生産費説(読み)せいさんひせつ(英語表記)cost of production theory

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「生産費説」の意味・わかりやすい解説

生産費説
せいさんひせつ
cost of production theory

財の価値の決定を論じる理論の一つで,A.スミス,N.シーニアー,J.S.ミルによって唱えられた。労働価値説,限界効用説,均衡論などに対比される。スミスにおいては賃金利潤および地代が価値の源泉であると生産費説が主張される一方で,純粋労働価値説が主張されているなどあまり明確でない。これに対しシーニアーは明確な生産費説を展開した。彼は生産要素を労働,制欲,自然的要素の3つに分けこれによって生産物の価値が決定されるとした。またミルは生産費説を発展させ,生産要素の投下量を増せば生産を増すことのできるものは生産費,および正常利潤をまかなうだけの価値に限界収益逓減則の働くものについては最高生産費によって価値が決ると主張した。 (→価値学説 )

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百科事典マイペディア 「生産費説」の意味・わかりやすい解説

生産費説【せいさんひせつ】

生産物の価格はその生産費によって決まるとする説。A.スミスは賃金,利潤,地代の合計自然価格)で価格が決まるとし,J.S.ミルは生産費と利潤の合計で決まるとした。K.マルクスはこの合計費を批判し,それらが価値の分解部分であることを明らかにし労働価値説を仕上げた。

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世界大百科事典(旧版)内の生産費説の言及

【価値】より

…しかしスミスにあっても,価値の源泉についていくつか異なった解釈が混ざりあったままである。その第1のものはいわゆる価値の生産費説といわれ,賃金,利潤および地代をもって価値の源泉とみなすものである。すでにのべた自然価格なる概念はこの生産費説の延長にあって,いわば自然な状態にある生産費が価値にあたるとするわけである。…

※「生産費説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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