化学的な組成が一様な固体でも、原子レベルで調べてみると、原子が規則的に並んでいる場合(結晶)と規則性のない場合(非晶質、アモルファス)に分かれる。結晶では原子配列の方向性によってその性質も異なる。これを異方性という。これに対して、非晶質の物質は特定の方向性はないので等方的である。たとえば、結晶では特定の方向に力を加えると割れやすい性質(劈開(へきかい)性)をもつものがある。非晶質ではこのような割れやすい方向がないので、一般に強靭(きょうじん)になり、テニスのラケットや釣り竿(ざお)などに利用されている。また、結晶が水晶のように特徴的な外形、結晶表面をもつのもこの異方性による。ガラスは非晶質であり、等方性の物質で、光に対して複屈折を示さないが、結晶はつねに異方性である。方解石の薄片を通して文字を見ると、複屈折のため二重に見える。光学的性質だけに限れば、岩塩やダイヤモンドなど立方晶系に属する結晶は等方性を示すが、これらの結晶もほかの性質の測定では異方性を現す。一般に結晶の異方性を総合的に観察してみると、異方性には対称性があることがわかる。たとえば、岩塩の性質はある結晶軸の回りに90度回転すると同じ性質を示すが、水晶の場合は60(120)度ごとになる。これらの結晶の特徴は対称面や対称中心、あるいは特定の軸の周りの回転対称によって特徴づけられる。このような対称性に基づいて分類すると、結晶の異方性には32種類(32結晶点群)あることが導かれる。ただし、結晶に限定しなければ異方性の種類は無限にある。
[石田興太郎]
『堂山昌男編『単結晶――製造と展望』(1990・内田老鶴圃)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
一般に,物体の物理的性質が方向によって異なること.結晶や外力によりひずんだ非晶質固体や電場,磁場のなかに置かれた物体は,関連した物理的性質に関して異方性をもつことがある.[別用語参照]等方性
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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