界面活性剤(読み)カイメンカッセイザイ(英語表記)surface active agent
surfactant

デジタル大辞泉 「界面活性剤」の意味・読み・例文・類語

かいめん‐かっせいざい〔‐クワツセイザイ〕【界面活性剤】

界面張力を著しく低下させる物質。水に対しては、せっけん・油・アルコールなど。表面活性剤

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共同通信ニュース用語解説 「界面活性剤」の解説

界面活性剤

物質と物質の「境界面」で働く成分の総称。医療用の消毒液や合成洗剤など身近な製品に用いられている。水になじみやすい「親水基」と、油になじみやすい「親油基」の双方を持ち、洗剤やシャンプーの場合は油分の多い汚れの周りを親油基が取り囲むようにくっつき、引きはがす。細菌のタンパク質を腐食して殺す消毒作用も持ち、高濃度で血管に入ると、タンパク質から成る血管や臓器に作用して中毒を起こし、死に至ることもある。

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精選版 日本国語大辞典 「界面活性剤」の意味・読み・例文・類語

かいめん‐かっせいざい‥クヮッセイザイ【界面活性剤】

  1. 〘 名詞 〙 界面張力をいちじるしく低下させる性質をもった物質。表面活性剤。

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改訂新版 世界大百科事典 「界面活性剤」の意味・わかりやすい解説

界面活性剤 (かいめんかっせいざい)
surface active agent
surfactant

気体,液体,固体の界面に存在して,その界面エネルギーを大きく変化させ,その結果,界面の物性に大きな変化をもたらす物質の総称。一般に濃度の低い溶液では溶質は単分子の状態で溶解するが,濃度が大きくなると,溶質分子は会合した状態となって存在することがある。高級脂肪酸セッケンの場合は,たとえばメチルアルコール,酢酸などと異なり,水に単分子的に溶解する量はきわめて少なく,ある溶存量以上ではミセルと呼ばれる分子が会合した状態をつくり,それとともに水溶液の表面に吸着,配位して溶液層よりも高濃度の吸着層を形成する。その結果,溶液の界面物性が著しく変化し,気-液,液-液,固-液界面で,表面張力の低下,起泡,浸透,湿潤,分散,乳化または可溶化といった特異な作用を現すようになる。この性質を利用して,古くから洗浄,染色工程等に用いられてきた。現在では界面活性剤は,医薬品,農薬,食品,工業材料,化粧品をはじめとして家庭用から産業用に広く利用されている。界面活性剤は脂肪酸セッケンのように,分子が極性基,非極性基という異なった部分からなっている。極性基は親水基であって,水に溶けたとき水中に向かって配向する。他方,非極性基は水との親和性が小さく,水面と反対側を向いて親油基となる。この性質によって水溶液の表面に正の吸着と配向が生じ,これが界面活性の原因となる。

 界面活性をもつ物質は天然にはレシチンのようなリン脂質や,ある種のタンパク質が知られているが,現在工業的に製造されている界面活性剤は従来の牛脂,ヤシ油,魚油硬化油などの動植物性油脂を原料とするセッケン,脂肪族アルコール硫酸エステル塩のほかはほとんど合成品であり,とくに現在は石油化学工業から原料を供給されるアルキルベンゼンスルホン酸塩,ポリエチレンオキシド誘導体などがおもなもので,最も多く使用される用途は洗浄剤としてである。そして界面活性剤は水を溶媒として使用され,研究開発されてきたため,通常界面活性剤というと,溶媒として水を利用するものが中心となる。しかし溶媒は必ずしも水に限定するものではなく,油溶性界面活性剤もある。

界面活性剤は親水基と親油基の組合せによって構成されているが,親水基,親油基の種類はきわめて多数にのぼり,その組合せによってできる界面活性剤の種類もきわめて多い。使用する溶媒によって分類すれば,水溶性界面活性剤と油溶性界面活性剤の2種類に大別される。そのほか,化学構造別,合成法別,用途・性能別,または原料別に分類されるが,合成化学の立場では次のように分類整理をするのが一般的である。

 水溶性界面活性剤はその界面活性を示す主体である親水基の性質によりイオン界面活性剤と非イオン界面活性剤に大別される。前者はさらに親水基が陰イオンであるか陽イオンであるかにより陰イオン界面活性剤,陽イオン界面活性剤に区別され,分子内に陽イオン,陰イオン構造を同時に含むものを両性界面活性剤という。最近,高分子界面活性剤,有機金属界面活性剤,フッ素系界面活性剤,反応性界面活性剤という名称も使われてきたが,いずれも上記の分類項目に含まれるものである。

水溶液中で界面活性剤分子の界面活性を示す部分が負に帯電するもので,セッケン,アルキルベンゼンスルホン酸塩,脂肪族アルコール硫酸エステル塩がその代表的なものである。性質,性能,製品化適性,価格などの点から,ほとんどあらゆる分野で使用されており,その量も界面活性剤の大部分を占めている。セッケンは弱酸と強塩基とからつくられる結果,その水溶液がアルカリ性なので,硬水中ではカルシウムセッケンとして不溶化,沈積するが,スルホン酸塩,硫酸エステル塩等の合成界面活性剤は中性であり,アルカリ性をきらう場合や,硬水中での使用に適している。工業用用途として乳化剤,分散剤,起泡剤,可溶化剤として,また非水系の用途にも広く用いられている。

分子の界面活性を示す部分が正に帯電しているもので,いろいろのアミン誘導体が利用されている。従来のセッケンや一般の洗剤は解離して活性分子が陰イオンに帯電するのに反し,これらは逆に陽イオンとして解離するので,陽性セッケン,または逆性セッケンとも呼ばれる。陽イオン界面活性剤は親油基の物理化学的性能とともに,その正荷電イオンが負荷電の繊維およびその染料,微生物,金属などに吸着,結合するため,繊維の柔軟仕上剤,染色助剤,撥水(はつすい)剤,殺菌洗浄剤,帯電防止剤,凝集剤としての用途が多いが,その量は陰イオン界面活性剤に比べてはるかに少ない。陽イオン界面活性剤は陰イオン界面活性剤と共存すると一般に不溶性沈殿物を生じるので共用できない。

同一分子内に陰イオン親水基と陽イオン親水基を併せもつ構造のもので,その等電点を境として,等電点以下のpH溶液では陽イオン性とし,以上の場合は陰イオン性として作用するものであるが,陽イオン,陰イオン両基の強さがほぼ等しい場合の等電点はほぼpH7であり,中性溶液では非イオン性を示す。分子内の陽イオン性の強いものは通常陽イオン性として作用し,強アルカリ性溶液中で陰イオン性の挙動を示す。陰イオン性のほうが強い場合はこの逆であり,ともに使用するうえでの制約が大きくなる。一般に両性界面活性剤溶液のpHが等電点に近づくと溶解度,表面活性が悪くなるが,ベタイン型のものはこの欠点が少ない。ベタイン型とは,1分子中に陽イオンとして第四アンモニウムイオンの構造と陰イオンとして酸の構造とをもつ分子内塩である。これらは他の型の界面活性剤と併用でき,使用pH範囲も広い。しかも陽イオン界面活性剤に比べ毒性も著しく少ない。タンパク共存下にも沈殿を生ぜず,殺菌性もよいなどの特徴もあるので,殺菌剤,帯電防止剤,繊維柔軟仕上剤,乳化剤として,特殊な用途が開発されている。しかし一般に価格が高いので,その使用量は著しく少ない。

親水基としてエーテル結合,解離しない-OHなどをいくつか集めた構造をもつもので,水に溶けてもイオン性を示さないが,界面活性を呈するものである。ポリエチレンオキシド付加物,糖エステルがその代表的なものである。この型のものは界面活性剤本来の性質を利用した用途が多く,陰イオン界面活性剤に次いで使用量も多い。陰,陽イオン界面活性剤のいずれか一方あるいは両性界面活性剤と併用できるし,pHの広い範囲にわたって使用しうる。またポリエチレンオキシド付加物はエチレンオキシドの付加モル数を変えることによって,油溶性,水溶性のもの,あるいは親油性,親水性のものを自由につくることができる。また親油基を選択することにより,対象となる油に適応した乳化性のものをつくることができる。非イオン界面活性剤は,水溶液中では共存する他の電解質との相互作用が少ないことから,そのような系では有用である。とくに糖エステル系のものは食品用としても利用されている。

界面活性剤は前述のように,親水基,親油基という性質の異なる構造を同一分子内に局在化させる特徴をもつが,実用に供されるものはその目的,用途に応じてこれらの基を適宜組み合わせて,さまざまな構造に結合させる。界面活性剤の分子の型は,分子内に親水基と親油基を一つずつもつもの,親水基が分子末端にあるもの,中央のもの,親油基が直鎖状のもの,分岐状のもの,さらに親水基が同一分子内に二つ以上あるものなどさまざまである。また両者のバランスもきわめて親水性の強いものから,親油性のものまである。親油基は,セッケン,スルホン酸塩型や硫酸エステル塩型のものでは炭素数12~14の炭素鎖のものが表面張力の低下に大きな効果をもつとされている。また親油基が直鎖状からはずれると溶液内の分子会合(ミセル形成)が妨げられ,表面張力降下の程度も増大する。起泡剤としては直鎖状親油基で炭素鎖が長いものがよく,鎖が短く,また枝分れしたもの,親水基が多数あるものなどは,強固な凝縮膜吸着層ができにくく,湿潤作用は強いが泡立ちは少なく,むしろ消泡剤として働く。高分子電解質であるポリアクリル酸誘導体,ポリビニルピリジン誘導体等は界面活性は小さいが,それ自身溶液中でミセル状構造を形成し,このため低発泡性で,かつ分散,凝集,可溶化などの作用を示すので高分子界面活性剤として用いられている。

界面活性剤の特性を表示する手段の一つとしてHLBを用いる。これは分子中の親水基と親油基のバランスを経験的な数値で求めたもので,hydrophilic-lipophilic balanceの略号であり,親水基をもたない場合を0,親油基をもたない場合を20とし,この間の数値で表す。HLBの計算法についてはさまざまな実験式が提案されているが,多価アルコール脂肪酸エステルの場合は次式で示される。

 HLB=20(1-S/A

Sはエステルのケン化価,Aは脂肪酸の酸価である。構成原子団のHLBの和を分子のHLBとする方法もある。これは表2に示す親水基,親油基のHLBに寄与する値(A値,B値)を分子を構成する原子団について加算し,さらに7を加えて計算する。

 HLB=ΣA+ΣB+7

 これらのHLBは実際には非イオン活性剤ではよく実測値と一致するが,イオン活性剤や,乳化以外の現象に対しては適用しにくい点がある。またHLBは分子内の親水基の局在の度合や親油基の分岐など構造上の因子は表現できないため,すべての界面現象に適用するには無理があるが,乳化,分散,湿潤,浸透などの界面活性剤の実用上の選択の基準として広く用いられている。

おもな用途は洗浄剤である。家庭用としては衣類洗濯剤,浴用洗浄剤,食器洗浄剤として広く用いられる。家庭用洗剤としては前記陰イオン界面活性剤および非イオン活性剤が主で,これに無機ビルダーカルボキシメチルセルロース,香料が,液体製品には溶剤などが配合される。

 工業用用途として代表的なものを次にあげる。(1)繊維工業 精練・洗浄用,浸透・湿潤剤,染色助剤,柔軟防水剤,帯電防止剤,仕上剤など。(2)クリーニング業 ランドリーは水を用いる洗浄で高温,ワッシャー中で行われるため,高タイターセッケン,合成洗剤が用いられる。ドライクリーニングは溶剤による洗浄法で,陰イオン活性剤,非イオン活性剤が適宜単独または混合して使用され,消毒のために陽イオン活性剤も併せ用いる場合もある。(3)金属工業 表面洗浄,防錆(ぼうせい)加工に多く利用する。また金属機械の加工時の切削油,減摩油,圧延油,伸線油などの乳化剤,めっき浴中の分散剤などの用途がある。(4)紙・パルプ工業 パルプ蒸解の浸透剤,樹脂の分散剤,漂白助剤,乳化剤,サイジングの分散助剤など。(5)ゴム・プラスチック工業 乳化重合用乳化剤として,またラテックス配合剤,離型剤,滑剤,分散剤,帯電防止剤,粘着防止剤,防曇剤など,応用が多様である。(6)化粧品・医薬品工業 化粧品としてのクリーム,ローション,シャンプー,歯磨きを主とし,乳化剤,浸透剤,洗浄剤,殺菌剤として用いられ,今後その利用はますます増大する傾向にある。医薬品についても疎水性・親水性軟膏の乳化剤,浸透剤,錠剤の崩壊剤として用いられる。(7)食品工業 牛乳,バター,マヨネーズなどには天然の乳化剤が存在するが,マーガリンショートニング,菓子,パン,チョコレートなどにグリセリド配合品,糖エステル系乳化剤が用いられ,またアイスクリームの香料分散剤などの利用がある。果物,野菜の保護被膜加工用乳化剤もその例である。(8)農薬工業 殺虫剤,除草剤をはじめとする各種農薬の乳化剤,懸濁剤,安定剤として用いられ,また使用効果の面から湿潤剤,浸透剤,展着剤などの用途もある。

 そのほかにも,われわれの日常生活のほとんどすべての分野に広く利用され,重要な役割を果たしている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「界面活性剤」の意味・わかりやすい解説

界面活性剤
かいめんかっせいざい
surface active agent
surfactant

水溶液中で表面に吸着し、その表面張力を大幅に低下させる物質で、表面活性剤ともいう。親水基と疎水基から成り立っている化合物で、その分子量は数百から1000程度の大きさである。このような構造上の特徴の結果として、界面活性剤は、通常は相反する性質である水と油との両者に親和性をもっている(両親媒性という)。せっけんは界面活性剤の代表的なものである。界面活性剤は通常1%の濃度で水の表面張力72mN/mを30mN/m以下にまで下げる。水溶液中の界面活性剤の濃度がある濃度まで高くなると、それまでは単分散状態であった界面活性剤が集合体(ミセル)を形成する。ミセルが形成されたときの濃度を臨界ミセル濃度(critical micelle concentration ; CMC)とよぶ。

[早野茂夫]

分類

界面活性剤には、水溶液にしたときにイオンに解離するものとしないものがある。解離するものは、界面活性を示す部分のイオンの性質に従って陰イオン界面活性剤あるいは陽イオン界面活性剤にさらに分けられる。また、溶液の水素イオン濃度(pH)が高いときには界面活性を示す部分が陰イオンとなり、pHが低くなるとそれが陽イオンになるものがある。これは両性イオン界面活性剤とよばれる。水溶液にした場合、解離をしない界面活性剤は非イオン界面活性剤と名づけられている。

[早野茂夫]

特性と応用

界面活性剤には、湿潤、浸透、乳化、分散、吸着、起泡化、可溶化などの性質があり、これらを利用して広い用途をもつ。

(1)ぬれ 界面活性剤により水の表面張力が大きく低下するのは、界面活性剤が空気と水の界面に吸着し、表面張力に逆らって、表面を広げようとする力が働くからである。これと同様に、界面活性剤水溶液が固体と接するときには、水と固体の界面に界面活性剤が吸着し、固体表面の性質を大きく変える。たとえばプラスチックの表面は普通は疎水性で水にぬれにくい。しかしこれを界面活性剤溶液に浸すと水にぬれやすくなる。このときはプラスチックの表面には界面活性剤の疎水基が整列し、外側は親水基の衣が覆うので、水にぬれるのである。また、油で汚れたガラスの表面は水をはじきやすいが、これを界面活性剤の溶液で洗うと、油の薄膜が洗い取られて表面が清浄になることは日常生活でよく知られている。これらの例は、いずれも界面活性剤が表面に働いて水にぬれやすくする場合である。

 その反対に、界面活性剤が水にぬれやすい表面に働いて、これを水にぬれにくくする場合もある。このような性質は印刷インキ、油絵の具または塗料の色素である顔料を製造する際に応用される。

(2)ミセルmicelle 界面活性剤の集合体であるミセルは、水溶液中では親水基が外側に並び、疎水基が内側に集められて、ある濃度の範囲では球形をしている。一つのミセルをつくるのに、イオン性の界面活性剤では数十分子の界面活性剤が必要である。親水基としてイオンに解離した部分が外側を向き、ミセルの周囲には強い電場がつくられている。水溶液中でミセルは熱力学的に安定であり、コロイド粒子として取り扱われる。ミセルの内部は疎水基が密集した領域であるが、もし界面活性剤ミセル水溶液にベンゼンのように水に溶けにくい物質が加えられると、ベンゼンはミセルに取り込まれ、内部の疎水基部分に収められる。このときは溶液は透明であり、あたかもベンゼンが溶解したようにみえるので、このような現象を可溶化という。可溶化は、ポリエステル、アクリルなどの化学繊維を水に難溶性の染料によって染色する場合や、油溶性のビタミンを水に分散させる場合に利用される。また油田に残存している石油を徹底的に回収利用する場合の技術にも応用されている。

(3)乳化 界面活性剤の助けを借りて、水中に油を分散させると油は乳濁し、いわゆるエマルジョンができる。この現象を乳化という。乳化は油滴の周囲に界面活性剤が吸着し、油滴を安定化させるものであるが、分散粒子が液体でなく固体の場合には、その分散液を懸濁液(サスペンション)とよぶ。乳化や懸濁は界面活性剤の重要な実用上の性質の一つであり、化粧品、高分子、マーガリン、道路舗装などに広く利用されている。乳化の目的に使用される界面活性剤を乳化剤とよぶ。

(4)洗浄 界面活性剤のもっとも重要な性質は、繊維や金属表面の汚れを落とし、清浄にする作用、すなわち洗浄作用である。洗浄には、吸着、ぬれ、可溶化、分散などの諸性質が複雑に関係していると考えられる。洗剤は界面活性剤の洗浄作用を効果的に高めた商品であるが、現在では単に優れた洗浄力をもつだけでは不十分である。たとえば家庭用洗剤には、洗浄力以外に、良好な溶解性、汚れの保持性、適度の泡立ち、湿潤性、無臭、無色であることなどが望まれている。また、当然のことながら毒性はできるだけ少なく、皮膚に対して無刺激であり、微生物により分解され、魚類に対する毒性が少ないことなどが必要な性質とされている。

 家庭用洗剤では、主として繊維が洗浄の対象となっており、工業用洗剤では、金属表面処理、染色工業における精練、食品工場での脱脂、滅菌などがその対象になる。界面活性剤は洗剤の主成分であるが、洗浄力を増強する目的でリン酸塩、ケイ酸塩などの無機塩がさらに加えられる。

(5)帯電防止 合成繊維やプラスチックは静電気を帯びやすく、冬季の乾燥時には衣料による静電気障害が発生しやすい。界面活性剤を化学繊維に添加すると、静電気の発生が大幅に防止できる。これは繊維の表面に存在する界面活性剤が空気中の微量の水分を吸着し、繊維表面の通電性を増加させるためであると考えられている。

(6)殺菌 第4級アンモニウム化合物が殺菌作用をもっていることは20世紀の初めに発見されていたが、これを一般に紹介した人は、スルホンアミドの抗菌作用の発見者としてノーベル生理学医学賞を受賞したドイツの化学者ドーマクであった。陽イオン界面活性剤は第4級アンモニウム基を分子の中に含んでおり、水溶液にした場合にはこの部分が陽イオン性を示す。通常の界面活性剤は陰イオン性を示すのに対し、第4級アンモニウム基を含む界面活性剤はそれと反対の陽イオン性を示していることに基づいて、それらを逆性せっけんとよぶことがある。逆性せっけんはグラム陰性菌やグラム陽性菌に対して殺菌作用をもっているので、殺菌剤として病院において広く利用されている。

[早野茂夫]

『北原文雄・玉井康勝・早野茂夫・原一郎編『界面活性剤――物性・応用・化学生態学』(1979・講談社)』


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百科事典マイペディア 「界面活性剤」の意味・わかりやすい解説

界面活性剤【かいめんかっせいざい】

溶媒に少量溶かした時,その溶液の表面張力を大きく低下させる作用をもつ物質。分子中に親水基と疎水基(親油基)を含み,気体−液体,油−水,固体−液体等の界面に吸着して,この作用を示す。セッケン,合成洗剤などはその顕著な例。水溶液中での電気的性質により陰イオン界面活性剤陽イオン界面活性剤非イオン界面活性剤,両性界面活性剤に分類される。洗浄剤,起泡(きほう)剤,乳化剤,浸透剤,分散剤などとして家庭用,工業用に広く使用。
→関連項目合成洗剤磁性流体消毒薬洗剤乳化剤

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化学辞典 第2版 「界面活性剤」の解説

界面活性剤
カイメンカッセイザイ
surface active agent, surfactant

表面活性剤ともいう.溶液にしたとき,気-液,液-液または固-液界面に吸着して,界面の性質をいちじるしく変化する性質,すなわち界面活性の大きい物質で,分子中に親水性および親油性原子団を有する両親媒性物質である.一般に,界面活性剤は,洗浄力,分散力,乳化力,可溶化力,浸潤力,殺菌力,起泡力,浸透力などにすぐれ,種類,目的によって,広い方面に応用されている.また,界面活性剤は水溶液にした場合に,ある濃度(臨界ミセル濃度)以上で,ミセルを形成し,この濃度において,表面張力,粘度,電気伝導率などがいちじるしく変化する.界面活性剤は大別して,カチオン界面活性剤アニオン界面活性剤非イオン界面活性剤,両性イオン界面活性剤に分類される.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「界面活性剤」の意味・わかりやすい解説

界面活性剤
かいめんかっせいざい
surface active agent

表面活性剤とも呼ばれる。溶液中で溶質が気体/液体,液体/液体,または固体/液体の界面に吸着されて,その界面の性質を著しく変える性質を界面活性または表面活性といい,この性質を示す化合物を界面活性剤という。界面活性剤は,その分子中に親水性基と親油性基をもっていて,相互に混り合わない物質の界面への強い吸着と分子の配向によって,界面張力を低下させる。ある濃度以上では分子が会合してミセルを形成し,ミセルコロイドとなる。界面活性剤は,家庭用洗剤として,また工業用では洗浄剤,起泡剤,乳化剤,浸透剤,湿潤剤,分散剤,懸濁剤,可溶化剤,帯電防止剤などとして,その用途は非常に広い。 (→洗剤汚染 )  

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栄養・生化学辞典 「界面活性剤」の解説

界面活性剤

 界面活性物質ともいう.一つの分子内に親水性領域と疎水性領域をもつ比較的低分子の化合物で,溶媒に少量溶かすことにより表面張力を著しく変化させる物質.天然物では,セッケン,リン脂質(例えばリゾレシチン)など.溶媒に溶けにくい物質を分散させる目的で広く使われている.

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世界大百科事典(旧版)内の界面活性剤の言及

【コロイド】より

… セッケンの溶液がコロイドの一種であることはかなり以前から知られていたが,アメリカのマクベインJ.W.McBain(1913)はこれがセッケン分子の会合によると考え,その会合体をミセルと呼んだ。界面活性剤分子が水溶液中でコロイド次元の会合体を形成することは,その後多くの研究により明らかにされ,これらは会合コロイドと呼ばれる。デンプンやタンパク質など高分子物質は巨大分子からなるので,媒質中に分散して分子コロイドをつくる。…

※「界面活性剤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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