自然界のある場所をとると、そこにはかならずいろいろな種の生物が混じり合って生活している。生態学ではこれを一つの集団とみなして群集とよぶが、ヒトの群集と区別する際に生物群集の語を用いる。その場所に生息するあらゆる動植物を含めるのが原則であり、特定の生物群に着目して貝類群集、鳥類群集などと用いるのは便宜的な使用である。群集を植物部分と動物部分に分けるとき、前者を植物群落、後者を動物群集とよぶ。場所のとり方は基本的に任意であるが、景観としてまとまりのある場所、たとえば湖などを選ぶことが多い。陸上では一般に植物が景観を形成しており、植物群落を単位として群集を規定することが多く、「ブナ林の群集」「チガヤ草原の群集」などと表現される。
群集を構成する各種生物個体は、生きるに必要な資源や繁殖などをめぐって密接な種内関係を有している一方で、種間でも深くかかわり合いながら生活している。たとえば、従属栄養生物たる動物は他種の動植物を食うことによって生きており、餌(えさ)となる他種の存在なしにはそれ自身の存在を考ええないものである。また、独立栄養生物とよばれ、一見他種とは無関係に生活しているかにみえる緑色植物も、光や土壌中の水や養分をめぐっての他種動植物との競争・協調のなかで生活しているのである。動物と植物間の関係としては、やや特殊ながら、虫媒花における受粉をめぐっての昆虫と植物との協調的な関係はよく知られている。これらのことは、群集が各種生物の単なる寄せ集めではなく、相互にかかわり合いながら生活している生物の地域集団であることを示している。
群集の概念はこのような生物間の相互作用、もしくは諸関係を含むものであるがゆえに「生物の生活の科学」たる生態学のなかでもっとも重要な位置を占めている。なぜなら、現実の生物の生活はすべて群集の諸関係のなかで営まれているからである。
これらの諸関係を群集全体として眺めるとき、そこには食物連鎖、生態ピラミッドなどの構造が現れてくる。また、諸関係の総決算が植物群落の遷移にみられるような動的な系を生み出すこともある。このため群集は独自の構造と発展形態を有する統一体としてとらえられることもあるが、群集が時系列的に不変の構成員と明確な境界をもたないことは明らかであり、このような群集観があくまで操作的なものにすぎないことは注意を要する。
[江崎保男]
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
…もちろん,この二つ以上の範疇に入るものや,中間的なものも多い。 海洋の生物は,例えば海水中では,サメ,クジラなどの大型の動物が,小型の魚類(イワシ,サンマ,イカなど)を食べ,小型魚類などは,橈脚類copepodaなどの動物プランクトンを食べ,動物プランクトンは植物プランクトンや,生物の死骸が分解する途中にできる生物残査(デトリタスdetritus)を食べるというように,高次消費者―二次消費者―一次消費者―生産者という食物連鎖関係で結び合った生物群集を構成している。海の基礎生産は,植物プランクトンと,海藻および顕花植物の海草の光合成によっている。…
※「生物群集」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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