卵性の動物が受精卵,未受精卵を産むことで,水生の動物では放卵spawningとも呼ばれる。一般に輸卵管から排出されるが,多毛類やクラゲ類は腎管や口を利用している。また,ある種のゴカイ(多毛類)は卵が入った部位を破裂させて水中に放出し,破損した部位を再生する。産卵は求愛行動や交尾などとともに繁殖行動の一環をなす行動で,温度や日長の変化,交尾相手の信号などの外部刺激や体内のホルモン濃度などに強く影響されて起こる。たとえば,カナリアは日照時間が長くなると脳下垂体が刺激され,性腺刺激ホルモンを分泌する。これが卵巣を刺激し,やがてエストロゲンが分泌されて卵の形成と交尾行動が始まる。発情した雄と交尾すると,交尾が直接の引金になって産卵が起こるのである。卵は一般に無防備で栄養豊富なため,捕食や環境の不規則な変動にさらされやすく,死亡率はしばしば異常に高い(カメの1種Chrysemys pictaでは90%以上)。そのため,低い生存率に見合うだけの多量の卵を広範囲に産卵する動物(多くの魚類や無脊椎動物。マンボウは数億個の卵を産む)がいる(小卵多産型への進化)一方で,卵の保護を発達させた種も少なくない。くぼみや土中など発見されにくい場所や,餌となる動植物の体内に直接産卵したり,有毒の鱗粉を吹きつけたり(ドクガ),硬質の殻(爬虫類や鳥類)や繭(ヒル類やクモ類),ゼラチン質の被膜(両生類)に包んで産卵する。また親が直接保護する動物もみられる。卵塊を持ち歩く(ヒルやクモ類,甲殻類,ある種の昆虫や両生類),口内に入れる(ある種の魚類),さらには孵化(ふか)するまで親がとどまり育児する(鳥類やトゲウオ,タコ,ある種の昆虫)など,実に多様である。一般に,捕食者や競争種が多い,子が利用できる餌量が少ない,環境の不規則な変動が大きい,といった環境に生息する動物ほど,卵を大型化し保護行動を発達させる傾向がある(大卵少産保護型への進化)。
→卵(たまご)
執筆者:呉 漉盡
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
動物が卵を産むことで、体内受精動物では受精卵、体外受精動物では未受精卵が体外に排出される。なお、受精卵の場合には、体内でやや発生の進んだ初期胚(はい)の排出も広義には産卵という。水中に卵を排出する場合はとくに放卵ともよぶ。卵は卵巣から放出(排卵)されて、多くは輸卵管を通って体外に出るが、しばしばその間にゼリー様物質や殻などの保護物が卵の周囲に付加される。多くの動物で産卵は場所や季節あるいは時間が決まっており、たとえばニッポンウミシダは10月上旬の大潮の日に産卵し、サケは数年の航海ののちに母川に帰って産卵する。産卵場所も、卵や幼生に都合のよい所が選択され、産卵のために営巣する動物も多く、また他の動物の体内に産卵する例もある。1回に産卵される卵の数を産卵数といい、その数は1個から数万に及ぶものまでさまざまである。自然状態での産卵は、温度・日長時間そのほか環境の種々の条件や、体内のホルモンの状態など多くの要因によって支配されている。いくつかの動物では、そのことを利用して人為的に産卵させることが可能になっている。
[八杉貞雄]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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