(読み)イラカ

デジタル大辞泉 「甍」の意味・読み・例文・類語

いらか【×甍】

《高くとがっている部分の意の「苛処いらか」からという》
家の上棟うわむね家屋の背。屋根頂上の部分。また、屋根にいた棟瓦むねがわら
屋根瓦。また、瓦葺きの屋根。「の波」
切妻きりづま屋根の下にある三角形の壁の部分。
[類語]屋根ルーフドーム屋上板屋草屋根鉄傘丸天井丸屋根円蓋

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精選版 日本国語大辞典 「甍」の意味・読み・例文・類語

いら‐か【甍】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 屋根のいちばん高い所。屋根の背。上棟。また、屋根に葺(ふ)いた棟瓦(むながわら)
    1. [初出の実例]「天の斑駒(ぶちこま)を剥(さかはぎには)ぎて、殿(みあらか)の甍(イラカ)を穿(うが)ち、投(な)げ納(い)る」(出典:日本書紀(720)神代上(水戸本訓))
  3. 屋根に葺いた瓦。また、瓦葺きの屋根。
    1. [初出の実例]「甍破れては霧不断の香をたき」(出典:平家物語(13C前)灌頂)
    2. 「銀(しろがね)の築地をつきて、金(こがね)のいらかをならべ、門をたて」(出典:御伽草子・浦嶋太郎(室町末))
    3. 「甍(イラカ)の波と雲の波、重なる波の中空を」(出典:唱歌・鯉のぼり(文部省唱歌)(1913))
  4. 切妻屋根の下の、三角形になった壁の部分。〔日本建築辞彙(1906)〕

甍の補助注記

語源については、その形態上の類似から、古来「鱗(いろこ)」との関係で説明されることが多かったが、上代においては「甍(いらか)」が必ずしも瓦屋根のみをさすとは限らなかったことを考慮すると、古代の屋根の材質という点で、むしろ植物性の「刺(いら)」に同源関係を求めた方がよいのではないかとも考えられる。

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とっさの日本語便利帳 「甍」の解説

単に、棟瓦(むながわら)という意味もあるが、屋根瓦、または、上棟(うわむね)全体のことを表す。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【破風】より

…切妻造や入母屋(いりもや)造などの屋根の妻側(棟の端)において合掌形に付けられた板,あるいは,その板を組んだ部分をいう。搏風とも書き,甍(いらか)ともいわれる。
[日本]
 屋根の形式で分けると,切妻破風(切破風),入母屋破風のほか,屋根面の途中に棟を突き出して設けた据(すえ)破風,向拝(こうはい)や庇(ひさし)のように茅負(かやおい)や隅木に取り付く縋(すがる)破風,軒の中央に設けられた軒唐(のきから)破風がある。…

※「甍」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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