生具観念(読み)せいぐかんねん(その他表記)idea innata[ラテン]

改訂新版 世界大百科事典 「生具観念」の意味・わかりやすい解説

生具観念 (せいぐかんねん)
idea innata[ラテン]

感覚経験によるのではなく,人間精神が生まれながらにしてもっている観念で,生得(本有)観念ともいう。とくにデカルトとその学派が使った言葉で,たとえばデカルトによれば観念は外来的(感覚によって得られたもの),作為的(想像によって形づくられたもの),生具的の3種に分類され,〈我〉〈物〉〈思惟〉〈神〉のような明晰判明な真なる観念はすべて生具的であるとされる。
観念
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百科事典マイペディア 「生具観念」の意味・わかりやすい解説

生具観念【せいぐかんねん】

ラテン語idea innataなどの訳。人間が生まれながらにして具えている観念で,〈生得観念〉〈本有観念〉ともいう。特にデカルトおよびデカルト学派の用語。〈我〉〈物〉〈神〉などが,感覚や経験によらない生具観念とされる。
→関連項目ロック

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世界大百科事典(旧版)内の生具観念の言及

【観念】より

…たとえばデカルトは観念に次の3種を区別した。第1は,人が先天的に所有している生得的,あるいは本有的な観念(生具観念)であり,公理的な諸真理,因果など,とりわけ神の観念がそれである。第2は,外来的,つまり外部から必然的に受容を迫る形で感覚に入ってくる熱,音などの観念であり,第3は,仮想的,つまり半神半魚の女神のように想像や空想が作り出した対象である。…

【デカルト】より

…ついで精神としての私の存在から神の存在が必然的に導き出される。すなわち疑う,不完全な私が自己の不完全性を自覚しうるのは私の中にすでに完全性の観念(生具観念)があるからだが,この完全性の観念は不完全な存在である私が創造しうるものではなく,私の外に実在する完全者すなわち神が私の精神に刻みつけた観念でしかありえないのである。このようにして今やその存在が確実となった神の〈誠実性〉を根拠として,外界の存在もまた証明される。…

※「生具観念」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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