをあざけっていう語。
野暮やぼな人やまぬけな者をあざけっていう語。
雨戸などの上下の桟に取り付け、鴨居かもい敷居の穴に差し込んで戸締まりをする用具。
自在鉤じざいかぎをつるす竹に取り付けて、自在鉤を上にあげて留めておく器具。
小さな紙片の四隅を折って括猿くくりざるのような形を作り、中央に穴をあけてたこの糸に通し、凧の糸目の所まで上って行かせる仕掛けの玩具。
ミカンの実の一袋を髪の毛などでくくって、括猿の形をこしらえる遊び。
《浴客のあかをかく動作を猿がつめで物をかくのになぞらえていう》江戸で、湯女ゆなのこと。風呂屋者。
江戸時代上方で、岡っ引き目明かしのこと。
[下接語]心の猿たて横猿(ざる)赤毛猿言わ猿送り猿尾長猿尾巻猿かに食猿かわら聞か猿きつねくくり蜘蛛くも虚仮こけ小猿木の葉猿き猿鹿しか千疋せんびき台湾猿手長猿天狗てんぐ日本猿のぼり人似ひとに日避ひよけ豚尾猿ほえ見猿眼鏡猿山猿栗鼠りす
[類語]手長猿山猿野猿やえん野猿のざる・旧世界猿・尾長猿日本猿狒狒ひひマント狒狒・新世界猿・尾巻猿蜘蛛猿

えん【猿】[漢字項目]

常用漢字] [音]エン(ヱン)(漢) [訓]さる
〈エン〉動物の名。サル。「猿猴えんこう犬猿三猿野猿意馬心猿類人猿
〈さる(ざる)〉「猿芝居山猿
[補説]「猨」は異体字

ましら【猿】

の別名。
「大きな体躯たいくを―のように軽くもてあつかって」〈有島或る女

まし【猿】

サルの古名。ましら。
「よもすがら嘆きあかせばあか月に―の一声聞くぞ悲しき」〈右京大夫集

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精選版 日本国語大辞典 「猿」の意味・読み・例文・類語

さる【猿】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 霊長目のうちヒト科を除いた哺乳類の総称。動物学的には霊長目を総称していう。ヒトにつぐ高等動物で、大脳のほか色覚を含む視覚聴覚が発達し知能の高いものが多い。顔が裸出し、目は前方に向かい、手と足で物を握ることができる。森林などで群をなしてすみ、木の葉、果実、昆虫などを食べる。ゴリラ、ヒヒ、クモザルキツネザルなど一二科五八属一八一種がいる。原猿類と真猿類とに分けられ、後者はさらに広鼻猿類(新世界サル類)、狭鼻猿類(旧世界サル類)、類人猿類に区分される。日本にはニホンザル一種だけで、ふつうこれをさしていう。
    1. [初出の実例]「人有りて、三輪山に猿(サル)の昼睡るを見る。竊に其の臂を執(とら)へて、其の身を害(そこな)はず」(出典:日本書紀(720)皇極三年六月(北野本南北朝期訓))
  3. を、すばしっこくずるいもの、卑しいもの、落ち着きのないものなどと見て、それに似た人をたとえていう語。
    1. (イ) ずるくて小才のきく者、またはまねのじょうずな者などを、あざけっていう語。
      1. [初出の実例]「今きけば、客は小ぬす人で、おやまは猿で、きき合せてあふ事じゃげな」(出典:随筆・胆大小心録(1808)五五)
    2. (ロ) 野暮な者やまぬけな者をあざけっていう語。
      1. [初出の実例]「あの海とんばうめを屋敷に留め置き、彼奴(きゃつ)めを猿にして紛れ者の詮議いたさう」(出典:歌舞伎桑名屋徳蔵入船物語(1770)五)
    3. (ハ) 言語、動作の軽はずみで落ち着きのない者。〔新撰大阪詞大全(1841)〕
    4. (ニ) 主として小者(こもの)召使いなどを卑しめていう語。
      1. [初出の実例]「さるめ、先へいて善哉餠いひ付よ」(出典:浄瑠璃・傾城酒呑童子(1718)三)
  4. ( 浴客の垢(あか)を掻(か)くところから ) 江戸時代、湯女(ゆな)の別称。風呂屋女。垢かき女。
    1. [初出の実例]「をのづから書つくしてよひぜんがさ 猿とゆふべの露は水かね〈未学〉」(出典:俳諧・大坂独吟集(1675)下)
  5. 岡っ引き、目明しをいう江戸時代、上方の語。
    1. [初出の実例]「頭は猿与力同心召連て 此穿鑿に膓をたつ」(出典:俳諧・西鶴大矢数(1681)第一三)
  6. (とびら)や雨戸の戸締まりをするために、上下、あるいは横にすべらせ、周囲の材の穴に差し込む木、あるいは金物。戸の上部に差し込むものを上猿(あげざる)、下の框(かまち)に差し込むものを落猿(おとしざる)、横に差し込むものを横猿という。くるる。
    1. 猿<b>⑤</b>
    2. [初出の実例]「戸の猿は手長を防ぐ為に付け」(出典:雑俳・柳多留‐一五三(1838‐40))
  7. 自在かぎをつるす竹にとりつけ、自在かぎを上げて留めておく用具。多くグミの木で作る。小猿(こざる)
  8. 小さい紙片を折り返して括猿(くくりざる)のような形をつくり、その中央に穴をあけ、揚げた凧(たこ)の糸に通して、凧の糸目の所までのぼり行かせるしかけの玩具。
    1. [初出の実例]「のぼせたる凧の糸にとをし糸をしゃくり上れば凧の糸めの処まで上り行なり。是を猿をやるといふ」(出典:随筆・嬉遊笑覧(1830)六)
  9. ミカンの実の袋を糸毛でくくって、の形をこしらえる遊び。
    1. [初出の実例]「過にし秋、自が黒髪をぬかせられ、猿(サル)などして遊びし夜は」(出典:浮世草子好色一代男(1682)六)
  10. 江戸時代、針さしのこと。
    1. [初出の実例]「憎まれて居る針箱の猿」(出典:雑俳・折句袋(1779))
  11. さるばい(猿匐)」の略。
    1. [初出の実例]「猿匐(サルハヒ) 碁勢にあり。又猿とばかりも云」(出典:俚言集覧(1797頃))

まし【猿】

  1. 〘 名詞 〙さる(猿)」の異名
    1. [初出の実例]「ましも猶をち方人の声かはせ我れ越しわぶるたこのよひ坂」(出典:紫式部集(1012‐17頃))

猿の補助注記

中古以降、和歌には「まし」「ましら」を用い、詞書など和歌以外では「さる」を用いるところから、「まし」は歌語であったと認められる。


ましら【猿】

  1. 〘 名詞 〙さる(猿)」の異名。
    1. [初出の実例]「わびしらにましらななきそあしひきの山のかひあるけふにやはあらぬ〈凡河内躬恒〉」(出典:古今和歌集(905‐914)雑体・一〇六七)

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百科事典マイペディア 「猿」の意味・わかりやすい解説

猿【さる】

雨戸等の桟にとりつけ鴨居(かもい)・敷居等の穴に差しこんで戸締りとする木片。金属製には南京(ナンキン)落し,フランス落し等がある。上下に動くものを立返り猿,左右に動く猿を横返り猿という。
→関連項目建具金物

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動植物名よみかた辞典 普及版 「猿」の解説

猿 (サル)

動物。ヒト以外の霊長類の総称

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【サル(猿)】より

…ヒトにもっとも近縁な動物で,ヒトとともに哺乳綱霊長目をなす。もともとニホンザルを指すことばであったが,現在ではヒト以外の霊長類の総称として用いられ,狭義には,真猿類のオマキザル科とオナガザル科の種を指す。英語では,尾の長いサルをmonkey,尾のないサルをape,原猿類をlemur,またはprosimianといっている。…

※「猿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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