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江戸中期の商人で三井(みつい)本家高利(たかとし)の孫の三井高房(たかふさ)(1684―1748)が、番頭の中西宗助の助力を受けて子孫のために残した教訓書。3巻。1728年(享保13)から33年の間に成立した。諸都市の有力町人の盛衰の実例を分析し、没落の原因を大名貸(だいみょうがし)、不用意な金融の拡大や奢(おご)り、女色や遊芸への深入りなどに求め、繁栄の条件として町人は「仁義」と「算用」の均衡を保ち、倹約を重んじ家業に精励することを強調する。高房は、町人の前記のような心構えを「町人心」「商人心」として自覚したが、同書は近世町人のあり方の特色をうかがうための重要な書物である。
[今井 淳]
『中村幸彦編『日本思想大系 59 近世町人思想』(1975・岩波書店)』▽『三井高陽著『町人思想と町人考見録』(日本放送出版協会・ラジオ新書)』
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豪商三井家の3代高房(たかふさ)が,父高平(宗竺(そうちく))の見聞した京都の有力商人の盛衰を筆記・編纂したもの。3巻。1728年(享保13)成立。三井家の家法である「宗竺遺書」の趣旨を理解させるため,京都商人の没落事例などを具体的にのべ,大名貸や分限をこえたおごりなどを戒める。江戸前・中期の町人社会の概況とともに,上層町人の意識もうかがうことができる。「日本思想大系」「日本経済大典」所収。
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… 商家における家訓の作成が目だってくるのは,幕藩制的身分社会が固定化した18世紀前半以後のことである。17世紀後半の〈元禄の繁栄〉といわれる経済成長期に経営を拡大した三井・鴻池・住友家などの富商は,その後の停滞期にはいった享保期(1716‐36)に従前の家訓を集大成した家法の制定を行っており,このような新興商人の台頭のかげで倒産していった多くの京都富商の事例を列記した三井高房の《町人考見録》なども,一種の家訓の意味をもつものといえる。したがって当時の大商家にあっては,伸長期の経営の多角化・拡大から転じて,保守的な経営の安定が意図され,家訓も単なる生活規範や経営理念を抽象的に説くものではなく,家産の分散を防止する相続法,経営の管理組織・運営法の規定など,家政と営業の全般に対する支配を強固にするための〈家法〉としての性格をもつものに展開された。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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