日本語の動詞,形容詞,形容動詞の3品詞,すなわち活用ある自立語の総称。何らかの物事を題にしての叙述にあずかり(述語),またその叙述をもって事物の限定にあずかる(連体)。動詞は主として変化(動作作用)について,形容詞,形容動詞は性質状態について叙述するが,後の2者は動詞の叙述する変化を限定することもある(副詞的用法--連用)。意味上では後の2者は区別がないが,外形上の活用の型では明らかに区別される。動詞との別も同様に明らかである。その活用の型は,用言を通じて,(1)語形の最終音節の主として母音の交替によるもの,(2)語幹に結合する語尾の交替によるもの,(3)前の2種の混合によるもの,がある。形容詞,形容動詞は(2)で,それぞれ交替する語尾の系列がちがう。動詞には3種すべての活用があり,(2)と(3)がそれぞれ2系列に分かれる。これらの型に通ずるものとして,交替する語形は普通6種の活用形に整理される。その6種のうち終止形と連体形とが形を異にするのは,口語では形容動詞だけ,また命令形をもつのは動詞だけである。それぞれの形は,用言が単独で用いられるときの用法のちがいを表すものでもあり,また付属語を伴う際のそれぞれの結合形でもある。すべての用言がいずれかの活用の型における活用形を完全に整えているとは限らず,たとえば動詞では連用形の使用が最も多い。また用法上では用言の活用形のどれかにあたりながら,全体としては活用の系列の中に入らないような単語が,実際には用いられる。〈ちょうだい〉〈ごらん〉〈オーライ〉などの類がその一例である。普通にこれらは体言に分類されるが,用法は全く動詞の命令形に同じである。意味上,実質的な意味が薄れ,形式的な意味だけとなって,助動詞のように他の叙述の補助をなすものがある。たとえば〈(朝で)ある,ない〉〈(書いて)ある,ない〉〈(咲いて)いる〉〈(聞いて)もらう〉〈(降って)くる〉〈(調べて)みる〉〈(お考えに)なる〉〈(おあがり)なさる〉〈(なければ)なら(ない)〉〈(笑ったり)する〉〈(見ても)いい〉などの類で,これらを補助用言という。
執筆者:林 大
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日本文法の用語で、「体言」などとともに、いわゆる品詞より上位の概念を表すために用いられる。たとえば、学校文法などを通じてもっとも一般に流布している橋本進吉の文法論では、「詞(し)(=自立語)」を大きく「用言・体言・副用言・感動詞」に分ける。橋本は、「用言」として「動詞・形容詞」をあげるが、いわゆる「形容動詞」については、文語では動詞・形容詞に対立する用言の一種とみてもよいが、口語では、活用形の用法や助動詞との接続などからみて、特殊の形容詞とみるのがよいと述べている。なお、「用言」は、単独で種々の職能を有し、それが活用によって示されるとするが、特徴的な職能として、単独で述語になることをあげる。また、意味的には、単に属性だけを表すのでなく、ある物がその属性を有するということを表すと述べ、「用言に叙述性がある」といわれるのはその意味であると指摘している。
一般に「用言」を活用する自立語ととらえることが多いが、山田孝雄(よしお)によれば、「用言」の本質は、陳述(主位概念と賓位(ひんい)概念とを結合・統一する精神作用の言語化)を表す点にあり、活用は、その語類が多様な陳述に応ずる結果にすぎないとされる。また、山田は、いわゆる助動詞を、「用言」が種々の陳述を果たすために「用言」から分出したものととらえ、「用言」の内部に属するものと認めて、「複語尾」と称している。
[山口佳紀]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…副詞のト,ニ,ゼン(然)(例:奥様然),形容詞のイ,ク,ケレ,動詞(一段,カ変,サ変)のル,レ,ロ,および形容動詞のダ,ナなどの活用語尾も,文法的な意味を添えるだけの要素である。用言をなす接尾語でなんらか意味を変えるものには,体言につくブル,メク,ビル,ジミル,テキ(ダ),ダラケ(ダ),形容詞につく寒ガル,楽しム,こころよゲ(ダ)などがあり,動詞につく接尾語には起こス,教わル(受身・使役の助動詞もこの類),困りキル,走りダス,見カネル,出ニクイ(希望のタイも),忘れガチ,勝ちッパナシ,諸種の語につくシイ,ッポイなどがある。 接尾語がつくと,上の語をうける関係がもとの単語の場合と変わるものと変わらないものとがある(助動詞がつく時は受身・使役・希望の場合を除いて変わらない)。…
※「用言」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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