(1)人形浄瑠璃。世話物。3巻。角書〈嘉平次おさが〉。近松門左衛門作。1715年(正徳5)5月大坂竹本座初演。大坂伏見坂町の遊女おさがとなじんで借金に追われていた茶碗屋の嘉平次が,悪友長作に金を奪われ名誉を傷つけられたことのために,生玉神社の境内で心中を遂げるという次第を描いたもの。実説は不明。《曾根崎心中》のお初・徳兵衛の13年忌を当て込んだ作品で,全体に《曾根崎心中》を踏まえた構想がとられているが,新しく嘉平次の父や姉,許嫁などの情愛が強調されており,主人公たちの悲劇がいっそう複雑で深刻なものとなっている。ただし初演時以降人形浄瑠璃での上演は見られない。(2)歌舞伎狂言。世話物。本作は1903年3月大阪朝日座で新派によってとりあげられ,ついで1913年正月東京歌舞伎座で井手蕉雨により初めて歌舞伎化された。今日ではもっぱら宇野信夫脚色のものが演じられている。
執筆者:原 道生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
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