(読み)ぎょく

精選版 日本国語大辞典 「玉」の意味・読み・例文・類語

ぎょく【玉】

〘名〙
宝石の一種。硬玉(こうぎょく)軟玉(なんぎょく)との総称たま
※行人(1912‐13)〈夏目漱石塵労「父は玉(ギョク)だの高麗焼だのの講釈をした」 〔列子‐湯問〕
② 接頭語的に用いて、美麗なもの、貴重なもの、また、高貴なものの意をもって他の人に関する事物の美称に用いる。「玉音」「玉札」「玉手」「玉楼」 〔日葡辞書(1603‐04)〕
③ 球状のもの。たま。
芸者娼妓をいう。たま。
※洒落本・仕懸文庫(1791)三「おれも長屋で相応に口もきく玉(ギョク)をあづかって土地ところの世話もしてゐれば」
⑤ 「ぎょくだい(玉代)」の略。
※洒落本・部屋三味線(1789‐1801頃)「玉(ギョク)を落したり腮(あご)をひかれたりして見ねへ、勘定迄に商内を仕詰にゃアいかねへわな」
⑥ (「玉」の字画が五画であるところから) 江戸時代、上方遊里で、遊興の時間をはかる線香五本の符号
※洒落本・虚実柳巷方言(1794)中「線香五本を以て玉の一字に換る」
⑦ (「玉子」の「玉」を音読して) 飲食店などで、鶏卵、または鶏卵料理をいう。
※にんげん動物園(1981)〈中島梓〉五四「タマゴ(これをまたギョクなんて云やがる)、アナゴ、納豆巻、なんて注文してるから」
壒嚢鈔(1445‐46)二「将棊の馬に玉を王と云は何の故ぞ、両王いまさん事を忌て、必ず一方を玉と書く、是手跡の家の口伝と云々」
⑨ 取引相場でいう。
(イ) 取引所で、売買の約定をした商品や証券。または、その数量株式取引での株、米穀取引での米などの類。〔模範新語通語大辞典(1919)〕
(ロ) 取引員が客から受けた売買の注文数。〔取引所用語字彙(1917)〕
(ハ) 取引所に納める売買証拠金。

ごく【玉】

〘名〙 (「ごく」は「玉」の呉音) たま。ぎょく。

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デジタル大辞泉 「玉」の意味・読み・例文・類語

たま【玉/球/珠】

[名]
球体・楕円体、またはそれに類した形のもの。
㋐球形をなすもの。「―の汗」「露の―」「目の―」
㋑丸くまとめられたひとかたまり。「毛糸の―」「うどんの―」
㋒レンズ。「眼鏡の―をぬぐう」「長い―で撮る」
㋓(球)球技などに用いるボール。まり。また、投球などの種類。「遅い―」「―を打つ」「―をとる」
㋔(球)玉突きの球。転じてビリヤードや、そのゲームをいう。「友人と―を突く」
㋕(球)電球。「切れた―を取り替える」
㋖そろばんで、はじく丸い粒。そろばんだま。「帳簿を開いて―を置く」
㋗(「弾」「弾丸」とも書く)銃砲の弾丸だんがん。「―が飛びかう」「―を込める」
㋘鶏卵。玉子。「き―」

㋐丸い形の美しい石の総称。宝石や真珠など。「―を磨く」「―で飾る」
㋑きわめて大切に思う貴重なもの。「掌中の―」
㋒張りがあって美しく、清らかなもの。「―の肌」
人を丸め込むために策略の手段として使う品物・現金。「ゴルフ会員権を贈賄の―に使う」
美しい女性。また、転じて芸者・遊女。「上―」
あざけりの気持ちで、人をその程度の人物であるときめつける語。やつ。「あいつもたいした―だよ」
《「金玉きんたま」の略》睾丸こうがん
紋所の名。2㋐を図案化したもの。
[接頭]名詞に付く。
神事や高貴な物事に付いて、それを褒めたたえる意を添える。「―垣」「―だすき
玉のように美しいもの、玉をちりばめたものなどの意を添える。「―藻」「―櫛笥くしげ
[下接句]傷無き玉傷に玉ころもの裏の珠掌中の珠たなごころの玉手の内の珠驪竜りりょう頷下がんかの珠連城のたま
[類語](1㋓)ボールまり/(2㋐)宝石ぎょく宝玉勾玉原石金剛石ダイヤモンド玻璃石英水晶クリスタルクオーツ紫水晶アメシスト瑪瑙猫目石キャッツアイエメラルド翠玉緑玉石トパーズ黄玉オパール蛋白石トルコ石ターコイズガーネット柘榴石瑠璃鋼玉ルビーサファイア翡翠碧玉琥珀真珠パール

ぎょく【玉】

美しい石。たま。
硬玉軟玉の総称。翡翠ひすい碧玉へきぎょくなど。
料理店などで、鶏卵。また、すしだねの卵焼き。
取引所で、取引の対象となる株式や商品。また、信用取引先物取引で、売り建てまたは買い建てをして未決済のままの約定。
将棋のこまの「玉将」の略。
芸者のこと。
玉代ぎょくだい」の略。
[類語]宝石たま宝玉勾玉原石金剛石ダイヤモンド玻璃石英水晶クリスタルクオーツ紫水晶アメシスト瑪瑙猫目石キャッツアイエメラルド翠玉緑玉石トパーズ黄玉オパール蛋白石トルコ石ターコイズガーネット柘榴石瑠璃鋼玉ルビーサファイア翡翠碧玉琥珀真珠パール

ぎょく【玉】[漢字項目]

[音]ギョク(漢) [訓]たま
学習漢字]1年
〈ギョク〉
美しく価値のある石の類。「玉砕玉石玉杯攻玉紅玉硬玉珠玉碧玉へきぎょく宝玉
美しくすぐれているものの形容語。「玉肌ぎょくぎ玉露金科玉条金殿玉楼
天子または他人を敬って物事に添える語。「玉音ぎょくいん玉音ぎょくおん玉稿玉座玉章玉体
将棋の駒の一。王将。「玉将入玉
花柳界で、芸者のこと。「玉代半玉
〈たま(だま)〉「玉垣玉砂利親玉善玉手玉火玉水玉目玉槍玉やりだま数珠玉鉄砲玉
[名のり]きよ
[難読]薬玉くすだま玉章たまずさ玉蜀黍とうもろこし勾玉まがたま

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「玉」の解説


たま

身体装飾に用いる垂飾(すいしょく)のうち孔をあけたものをいう。形態から勾玉(まがたま)・管玉(くだたま)・切子玉(きりこだま)・棗玉(なつめだま)・臼玉・丸玉・蜜柑玉(みかんだま)・山梔玉(くちなしだま)・算盤玉(そろばんだま)・平玉・小玉とよばれ,ガラスの地に別の色のガラスをはめこんだ蜻蛉玉(とんぼだま)を含め,総称して玉類という。材質は硬玉・碧玉(へきぎょく)・メノウ・水晶・蛇紋(じゃもん)岩・琥珀(こはく)・ガラスなどがあり,古墳後期に現れる中空に作った空玉(うつろだま)は金・銀・金銅製である。日本最古の玉は,北海道の旧石器後期の遺跡から出土した石製小玉である。縄文時代には硬玉製大珠(たいしゅ)が流行し,弥生時代には管玉が盛行するとともに,ガラス製の玉も作られ始めた。さまざまな種類・材質がそろうのは古墳時代で,古墳の副葬品としてしばしば出土。その後は飛鳥寺の塔心礎から出土した勾玉・丸玉・空玉・蜻蛉玉のように,寺院の鎮壇具や舎利荘厳具(しゃりしょうごんぐ)としても一部で使用された。

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百科事典マイペディア 「玉」の意味・わかりやすい解説

玉【ぎょく】

軟玉硬玉の2種類に分けられる。中国で古くから装飾品として愛玩(あいがん)された玉は軟玉で,ホータン産の玉は特に珍重された。品格ある美しさのゆえに種々の伝説を生んだ。硬玉にはヒスイがある。→玉器(ぎょっき)

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世界大百科事典 第2版 「玉」の意味・わかりやすい解説

たま【玉】

美しい光沢のある特殊な材料をさす場合にも,その材料で作った装身具などの製品をさす場合にも用いる。珠とも書く。材料としての〈たま〉には,硬玉,軟玉などの玉(ぎよく)のほかに,水晶,ザクロ石,メノウ,碧玉,トルコ石,コハク,埋木(うもれぎ)などの各種の鉱物から,真珠,サンゴなどの動物性のものも含まれる。ただし,何を〈たま〉のうちにいれるかは,時代や地域によってちがいがあり,科学的な成分のほかに,希少性にもとづく価値と,習慣による需要とが,その選定の大きな要因になっている。

ぎょく【玉 yù】

中国で色,光沢の美しい石を玉という。古くからおもに今の新疆ウイグル自治区崑崙山麓のホータンに産し,玉門関を通って中原にもたらされた。この美しい石に,太古の中国人は神秘な力を見いだし珍重してきた。初め神や霊魂をよらしめるもの,邪悪を払う呪力を持つもの,あるいは生成力,再生力の霊力を持つものと信じられ,呪術の具として使われた。おそらく玉に対するこの呪物観念は,石を神聖視し崇拝した原始の信仰と同源であろう。

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岩石学辞典 「玉」の解説

高級な工芸品の原石として珍重された岩石で,玉には軟玉(nephrite)と硬玉(jade)がある.一般にjadeは硬玉をいう.硬玉は翡翠(ひすい)輝石(jadeite)と石英の集合体で,エメラルド色の良質な部分は宝石として扱われ,翡翠(ひすい)と呼ばれる.主に翡翠輝石の繊維状結晶の細かい網目で構成されているため,硬く緻密な岩石である.スペイン語でpietra di hijadaは腎臓結石の意味.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「玉」の意味・わかりやすい解説


たま

岡山県南部,玉野市の中心市街地の一部。旧日比町の一部であったが,1919年,南に造船所が造られて以来急速に発展し,北に接する宇野とともに中心市街地を形成した。現在では西方の奥玉および玉原地区まで住宅地域が拡大し,玉原地区には造船所の関連企業の工場団地が造成されている。


ぎょく
jade

東洋で宝石とされた石で,おもに白玉,翡翠 (ひすい) をさすが,厳密には硬玉軟玉の2種がある。中国では先史時代以来,珍重され,さまざまな器がある。

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株式公開用語辞典 「玉」の解説

株式など証券取引所で売買されるものを総称して玉といいます。

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