日本大百科全書(ニッポニカ) 「田中冬二」の意味・わかりやすい解説
田中冬二
たなかふゆじ
(1894―1980)
詩人。福島市に生まれる。本名吉之助。立教中学を終えて銀行員となる。詩作は1921年(大正10)ごろから本格的となる。『詩聖』『パンテオン』『オルフェオン』を経て、40年(昭和15)『四季』に参加。詩は澄明精緻(せいち)な叙情。詩集は『青い夜道』(1929)以後、『海の見える石段』(1930)、『山鴫(やましぎ)』(1935)、『故園の歌』(1940)、『山の祭』(1947)、『晩春の日に』(1961)、『葡萄(ぶどう)の女』(1966)、『サングラスの蕪村(ぶそん)』(1976)など。「しぶしぶと雨が降り/新蕎麦(そば)とかいた行燈(あんどん)が出てゐた/山がせまり 二つの谷が落ちあつてゐた」(小さな山の町)。句集、随筆集もある。
[安藤靖彦]
『『日本の詩19 田中冬二他集』(1979・集英社)』▽『『研究資料現代日本文学7』(1980・明治書院)』